「他人の目が気になってしょうがない」という心理には、「特定の人間」が影響していることがあります。
「人の視線」というのは、実は「一人の人間のまなざし」であることがあるのです。
それが分かったとき、長年にわたる悩みが一気に解消されることがあります。
こんばんは、ラブです。
ある女性が悩みを抱えていました。
「人づきあいが面倒くさくてたまりません。
友達から電話で、最近元気?なんて聞かれると、放っと置いて!と思ってしまいます」
この女性は、病的な過干渉をする母親のもとに育てられました。
お重大の頃は、自分の思いを伝えようとしましたが、母親は娘が意見するとヒステリーを起こして暴れだし、手が付けられなくなりました。
彼女は耐えに耐えて、大学卒業後に、ようやく親元を離れました。
この女性は、仕事はよくできるのですが、心の中にイライラがありました。
自分の仕事の一つ一つが周囲にチェックされている気がしているのです。
表面は笑顔ですが、内心は他の人がうっとおしいという不満が渦を巻いていました。
友達や母親から電話がかかってくると、もうそれだけでキレてしまうのでした。
この女性のストレスは、仕事や人間関係が原因ではありません。
本当は心にいつも漂っている「母親の影」、つまり母親に干渉された記憶と、怒りの感情とが理由なのです。
怒りを”結生”させないために
仏教には、「心の反応は連鎖する」という発想があります。
心は①触れて、②反応して、③感情や欲求や妄想や記憶などの「強い反応のエネルギー」が生まれます。
この強い反応を著者は”結生”と呼んでいます。
これは「記憶に残る」「表情や行動に出てしまう」ような強い反応です。
そして、これらの結生した反応が、新しい刺激に反応して、④同種の反応を作り出す、というサイクルです。
たとえば、外で嫌なことがあったときに、その結生した怒りの生で、家に帰って小さなことで家族にあたってしまったり。
過去に手痛い挫折を経験して、その結生した怒りがくすぶっていて、ふとした弾みに火がついて、怒鳴り散らしてしまった。
学校でいじめに遭って、その時の結生した記憶が尾を引いて、今も人前で緊張してしまう。
これらは、結生した心がもたらす反応が原因です。
この女性については「母親の過干渉」の記憶が大きく影響し、蓄積された怒りもありました。
その結生された記憶と怒りが、日常生活の中で刺激を受けて「うっとおしい」「みんないなくなれ」という思いを作り出していたのです。
この反応は、新しい刺激に触れて作動する「地雷」のようなもの。
よくある「怒りっぽい」「やたら神経質」「落ち込みやすい」「対人恐怖症」といった気質の奥には、こうした”結生した反応”があったりするのです。
だとしたら、その損愛に気づくことが大事です。
一般にはカウンセリングや薬を利用する方法がありますが、”結生した反応”が原因だとするならば、他の方法もあります。
むしろ、心には、その状態になるまでのプロセスや経緯があるのだと理解して、一つの反応の背後にある別に反応に目を向けることです。
たとえば、「ああ、過去の怒りがまだ残っているのだな」と自覚することです。
心にに凝っている過去の反応を自覚すると、徐々に影響をうけなくなってきます。
結生した怒りと記憶への3つの処方箋
この女性の場合は、母親に対して結生した怒りと記憶とが、悩みの真の原因です。
それに対して、3つの処方箋が出てきます。
1つは、「よく気づいて、反応しない」ことです。
もし、母親に干渉された記憶を思い出したら、「これは記憶に過ぎない、幻に過ぎない」と、はっきり口に出して念じます。
そして、「記憶、記憶、記憶(にすぎない)」と、気づきの言葉(ラベリング)を繰り返して、その反応から抜け出そうと努力します。
結生して残っている怒りについても、「自分の中に怒りが残っている」と、理解すること。
人によっては、自分に罪悪感を感じたり、自己を責めたりしがちですが、その必要はありません。
「怒りがあると、ただ理解する」だけで十分です。
「ああ、怒りが残っている。古い怒りが、まだ働いている」と気づくこと。
「心のクセ」「心のビョーキ」だと割り切って、出てくるたびに「気づく」こと。
「気づく」ことは手放すことへのきっかけになります。
心のクセがこの先どこまで出てくるか、観察に付き合ってあげることにしましょう。
2つ目は、「感覚を意識する」という方法です。
身体の感覚は、記憶や感情とは全くの別の心なので、感覚に意識を向けると、反応をリセットしやすいのです。
嫌な記憶を思い出したり、不快な感情に悩まされたときは、「体の感覚に意識を向ける」ことです。
外を歩く。スポーツをする。お風呂に入る。
この女性の場合は、ホットヨガでした。
3つめは、「反応の源を断つ」こと。
この女性であれば、過干渉の母親と距離を持つことです。
肉親は関りのパターンが固まっているので、同じ向き合い方を繰り返してしまいます。
これが悩みの原因ならば、きっぱりと距離を置くことです。
しかも「結生」を強めてしまうならば、いったん「関わりを断ってみる」ことも正しい一手です。
大変なことではありますが、「関わりを断つ」というのは、関係をやり直すのに必要なこともあるのです。
理想は①過去の記憶にも②現在の相手にも、反応しなくなるまで、距離を置くことです。
物理的に、あるいは時間的に。
「いずれは、理解し合えるだろう」と、大きく構えたいものです。
この女性は、潔く「しばらく連絡をとらない」という道を選びました。
「結婚したら、また母との関わり方を考えます」と晴れ晴れと語ったと言います。
苦しかった記憶との別れ方で、一番腑に落ちた方法でした。
必要に応じて距離を置くことを肯定してもらえて正直嬉しかったです。
今日も一日おつかれさまでした。
ゆっくり休んでください。
では、また。