著者は『暮らしの手帳』を改革したときの編集長です。
改革時には、たくさんの昔からの読者さんからの反感を買ったそうです。
「もとの『暮らしの手帳』を返してください」なんて手紙も、よくきたそうです。
正直むかしは、ワタシも手に取ることはなかった『暮らしの手帳』。
ご年配イメージが強かった雑誌です。
しかし、今けっこうステキになり、まとめたものをハードカバーにしてシリーズ化するほど大人気です。
自分の見方を変えていくためのノウハウについても、書いています。
楽しみの発見・喜ぶ工夫
「最近、何か楽しいことはあった?」
とたずねられたとき、
「どうかな、特別に楽しいことはなかったかな」
など、あっさり答える人がいます。
楽しみは発見するもの。
喜びは工夫から生まれると著者はいいます。
行き着く間もない忙しさ、気持のごたごた、どう見ても大変な仕事・・・こんな時こそ、楽しみを発見しましょう。
そうしなければ、山みたいにそびえたつプレッシャーを乗り越えるのは、よけいに苦しくなります。
著者がそれを知ったのは、『ブルータス』という雑誌の仕事で、アメリカのトレッキング・ルートを旅したとき。
ヨセミテ渓谷につながる道は、標高3000から4000m級。
いくつもの国立公園に囲まれ、厳格に保護された自然の中を歩く行程は、きついものでした。
もともと、シャワーも浴びられず、わざわざつらい思いをして山道を歩くといったアウトドアが苦手な著者。
「そこでしか見られない景色を見たい」と決めたものの、なかなか乗り気になれません。
どうやって自分の気分を盛り上げていくか・・・これが何より肝心な準備でした。
歩く目的の旅ならば、大切なのは靴でしょう。
出発は夏でしたが、春先にサンフランシスコを訪れました。
市街から遠く離れた山の中に、世界一履き心地のいいくつを作る『Murray Space Shoe』があります。
登山用のブーツように石膏の足型をとってもらいました。
バカげたことだと思う人もいるかもしれません。
靴のためにサンフランシスコへ行き、レンタカーを借りて山道を3時間も走り、注文すだけして帰ってきたのです。
でも、実際に一歩踏みしめるごとに、彼への信頼が深くなりました。
「山を降りたら、(靴を作ってくれた)フランクさんのところに寄ろう。話してお礼を言おう」
と考えながら歩いていました。
靴を作ってもらう・・・このひと手間で、旅する楽しみを発見しました。
歩くというルーティンを喜べるような工夫をしたからこそ、辛い道を歩きとおせたのです。
もう一つの工夫として、著者は山に、ヒノキで出来た漆のお椀を持って行きました。
山の食事といえば、缶詰やフリーうドライ食品をアルミや鉄の食器で食べるのが普通。
「地べたに座って、最高級のお椀でいただくごはんは、どんな味がするだろう?」
そんな好奇心もありました。
大変なときこそ、小さな喜びを持ち込む工夫をしましょう。
仕事でも、私的なことでも、好奇心があれば乗り切れます。
わざわざ山の中に行かなくても、毎日を工夫と発見の場にするチャンスは、いっぱい探せると思うのです。
新しい自分を見つける近道
「いつも新しい自分を模索したい」
著者には、こんな願いがあります。
毎朝、毎日、新しい自分を探すのが楽しいと感じているのです。
なぜなら、自分は、完ぺきではないから。理想の姿ではまるでないから。
暮らしの小さなことでも、人とのかかわりでも仕事でも、自分なりに誤っていない道を歩んでいるつもりでも。
自己否定というと暗い言葉に感じるかもしれませんが、これこそ新しい自分を見つける近道です。
現状維持はつまらないです。
何一つ変わらないままで月日が経てば、心はそのうち、やわらかさを失います。
精神が凝り固まるほど、危険なことはありません。
「絶対にこれが正しいんだ!」という主張にしがみついたとたん、成長は止まるものです。
「~しなければならない」と断じるクセがついてしまえば、新しい自分を見つけるなんて、とうていできなくなるでしょう。
温故知新という言葉の通り、古いものや先人の知恵から学ぶことはたくさんありますが、その一方で、今の時代ならではの自分なりの新しさを見つけることは、生きている証ではないでしょうか。
だからこそ、いつも自分を壊したい。
自己否定をくりかえし、自分をこなごなに壊したい。
心をやわらかくし、新しい精神を見つけたい。
そう願ってやまないのです。
心をやわらかくするために、まず「絶対」と「普通」を禁句にする、という方法もあるとか。
いつもの自分と違うことを、ひとつだけ試してみる、というのも著者のおススメです。
今週もお疲れさまでした。
ゆっくり休んでくださいね。
では、また。