足元のアスファルトが軽く40度をこえていても、その割れ目から芽を出している雑草たち。
水なし、空気最悪、人に踏まれ、時に抜き取られて尚、仲間もいないのに種を増やしていますよね。
そのストレスに対して最強の生き物は、あなたの足元で今日も不敵に「ふふふ、こんなの楽勝だぜ」と笑って花を咲かせています。
しかし、彼らは何にでも強いのではありません。
「得意分野」にだけ徹底して秀でることで、劣悪ともとれる環境を完全に味方につけているのです。
こんばんは、ラブです。
市街地は、ライバルが少ない?
コンクリートの隙間や駐車場の片隅など、一見雑草の生えている場所は厳しい環境です。
しかし、そこは同時にライバルが少ない場所でもあります。
そこで雑草は、種子を作る時期や回数、他の生物との関わり方を進化させて繁栄してきました。
あえて森林ではなく、市街地を選んで生きる彼らには、過酷な環境を生き抜く工夫がされているのです。
植物の暮らし方は、3タイプ
雑草というのは、大雑把に言うと陸地の「農作物」と「山野草」以外の植物です。
山野草と雑草の区別については、ファジーな部分も多いとされています。
植物たちの暮らし方については、大きく分けて
「競争に強い」
「ストレスに強い」
「かく乱に強い」
の3タイプに分かれます。
とにかく強くて逞しい、というイメージがある草たちですが、それぞれに実は得意分野に特化した生き方をしているのです。
競争に強いタイプ~光の争奪戦に強いスキルを持つ
ストレスもかく乱も、植物の暮らしに大きな影響を与えるものです。
どちらもあまり強くない場所は、つまりは植物が暮らしやすいところです。
よって、その分植物で込み合いますから、植物同士の競争に強くならなければなりません。
人間が資源をめぐって争うのと同じように、地上に降ぐ太陽光をめぐって、森では静かな厳しい闘いが繰り広げられています。
競争に強い植物の代表例は、ブナやオオシラビソなど。
(ブナ)
弱い光でも成長できる森を形成する樹木なのです。
「ストレス」や「かく乱」に強いタイプは、言葉を変えれば、周囲の植物との競争のない世界に生きています。
一方で、ストレスもかく乱もひどいといった環境では、あまりに過酷で木も草も育ちません。
ストレスに強い
植物にとっての「ストレス」とは、光合成を制限する現象です。
たとえば、太陽光や水、栄養塩の欠乏、不適な温度などを指します。
高山では水が不足し、強い紫外線が降り注ぎます。
海岸では、水が少なく、激しく乾燥します。
それから自分の体を守るために、ストレスに強い植物はワックスや毛を葉にまとい、肉厚な葉になったりします。
ストレスに耐える工夫を、たくさん持ち合わせているのです。
かく乱に強い
かく乱とは、植物体全体や一部が破壊されることです。
具体的には、火事、凍結、乾燥、食害などの自然現象。
そして、耕し、踏みつけ、草刈りといった人間活動。
しかし、この逆境としかいいようのない「かく乱」を雑草はうまくら利用して、さらに繁栄しているのです!
都市環境では、不規則にかく乱が起きます。
それまで生えていた空き地にブルトーザーやショベルカーに地中深くまで掘り返されたり。
除草剤、そして草刈りによっても、体の一部や全部を失います。
しかし!
それを潜り抜ける巧みさを進化させているのです。
失敗を恐れない度胸の旅が、絶対的な繁栄をもたらした タンポポの冒険と繁栄
タンポポたちの種は、わた毛によって風で遠くに運ばれます。
言わずと知れた「数うち当たる」大作戦。
全くの新天地へ何の躊躇もなく旅立つ潔さこそが、彼らの強みです。
そたまたま空き地やコンクリートのスキマに入り込んだ種子が発芽して成長するのですが、タンポポが咲いている姿をたくさん見かけるのは、彼らがその分莫大な量の種を飛ばしているからです。
失敗を恐れない冒険者と言えるでしょう。
大部分のキク科植物には、「冠毛」つまり「わた毛」があり、超大量の種子を遠くまで運び、親株から遠く離れた場所まで行くことができます。
ひっつき虫に代表されるように、人間や動物に付着して遠くまで運ばれるタイプもありますね。
リスに運ばせて増えるどんぐりや、甘い付着物をつけることでアリに運ばせるタケニグサやカタクリなどもいます。
実を赤くして、鳥たち食べてもらい、排泄されることで遠くへ散布されようとする、なんてのも考えてみればすごい荒業ですよね。
もうパートナーなんかいらない。自分ひとりで繁殖すればいいんだ!
これはさすがに人類は真似できない技と言えるでしょう。
新天地へたった一人(?)で切り込むことを、まったく辞さない彼ら。
ですから、「同じ種の別個体からの受粉」(他家受粉)も、花粉を運ぶ昆虫にも出会えない可能性は承知の上です。
そうしたことから市街地には、他個体なしに種子を作れる植物が多いそうです。
タチイヌノフグリやツユクサ、オシロイバナなどが知られています。
オシロイバナは夜間に活動する蛾の仲間によって受粉しますが、花が閉じるときに、おしべとめしべがからまるように巻き込んでいき、自家受粉が起こるのです。
環境が厳しくて、出会いがないから、もう一人で育てる!
なるほどです・・・。
日本も草花を見習ってそんな時代がやってくるかもしれませんね。
土の中で種子を眠らせる?
(トキワハゼ)
農地の雑草が持つ特殊能力です。
土壌の中で種子を休眠させ、耕起や草刈りなどで覆う植物がいなくなったら、その刺激を受けて発芽します!
発芽する「場所」ではなく、「時期」を探し求めているのです。
今では市街地の道端や空き地、都市の公園にも進出しています。マメグンバイナズナやヒメオドリコソウ、トキワハゼなどです。
スピード感あふれる仕事で、厳しい環境を勝ち抜く!
(カタクリ)
カタクリは、花が咲くまで7~8年かかります。
落葉広葉樹林やすぎ林で群生している花ですからね。
しかし市街地の厳しい環境で生きる雑草たちは、その厳しい環境に合わせるためなのか一年草が多いようです。
春に発芽し、夏までに花を咲かせて種子を残し、枯れてしまって、種子で冬を越えます。
秋に発芽して、春に花が咲く、越年草(冬型一年草)もあります。
1年サイクルという寿命の短さは、不適なシーズンを種子で過ごすという大きなメリットがあります。
特にかく乱の多い環境では有利です。
そして、光合成で得た有機物を、「親株は枯れてしまう」ことにより、徹底的に繁殖に使うことができているのです。
逆境こそ俺のステージ!ナズナはかく乱が大好き?
「ぺんぺん草」の名前でも知られるナズナ。
「逆境を追い風にする」ということにおいては、ナズナの生き方は哲学者よりも雄弁です。
もちろん自家受粉もできます。
そして、「草刈りされちゃう」「子どもに遊ばれる」「踏みつけられる」などの人間ならば人生に絶望しそうなひどい仕打ちを、順境に変えて生きています。
あの特有のハート型な種を作ることで、人が踏み倒したり除草することによって、より広い範囲に子孫を広げていく力を持っているのです。
さらに、種子は土の中で休眠。
秋に発芽してロゼット(地面に放射状に広がった葉)で冬を越します。
中には春に発芽するタイプもあります。
逞しさいっぱいのナズナですが、この生育には人による定期的なかく乱、つまり逆境が欠かせないそうです。
もしも人の手が入らずに生育地が放置されると、他の草木が入り込みます。
そしてナズナの姿はなくなるとか。
逆境に特化している分、競争には弱さがあるようですね。
どこまでも逆境が大好きなナズナなのです。
まだまだ未知の生きもの、ネジバナ
(ネジバナ、右巻き左巻きあり)
芝生や土手で見る紅紫色の花。
その花の色は、個体によっての濃淡があります。
今まで気がつかなかったのですが、右巻きと左巻きがあるそうです!
上の写真にも、両方いますね。
この花は、光合成産物を数年かけて蓄えます。
その栄養で花を咲かせて、大量の種子を遠くまで飛ばすのです。
そうしてから、親株は枯れます。
花期のピークは初夏と秋のグループがあるようです。
ただ、まだ研究されつくしていない、未知の草花。
詳細はわかっていないそうです。
圧倒的なパフォーマンスは勝利を約束する!ヤブカラシの生き様
道端や畑で、他の植物を覆いつくして生えるヤブカラシ。
強さの秘訣は、圧倒的な繁殖力です。
10センチに切り取っても、そこから個体が再生するそうです!
西日本を中心に、種子を作るタイプがいますが、日本各地には結実しないタイプ
が多いとか。
市街地という劣悪な環境を、潔くたくましく生きている雑草たち。
まだ知られていない実態もとても多いそうです。
子離れがうまいなぁ、なんて思います。
そして、失敗なんかちっとも恐れていない。
逆境をモノにして、余計なものはさっさと捨てて、潔く一人でもぐいぐい生きていく。
誰に誉められなくも、ただ黙々とたくましい草花が、わたしたちの足元で咲いているんですね。
今日もお疲れさまでした。
明日もすてきな1日になりますように!
では、また。
コスモスも、倒れるとその茎から根が出たりして、本当に強いですよね。