いわゆる「成功者」とか「第一人者」といわれる方の成功の秘訣を尋ねると、「私はたまたまラッキーだったんですよ」ということがよくあります。
恩師や上司、仲間など、素晴らしい協力者や理解者との出会いに恵まれたり、人生の転機となる出来事が起きたり。
たまたま人から言われた言葉や読んだ本をきっかけに、人生が変わったという人もいます。
しかし、「ラッキー(幸運)」というのは、棚からぼた餅式にもたらされるものではありません。
同じような偶然の出来事に出会ったとしても、もしそれに気づけなかったら、あるいは生かせなかったら、幸運を手にできたとは限らないからです。
現在明治大学教授でありながら、臨床心理士。日本トランスパーソナル学会会長、日本カウンセリング学会常任理事、日本産業カウンセリング学会理事の著者。
読んでくれた人が「幸運体質(成功体質)」に変えていくきっかけになるようにと、書かれています。
あなたを幸運に導いてくれる「偶然の出来事(ラッキーな出来事や出会い)」を手にするために、どのような考えを持ち、どのように行動すればいいのか、最新のキャリア心理学(プランド・ハップンスタンス・セオリー)の成果を基に示した本です。
Luck is no accident(幸運は偶然ではない)
同じような偶然の出来事に出会ったとしても、もしそれに気づけなかったら、あるいは生かせなかったら、幸運を手にできたとは言えませんよね。
そればかりか、真の成功者は、後から見れば「ラッキー(幸運)」と思われるような出会いや出来事を自分の人生により多くもたらすために、意図的に計画的に努力しているのです。
偶然の出会いや出来事に心を開いて、それを積極的に人生に取り込むことができるか、どうか。
そこが運命の分かれ目なのです。
この発想は東洋的に言えば、「ご縁」です。
「自分の人生に与えられたご縁を大事にし、慈しみ、それに感謝しながら生きていくことができる人」と言ってもいいでしょう。
そういう人は、ちょっとした飲み会でも出会いのチャンスを見つけます。
15年ぶりに会った友人の誘いに、新たな転職先の可能性を見つけられるかもしれません。
酒席でたまたま知り合った人との弾んだ会話から、ビジネスのヒントを得られるかもしれません。
友人の結婚式で、運命の人と出会う人も世の中には大勢います。
「ご縁」を大切にし、偶然を味方につけられるようになると、可能性がどんどん広がってきます。
人生が豊かに楽しくなってきます。
一方、能力や才能がありながら、やせ細った人生しか送ることのできない人がいます。
せっかくさまざまな「ご縁」が与えられていながら、それに心を閉ざしてしまう人です。
「いや、私にはそんな仕事はできません・・・」
「私にはとても無理です・・・」
「私の専門とは違いますから・・・」
このような否定的な言葉をよく口にしている人を見たことはありませんか?
これでは、せっかくその人の人生に何かが生まれようとしていても、そのまま芽を出さずに消えて行ってしまいますよね。
「計画された偶然理論」とは?
「いい偶然」を呼び寄せ、自分の見方につけて、人生を豊かなものにしていく。
この方法について考える時、大変参考になるのが、「計画された偶然性理論」(プランド・ハップンスタンス・セオリー)です。
偶然を計画するとは?
この理論では、真の成功者は、単に偶然の出会いや出来事を受け身的にではなく、そのような出来事がよりひんぱんに人生で起こるように、自ら積極的に働きかけ、意図的、計画的に行動しているというのです。
自らのキャリア・アンカー(=キャリア選択時に譲れない価値観など)を意識し、目標設定し、計画的に努力していくだけでは十分ではなく、予想外の「偶然」を活かすことが必要であると考えるのです。
ブランド・ハップンスタンス・セオリーはアメリカのスタンフォード大学教育学部教授であったジョン・クランボルツ氏が提唱し、多くのキャリアカウンセラーの間で共感を呼び実践されている理論です。
クランボルツ教授は実際に多くのビジネスパーソン に調査を行って、この理論をまとめました。
成功者が自分の人生や仕事を振り返り、大きな節目となった出来事を分類してもらった結果、そのうち、計画的に努力して手に入れたものは、わずか2割。
残りの8割は偶然の出会いや出来事に上手く心を開いてかかわった結果、生じたものであることがわかったのです。
この理論には、次の5つのポイントがあると著者は考えています。
「計画された偶然性理論(ブランド・ハップンスタンス・セオリー)」の5つの考え方
①人生の全ての出来事には意味がある。あらゆる出来事や出会いにはムダはない。
これまでの人生を振り返ってみると、どんなふうにあなたの人生はかたち作られてきましたか?
意外な人との出会いや、思いがけないちょっとした出来事が、あなたの人生に大きな影響を与えていることがわかると思います。
たとえば、今、あなたが就いている仕事は、どんあ風にして手に入れられたものでしょうか。
その情報は、どのようにして入手されたのでしょう。
もちろん、あなた自身の努力も大きな意味を持っていると思います。
けれども、その努力が具体的なかたちで実を結ぶためには、さまざまな出会いや出来事によって「小さなきっかけ」をつかむことが不可欠なのです。
最初は何の意味もない出会いや出来事のように見えるかも知れません。
「この人との出会いに意味がある」なんて、とても思えないかもしれません。
その人との出会いが、自分の人生の大きな流れを変えることは、そのあと数年経って初めてわかるようになることなのです。
大切なのは、「開かれた心の態度(オープン・マインド)」を保つことです。
「こんな出会いや出来事には意味がない」と決めつけることなく、どんな人や出来事とのふれあいにも、「もしかすると・・・・・」という開かれた姿勢で接することです。
どんな出来事も、出会いも、意味を持っているかもしれない・・・・そんな「開かれた心の態度(オープン・マインド)」が、あなたの人生を幸福に導いていくのです。
②偶然は、自分緒人生を豊かにしてくれるものである
偶然は、偶然。
ただの偶然に過ぎない。
それは、たまたま起こったこと。
何の意味もありはしないこと。
もしもあなたが、こんなふうに考えているとすると、それはあなたに幸福をもたらす宝の山を目の前にして、それをゴミ同然に扱っていることになります。
なんてもったいない!
偶然に対するものの見方をちょっと変えてみましょう。
偶然を「ただの意味のない偶然」たらしめているのは、私たちのこのような「ものの見方」です。
このような「ものの見方」で捉えた瞬間に、偶然は何の意味もない「ただの偶然」になってしまうのです。
逆に、「もしかすると・・・・・」と、開かれた姿勢で捉えられた偶然は、あるときからふと、「意味のある出来事」に「なって」いきます。
偶然が偶然ではなくなり、私たちを幸福に導いていくような、意味ある出来事へ変化していくのです。
偶然を人生の味方につけましょう。
すると、一見ただの偶然にしか見えないさまざまな出来事が、いかに豊かな要素を私たちの人生にもたらしてくれるのが、実感できるはずです。
③あなたを幸福にする偶然(ラッキーな出来事や出会い)は、ある種の人生構えを取ることによって、呼び込むことができる
あなたは、この世界には、ラッキーな人とアンラッキーな人がいると思ってはいないでしょうか。
つまり、運のいい人と運の悪い人が幸せになれると思い込んでいないでしょうか。
逆に、あなたがいまひとつ幸福になれないのは、「いい人との出会い」や「いい仕事との出会い」に「たまたま恵まれなかったからだ」と考えてはいないでしょうか。
あなたを幸福にする偶然、つまりラッキーな出来事や出会いは、あなたがそれを本心から望み、それにふさわしい態度をとっていれば、より多く、もっと頻繁に生じるようになります。
逆に、あんたがそれを頭では考えていても、心の底から望んではおらず、それにふさわしい態度をとっていなければ、ラッキーな出来事はあなたから遠ざかって行ってしまうでしょう。
こんな人を見たことはないでしょうか?
いつもどこか、物足りなさそうな、心の満たされない顔をして毎日をすぐしながら、
「仕方ない。自分は、出会いに恵まれていないだけなんだから・・・」
と言っている人。
そんな人からは、ラッキーな出来事や出会いは、すぐに逃げ去って行ってしまいます。
逆に、「きっと自分にはいいことあある!」「恋も、お金も、仕事も・・・みんな私に近寄ってくる!」と信じて、それにふさわしい行動をしている人には、ラッキーな出来事や出会いはさらにたくさん起こってくるのです。
「私、仕事、欲しいんです!」とキラキラした顔でみんなに言っている人には、いい仕事の情報は、手に入りやすいはずです。
「私、結婚したい!」と素直に輝いた表情で語っている人には、いい出会いは起きやすいもの。
幸運を手に入れるには、それにふさわしい言葉、態度、表情が必要です。
④幸運をもたらす出会い(ラッキーな出来事や出会い)は、意図し、計画することができる
あなたに幸福をもたらす様々な偶然は、自らの人生で、ある程度、意識的に引き起こすことができます。
たとえばあなたが、心の底から結婚したいと願い、いい人との出会いを望んでいるとしましょう。
するとあなたは、無意識のうちに、いい人との出会いがありそうな場所やイベントを探し始めるはずです。
大切なのは、人との「出会い」「つながり」「ご縁」を大切にすること。
そして、その人のことを純粋に願い、積極的に声をかけ、語り合い、惜しみなく行動することです。
アンテナを張って、フットワークを軽くすること。
このことが、あなたの「幸福偏差値」をアップさせます。
⑤そのように呼び起こした偶然は、もはや「単なる偶然」ではない
心の底から願い、それに従って行動することによってもたらされたさまざまな出会いは、もはや「単なる偶然」とは言えない「必然性」を帯び始めるのです。
それは、心理学者のカール・ユングが語った「シンクロニシティ」です。
そのときは、単なる偶然ぐらいにしか思えなくても、後になって振り返ったときに、
「あの出来事はむしろ、起こるべくして起こったことなんだ」
とか、
「あの出来事によって、自分はこのような人生を送るようになった。
自分は、そんな運命を与えられていたのだ」
と実感して思うことができる、そんな意味のある偶然。
それがシンクロニシティです。
たとえば、ある仕事や恋愛の重要な局面で、ある人のことを思い出しながら「あの人どうしてるかな?」「連絡しようかな?」と迷いながら道を歩いていると、ばったりその人と出会った、というように。
そして、その人と30分お茶を飲みながら話をすることで、人生の大きな流れが変わっていく、というように・・・。
人生で劇的に流れを創り出し、幸福や成功を手にすることができる人は、シンクロニシティに開かれた心の姿勢を持っている人が少なくないようです。
シンクロニシティに開かれた心の姿勢こそが、あなたを真の幸福や成功に導いていく人生の大きな流れをつかむ能力につながっていくのです。
希望していない仕事先で、一生を捧げたくなる仕事に出会えたり。
失恋を経験して、より素敵な出会いがあったり。
人生の中の偶然は、思い返すといっぱいありますね。
そう思うと、この「偶然」をどんどんチャンスにしていくことができたら、すごいと思いませんか?
明日もこの本を一緒に読んでいただけたら、うれしいです。
今日も1日おつかれさまでした。
ゆっくり休んで、よい夢を。
では、また。