アトピーが酷くて、「ミイラ男」とあだ名がついていた著者。
その著者の人生に大きな影響を与えたのは音楽でした。
小学校のころ、野球チームに入っていましたが、野球はあまり好きではなかった著者。
しかし家で歌っているのを聞いて、著者の母親が合唱団のオーデションに申し込んでくれたのです。
著者は音楽から、「ライバルを蹴落とす」より、「みんなが楽しむ」ことに重きを置くことの大切さを学びました。
ビジネスは戦いではない~ライバルではなく、ユーザーをみる
たまたま合格した著者は、その合唱団で本格的なトレーニングを積み、さまざまなコンテストやイベントに出場するようになりました。
テレビにも出て、当時人気だったピンクレディーのバックコーラスをしたことも。
そして、音楽にのめりこんでいきました。
音楽は、スポーツと違って、誰とも戦いません。
一生懸命に練習し、リスナーが喜んでくれれば、全員がハッピーになれる。
自分も元気になれる。
それから声変わりを機にドラマーに転身し、ずっと音楽の影響を受けてきた著者。
ビジネスの本質も音楽に近いのではないか、著書はそう考えています。
会社はバンドのようなもの。
歌のうまい人、ギターのうまい人、ピアノのうまい人・・・。
いろんなパートを受け持つ「腕利き」が集まって、力を合わせる。
そして、いい演奏ができれば、メンバーもリスナーもうれしい。
全員がハッピーになれるのです。
いい音楽を生み出すには、「リスナーはどんな音楽を求めているか?」「そのためにはどんな演奏をすればいいのか?」という問いに向き合うことがいちばん大切です。
メンバー同士が戦っても意味がありませんし、ほかのバンドと戦うことにも意味はありません。
ひとりひとりが受け持つ楽器の腕を磨き、いいハーモニーを生み出せば、必ずリスナーも喜んでくれる。
それが音楽でありビジネスだと著者は思うのです。
もちろん、現実のビジネスでは戦いを避けることはできません。
他社が優れたプロダクトを生み出せば、それを上回るものを出さなければ生き残れませんし、他社の開発スピードに後れを取れば劣勢に立たされます。
それは、競争であり、戦いでもあります。
しかし、それがビジネスの本質ではないと著者は断言します。
むしろ、それを本質だと考えると、道を間違えるのではないか?と。
なぜなら、そうした戦いは、ユーザーから目が離れてしまうからです。
「ライバルからシェアを奪い取れ」
「ライバルより値下げしろ」
「ライバルより利益率を高めろ」・・・。
こうした戦いにばかり気を取られるうちに、ユーザーのことよりもライバルに気が向くようになります。
ライバルに勝つことが目標になってしまうのです。
しかし、ユーザーにとっては、それは「どうでもいいこと」です。
ユーザーは、ただ「いい音楽」が聴きたいだけです。
だから、著者はビジネスは戦うことではないと思うのです。
それより、シンプルにユーザーのことだけを考える。
そして、「ユーザーが本当に求めているもの」を生み出すことに集中する。
その結果として、勝利はもたらされるのです。
「お金」を中心に考えない~価値を生み出すことに集中する
会社は何のためにあるのか?
著者の答えはシンプルです。
世の中に価値を提供するためにある。
それがすべてです。
もちろん、利益も大切です。
利益が出なければ、会社を存続させることができません。
しかし、利益が出るか出ないかは結果論にすぎない。
価値を提供すれば、その結果として、自然と利益はついてくるのです。
むしろ、利益をビジネスの目的にすると危ない。
どの企業でももうけを優先し始めると、ユーザーはその変化に気づきます。
「あ、何かスイッチが入ったな」と。
対価に見合う価値を提供しているうちは、それでも支持してくれますが、もうけを優先していることがわかったら、ユーザーは一気に離れ始めます。
インターネット業界でも、そうして衰退していった企業がたくさんあるそうです。
長く続くものは、納得感をもってお金を払ってもらえるもの。
そのためには、利益よりも価値を生み出すことに集中することです。
とにかくユーザーの満足感を高めることに注力すべきなのです。
そして、ユーザーも企業も、双方が喜べるエコシステムのようなつくりだすことが重要なのだと思います。
だから、著者はお金を中心に物事を考えることはしません。
たとえば、アウトソーシング。
アウトソーシングすれば、コストカットはできるでしょう。
しかし、よほど信頼できる会社でなければ、仕事をアウトソーシングすることは極力避けてきました。
もちろん、ノウハウが漏れてしまうというリスクも考えましたが、それ以上に重要なのは、多くの会社が「受注体質」だということです。
「この仕事をお願いしたい」と相談すると、「いくらですか?」と返ってくる。
「どんな価値を生み出したいのか?」
「そのためには何が重要なのか?」。
そうした本質的な議論がなかなかできない。
逆に価値を下げてでも、コストを下げたいと言い出す会社もある。
それでは、とてもではありませんが価値を生み出すことなどできません。
あるパソコンメーカーがは、かつてすべての工程を自社内で行っていたのですが、あるとき組み立てをアウトソーシングしました。
すると、コストカットにつながった。
そこで、「あれも、これも」とアウトソーシングを増やした結果、社内でやることが何もなくなってしまったというのです。
お金を中心にモノを考えると、会社は空っぽになってしまう。
それを象徴するような出来事だと思います。
お金よりも大切なのは、心です。
「世の中に価値を提供したい」
「たくさんの人々に喜ばれる価値を生み出したい」。
そんなピュアな情熱を持つ優秀な人だけを集める。
経営は、彼らがその能力を最大限に発揮できる環境を守り続ける。
そして、「こんなサービスが実現できたら、みんな喜んでくれるはずだ」とワクワクしながら仕事をする。
このワクワクする気持ちが大切なのだと思います。
もちろん、そのようなサービスを生み出すのは簡単なことではありません。
身を削るような努力をしなければなりません。
しかし、だからこそ、ユーザーも「あの会社のやることは、いつもワクワクさせられる」と思ってもらえるようなサービスを出し続けることができる。
それこそが、企業のブランディングであり、会社を永続させるもっともシンプルな法則だと著者は思うのです。
だから、著者はこう確信しています。
ユーザーを愛する気持ち。
自分が携わる商品やサービスを愛する気持ち。
これが、ビジネスを成功させるために一番たいせつなものなのだ、と。
失敗した時は、ユーザーが見えなくなっているとき・・・。
まさに、そうですよねー。
ライバルって、本当に視界に入ってくるから、ついつい目が行ってしまう。
でも、仕事の本質はそこじゃないんですよね~。
今年は、本質に迫る仕事がしたいものです。
今日もお疲れさまでした。
では、また。