怒りや感情コントロールの本をいくらたくさん読破しても、睡眠不足が続いていると、こころを穏やかに保つことはできません。
脳の「偏桃体」は、恐怖や嫌悪と言ったネガティブな感情の発信源。
ですが、この感情も生命の維持に必要なものでもあります。
睡眠不足で感情はコントロール不能になる
恐怖や嫌悪というのは、生命の維持には必要です。
私たちがサルだったころ、このネガティブなサインがなければ、天敵のトラやヘビにも平気で近づいて生命が脅かされてしまっています。
しかし現代のわたしたちは、上司や顧客が怖いからと言って、サルのように逃げ出したり過剰な反応をすることはしません。
人間が直情的なことをしないのは、人間の脳の「前頭前野」が偏桃体の暴走を抑えているからです。
前頭前野のおかげで、腹が立ったことを顔に出さずに大人の対応ができるわけです。
ところが、睡眠不足は偏桃体の暴走が強まり、恐怖や怒りなど穏やかでない感情が高まります。
さらに悪いことに、前頭前野が偏桃体を辛抱させる働きが落ちてきます。
睡眠不足は、偏桃体~前頭前野にわたる感情コントロールのネットワークに大きなダメージを与えてしまうのです。
MRIを使った研究で、脳の中の活動の具合が、映像でわかるようになったからこその発見でした。
「夢を見る睡眠」がイヤな思い出を薄めてくれる
感情をじょうずにコントロールするための生活習慣の第一は、睡眠です。
睡眠不足になると、恐怖や嫌悪などの怒りのもととなる偏桃体が、過剰に働きます。
ということは、よい睡眠は前頭前野だけでなく、偏桃体にも潤いにも似た余裕を与えてくれるということ。
睡眠には恐怖や不安な感情の記憶を和らげる効果があることが報告されています。
カリフォルニア大学のグループが、「夢を見る睡眠」であるレム睡眠の間に、むかつく不愉快な感情的記憶が和らぐことを示しました。
MRIによって、脳の偏桃体の過活動が、睡眠によって大きく低下していることがわかったからです。
良質な睡眠をとることで、イヤな記憶が完全に消し去ってしまうわけではもちろんありません。
しかし、人間には不愉快な記憶は薄らいで、そのうち気にならなくなり忘れていく、合理的な「忘却力」があります。
この忘却を手伝うのも良質な睡眠です。
「イヤなことは寝て忘れる」とか「寝て気にならなくなる」ということです。
イヤな記憶をすべて忘れることは、認知症にでもならない限りは無理な話です。
「まぁ、いいや」
「気にしないで、先のことを考えよう」
などと、気持を切り替えていくエネルギーを、睡眠は与えてくれるのです。
睡眠不足が続くと、クヨクヨしやすくなり、自分に自信を失っていき、周囲に当たり散らしてしまなど、どんどん悪い方向に向かってしまいます。
イヤな記憶は、胃が胃液で食べ物を消化するように、睡眠で消化されると考えてみるのも良いかもしれません。
適度に忘れることで、こころのメモリを大きくとっておきたいものです。
覚えることも大事ですが、忘れることも大事なのです。
睡眠を削って働いてしまうと、本当にいざという時の判断力が思うよりずっとおちてしまうものです。
自分の脳は見えないから、疲れにきづきにくいものですが、「ちょっと感情がコントロールしにくくなっているかな?」と思ったら、睡眠不足をまず補おうと思います。
今夜もすてきな夢がみられますように。
では、また。