「仕事を楽しもう!」
そんな言葉を耳にすることがあります。
しかし、著者はあまり共感できません。
もちろん、仕事は面白い。
面白いから打ち込める。
しかし、「仕事を楽しもう!」というニュアンスと、著者の持つ感覚はずいぶん違います。
なぜなら、仕事は厳しいものだからです。
仕事はしんどくて当たり前
生半可な姿勢では、ユーザーに喜んでもらうことはできません。
ユーザーにニーズからわずかにもずれないように、神経を研ぎ澄まさなければなりませんし、クオリティの高いプロダクトを生み出すには、身を削るような努力も必要です。
しかも、失敗は許されません。
心理的にも肉体的にも強いストレスにさらされるのが、仕事と言うものです。
しんどくて、当たり前なのです。
むしろ、そのしんどさを引き受けて、淡々と日々の仕事に向き合っていく。
その苦しい家庭を経て、結果が出た時に「幸せ」かの実感を体感しているのが、本物のプロフェッショナルだと思うのです。
著者がハンゲーム・ジャパンに入ったのは、設立3年のとき。
当時すでに韓国で1000万人ものユーザーを獲得していたパソコン向けオンライン・サービス「ハンゲーム」を日本で展開するために作られた会社です。
オンラインゲームには、大容量通信が欠かせませんから、ブロードバンドの整理が遅れていた日本には、同様のサービスはほとんどありませんでした。
いわばまっさらな市場。
そこに無料でゲームを提供することで、ユーザーを増やす、ゲーム内の少額課金などでマネタイズするという斬新なモデルを持ち込んだのです。
著者が入社した時、すでに100万人を超えるユーザーを獲得しましtが、収益化には程遠い状況。
このビジネスモデルを成功させるには、ユーザーを増やすしかありません。
そこで、ユーザー獲得のために奔走しました。
ヒントになったのは、テレビ。
無料ゲームは、視聴者が無料で楽しむことができるテレビに近いのではないか?
テレビが一番盛り上がるのは、生放送。
であれば、リアルイベントを開催すればいい。
それをネット動画で中継して、来場できない人もネット上で参加できるようにすれば盛り上がるはず・・・。
そう考えたのです。
そして、口コミでイベント参加者が雪だるま式に増加。
当初、イベント開催時のサイトへの同時接続者は数千人でしたが、1万人、5万人と増えていきました。
悲願だった10万人を集めた時は、「パソコンの前で泣いた」と書き込んでくれたユーザーもいました。
これは、著者も素直にうれしかった。
なぜなら、この瞬間のために必死でやってきたからです。
設立間もない会社だから、人でが足りない。
少ない人数で、ゲーム開発から営業までやって、かつイベントも毎週のように実施するわけですから、毎日のように雑居ビルのワンフロアに泊まり込んで、寝る間も惜しんで働きました。
「辛いな・・・」と思ったことは、ヤマのようにあったそう。
でも、だからこそ、それが報われた時には「幸せ」を感じる。
それを深く実感した経験でもあったのです。
このような経験を重ねて、著者が思う「幸せ」。
人は誰でも誰かに認められたいと思っている。
だから、仕事を通じて世の中の人々に喜んでもらったときに、自分の存在価値を認められたと感じる。
それが「幸せ」なのです。
そして、その「幸せ」のためなら、身を削ることができる。
それがプロフェッショナルなのではないかと著者は考えるのです。
「空気」を読まない~職場の批判よりユーザーを恐れる
「空気を読まない」というのは、これも「すごい人」たちの共通点です。
上司が目指している方向性が間違っていると思えば、臆することなく自分の意見を述べる。
エンジニアがデザイナーの仕事に「ダメ出し」することもあれば、デザイナーがエンジニアに「ダメ出し」することもある。
ときには、周囲の反対を押し切っても、自分が信じるプロダクトを作り上げてしまう。
自分が「違う」と思えば、空気を読まずにつきっ住むところがあるのです。
サッカーに例えるならば、野性的なフォワードのような存在。
ゴールへのイメージが明確に見えたら、自分でドリブルしてシュートを打ちにいく。
逆サイドでキャプテンが、「パスを回せ」とサインを送ってもお構いなし。
自分の頭でゲームの全体状況を把握して、「これがベスト」と確信する方法でゴールを狙うのです。
だから、誤解を恐れずに言えば、「すごい人」には、大企業にうまくなじめなかった人が多いように著者は思います。
ゴールを外した時はなおのこと、たとえゴールを決めても非難されます。
大企業では、上司のサインを無視して、自分でゴールを放てばどうなることでしょうか?
「あいつは自分勝手だ」「あいつは使いづらい」・・・。
周囲の人たちもその空気を敏感に察知して、彼らを遠巻きにし始めます。
それでも、彼らはプレーの仕方を変えようとしません。
彼らは、ユーザーを恐れているからです。
ユーザーの求めているものから、ほんの「1ミリ」ずれただけでも、作り上げたプロダクトは相手にしてもらえない。
そんなマーケットの厳しさが骨身にしみているのです。
彼らは絶対に妥協しようとしません。
もちろん、いろんな人の意見に耳を傾け、自分のプロダクトい・イメージを磨こうとします。
でも、職場の空気に合わせるようなあいまいなことはしません。
著者はこれこそがプロフェッショナルと考えています。
こういう人でなければ、ずば抜けたプロダクトをつくりだすことはできません。
「いいもの」をつくるために、いちばんやってはいけないのは調整です。
「Aさんのアイディアと、Bさんのアイディアを組み合わせてみよう」とあれこれ機能を加え、複雑で使いづらいもの生み出してしまう。
あるいは、「上司の好みに合わせよう」と焦点がぼやけた曖昧なものを生み出してしまう。
それでは、ユーザーの心がつかめません。
なぜ調整が行われるのか?
職場の雰囲気を読むことが、仕事の目的になってしまっているからです。
これでは本末転倒。
会社は社員同士が仲良くするためにあるのではありません。
あくまでユーザーに喜ばれるものを作る場所です。
そのためには、職場の空気を壊すことを恐れてはならない。
軋轢を恐れてはならないのです。
常に周囲に気を遣うあいまいな人は、そこそこの仕事はできるけれど、「そこそこ」を超えることはできません。
ずば抜けた結果を出すためには、空気を読んではならないのです。
ユーザーが求めていることを、シンプルに追求する人だけが、ずば抜けたものをつくり出すことができるのです。
職場の空気を読む、読まないって、とても勇気が必要です。
でも、確かにあれを読むことで、仕事のクオリティは下がります。
それをあえて「無視」する。
そんな仕事をしたいものですね!
今日も一日、おつかれさまでした。
ゆっくり休んでくださいね。
では、また。