「引き寄せの法則」を使うと、「念ずれば叶う」という言葉が「本当にそうなるもの」になってきます。
その再現性を強めるための鍵は、脳の記憶装置である「ワーキングメモリ」にあります。
意識を司る「短期記憶(ワーキングメモリ)」
人は普段から、3つの記憶装置を使って情報を処理します。
1つ目は「短期記憶」、2つ目は「長期記憶」、3つ目は「外部記憶」です。
まず、1つ目の「短期記憶」、別名ワーキングメモリー。
脳という記憶装置が情報を処理するとき、処理するためのデータが必要です。
そのデータの中でも、よく使うデータはいつも近くに置いておいた方が便利です。
そのいつも使いたいデータを格納しておく場所こそ、短期記憶です。
何かを見たり、聴いたり、人と話したりと言ったときに、考えなくとも、パッと言葉や回答が出てくることがあります。
それは、そのデータがしょっちゅう使うものであり、短期記憶に常駐しているからです。
キッチンで言うならば、料理の時によく使う包丁やまな板、フライパンといった調理器具はすぐ使えるところに置いてあるといったような。
一方、中華なべなどは本格的な中華料理を作るときぐらいだから、表にあると邪魔なのでちょっと奥の方に収納されていたり。
調味料も同じです。
塩コショウ、醤油や酒などは近くにあっても、オイスターソースなどは、たまにしか使わなかったりすると、少し奥まったところにあったり。
何でもかんでも近くにあると、かえって手元がごちゃついてしまいますからね。
記憶も同じで、すぐにアクセスしたり処理したりする必要性のあるデータは短期記憶に格納されます。
しかも、そこに入っているデータは、いつも近くにあるわけですから、あなたは常にそれを意識することになります。
「あなたの名前は?」「生年月日は?」「家族は何人?」と尋ねられたら、あなたが即答できるのは、まさに「ワーキング」でその情報が処理されているからです。
このように、常に意識し、常に処理されるデータの置き場所が「短期記憶」、つまり「ワーキングメモリー」なのです。
考えるための知識を蓄積する「長期記憶」
2つ目の長期記憶は、長い歳月をかけて蓄積してきた知識の図書館のようなものです。
人は何か情報を処理しようとするとき、真っ先に一番近場の短期記憶にアクセスしようとします。
そこに答えが入っていれば万事解決なのですが、もしそこに求めているデータや答えが入っていないとき、次にアクセスするのは、自分の過去の体験や知識が詰まった「長期記憶」です。
「考える」とは、この長期記憶にアクセスするプロセスを示します。
先ほどのキッチンの話の通り、もし中華料理を作ることになったとき、奥か中華鍋をどこにしまっていたかを思い出さなければなりません。
オイスターソースの場所も記憶をたどりながら探します。
同じように、ある仕事を片付けようとしたとき、すぐに思いつけばいいのですが、具体的なやり方が出なかった場合、
「どうすればよかったのだろう?」
「確かこういうやり方があったのではないか?」
とぐぐっと考える。これが長期記憶の役割です。
ただし、長期記憶は、脳の中でも深部に位置しているため、どこか海と似ています。
蓄積しているデータは膨大ですが、いかんせん広いし深い。
短期記憶のようにすぐには見つかりません。
長期記憶で大事なのは「切り口」です。
たとえばダイエットをするとき、「ただ痩せたい」と思っているだけでは、何もいい方法は思いつきませんよね。
ここで切り口を与えます。
食事、運動、睡眠、ストレスなど、いろいろな切り口を思い付くでしょう。
試しにこの中から「食事」という切り口を与えてみたとします。
「えーっと、食事では何に気を付けるべきだっけ?
以前に読んだ本に、たんぱく質がいいと書いてあったな」
漠然と「痩せたい」と思っていた時より、具体的な切り口があることで、よりピンポイントにデータを引っ張り出せるようになりました。
この切り口は、具体的で絞られているほど効果的です。
いわば、細い管を水の入ったタンクに差し込むのと同じ原理です。
管が細いほど、水はピユッと勢いよく飛び出します。遠くまで飛んでいきます。
逆に感が太くなるほど、流れる水はダラーッとして勢いがなくなり、求める答えまでたどりつけなくなってしまうのです。
つまり、短期記憶は、他人から言われなくても勝手にアクセスし、処理されるデータの置き場所だとすれば、長期記憶は切り口を与えられることで、ぐぐっと考え、ほしいデータをとりにいく場所なのです。
いざという時のインデックス「外部記憶」
3つ目の記憶装置である「外部記憶」は、あなたの脳の外側いあるものすべて。
短期記憶にデータがない、長期記憶にアクセスしても見つからない。
こうなると、誰かに相談したり、勉強したりするなどの行動に出ます。
スペイン料理を食べたくなったとします。
それならば、本やネットで作り方を調べたり、スペイン料理に詳しい友達に聞く。
この本もネットも友達も、外部記憶です。
全てを体験するのは大変ですし、すべての知識を身につけるのは大変です。
しかし、記録があればそれを参照できる。
つまり、すべてを知っておく必要はないのです。
外部記憶は、探したときにすぐに見つかる状態であることが極めて重要です。
大切なメモはいつも目にするデスクの前に貼っておく、自分が体験したことがない経験を持つ人にはすぐ連絡をとれるようにしておく。
このように、自分のおっする情報がすぐ手に入る環境を、常日頃から整えておくことが大切です。
外部記憶として願望をアウトプットする
では、「引き寄せの法則」に戻ります。
「引き寄せの法則」を体現する第一歩として、まず実現したい願望を紙などに書き出してみましょう。
ここで重要なのは、できるだけ詳しく書き出すこと。
書いたものを口に出すなど、五感をフルに使って表現すればなお良いです。
「とりあえず、お金持ちになりたい」では、「引き寄せの法則」は発動しません。
「私の願望は、年収1億円の状態を10年以上続けることです。
5年以内に年収1億円までは達成し、それから海外のどこかで不動産を購入します。
」
現在年収300万円の24歳会社員がそんな願望を語ったら、どうでしょうか。
「馬鹿なことを言っていないで、現実を見ろ」
「世間知らずのくせに、青い夢など語るな」
このような言葉を浴びせられるかもしれません。
著者はこのような人たちを「ドリームキラー」と呼んでいます。
彼らは願望の障害以外のなにものでもありません。
こうした障害物には、あなたの願望のメモを見せないようにしましょう。
「引き寄せの法則」では、実現したい願望を具体化することから始まります。
これが最初のステップです。
そして、この願望を細かく書き出したメモが、あなたの外部記憶になります。
長期記憶への願望のデータを転送する
あなたの願望は今、外部記憶として目の前に格納されています。
でも、このままでは、この願望は外部記憶のままです。
あなた自身の脳では処理されません。
そこで、次にすべきなのは長期記憶にこのデータを転送すること。
つまり、メモを見なくても書き出した願望をいつでも抽出できるようにすることです。
「あなたの実現したい願望は何ですか?」と聞かれたとき、
「ええと・・・、何だっけ。メモを見ればわかります」と、最初はメモを見ることで、思い出します。
これを繰り返すうちに、メモを見なくても言えるようになってきます。
「ええと・・・、私の願いは、年収を1億以上にして、不動産取引をします。それは、5年後のことで・・・」
いったん長期記憶に格納されれば、「願望」という切り口を与えることで、メモを見なくても考えながら口にできるようになります。
これが、長期記憶へデータの転送が完了した合図です。
ただ、この状態でもまだ、「引き寄せの法則」には足りません。
長期記憶に転送したデータを常に処理状態にするため、今度はワーキングメモリに転送する必要があるのです。
ワーキングメモリに願望を常駐させる
今のあなたは、「実現したい願望は何ですか?」と聞かれたときに、
「ええっとですね・・・」と考えながら口にしている状態です。
問われるたびに長期記憶にぐぐっとアクセスし、引っ張り出そうとしています。
つまり、意識的に自問自答しているわけです。
この自問自答こそが、「願望」という名のデータを長期記憶からワーキングメモリである短期記憶に転送する手助けをしてくれます。これは非常に重要なポイントです。
ワーキングメモリにデータの転送が完了すると、質問にも即答できるようになります。
長期記憶にアクセスする必要がなくなるからです。
「稼ぐ年収は1億が目標。海外不動産投資をし、3か国語を話して、地元の恵まれない人たちのために尽くしたい」
条件反射のように出てきます。
もちろんこの自問自答、一度やったぐらいでは短期記憶にとどめることはできません。
「私はどんな願望を持っているのか?」
「どんな夢を実現したいのか?」
1日に1回程度の自問自答では1か月くらいかかります。
1日に10回、20回と、誰かに話したりメモに書いたりすれば、1週間ぐらいでいいかもしれません。
重要なのは、何度も何度も、しつこいぐらいに、飽きるぐらいに問い続けることです。
そうするうちに、いつしか目的のデータがワーキングメモリ内に「常駐」するのです。
いったんワーキングメモリにデータが常駐すればしめたもの。
常にそのデータを想起して、脳が処理しようとし始めます。
まさに脳が、願望実現に向けて「意識し始める」状態。
「引き寄せの法則」は、この状態になって初めて発動するのです。
今日もお疲れさまでした。
ゆっくり休んでよい夢を。
では、また。