”専門家”になってはいけない。
著者はそう考えています。
もちろん、ビジネスパーソンはそれぞれ専門知識や線もの技術を磨き上げなければなりません。
しかし、しばしば”専門家”は本質を見失ってしまうことがあるのではないでしょうか。
”専門家”にならない~本質からズレた努力はしない
かつて、ハンゲーム・ジャパン株式会社時代にこんなことがありました。
ゲーム市場の主役が、パソコンからフィーチャーフォンに移行しつつあった頃のことです。
当時、パソコンの世界ではコンピューター・グラフィックスでつくりこんだ精緻なゲームが流行っていました。
しかし、フィーチャーフォンでは、とてもそれと同じものを再現することはできません。
データー量が大きすぎますし、携帯電話の画面サイズでは、再現不可能。
だから、フィーチャーフォン向けの「手軽なゲーム」開発をする必要が出たのです。
これに、一部の社員が強く抵抗。
「こんなものは、ゲームではない」と言うのです。
気持ちはよくわかりました。
これまで、精緻なゲーム作りで実績を上げてきた彼らにすれば、「手軽なゲーム」をつくることは、自分のこれまでのキャリアを否定すること。
しかし著者は、「それは違う」と主張しました。
なぜなら、彼らは本質からずれていると考えたからです。
そもそもゲームとは何でしょうか?
遊びです。
人々が楽しく遊べるゲームは、よいゲーム。
そう考えれば、「美しいグラフィックス」はゲームの本質ではなく、あくまでゲームの一要素にすぎません。
そこにこだわって、フィーチャーフォンで求められるゲームの開発をしないのは本末転倒。
「そもそも」を忘れた時、人は誰でもこのような過ちを犯してしまうものです。
だから、著者は常に、この問いかけを大切にしています。
「そもそも、これは何なのか?」
ややもすれば”専門家”がバカにしがちな素朴な問いかけですが、この問いかけこそが、著者をものごとの本質に立ち返らせてくれるのです。
「何もない」から、鍛えられる~リソースが足りないからこそ、人は考える
「予算が少ないから、結果を出すことができない」
このような言い方をする人で、仕事ができる人はいないと著者は言います。
潤沢な予算を用意しても、彼らに結果を出すことはできない。
そう確信しています。
もちろん、ビジネスをする上では、ヒト・モノ・カネのリソースが欠かせません。
そして、それを用意するのが経営の責任です。
しかし、常に必要なリソースが用意できるということは、ありえません。
それが、ビジネスの現実なのです。
大切なのは、そのなかでいかに知恵を絞って結果を出すか。
その試行錯誤の中でこそ、本物の仕事力は鍛えられます。
著者は、幸か不幸か大企業でキャリアを始めました。
日本テレビにいたころは、プレスリリースを出しただけで多くのメディアが注目してくれました。
しかし、転職したすぐのハンゲーム・ジャパンはそうはいきません。
広告の予算もなく、無名の会社で相手にされません。
それまでに培った著者のやり方は、ほとんど役に立たなかったのです。
とにかく知恵を出して、自ら動いて、汗を核しかない・・・。
そこでメディアに振り向いてもらえるプレスリリースの作り方を徹底研究し、友人知人に口コミで庇護出ていくなど、ありとあらゆることをしました。
日本テレビ時代に比べれば、膨大な手間がかかりましたが、著者はここで鍛え上げられました。
プレスリリースのつくり方、キャッチコピーのつけ方、ボディコピーの構成理論・・・。
そこには、人々の心に訴えるための、実に奥深いノウハウがあります。
サービスの魅力を一瞬で伝える「言葉」をもつけられれば、それだけで受け手の反応は劇的に変わるのです。
それだけではなく、この経験が新しいサービスを企画する力も鍛えてくればした。
なぜなら、人の心に刺さるキャッチコピーは、優れたサービスのコンセプトそのものだからです。
口コミを頼んだ友人知人からも、サービスを体験してもらったときの、リアルな反応を見ることができます。
好反応を得られたサービスと、反応の鈍いサービスの違いは?
この肌感覚の有無が、サービス開発力を大きく左右します。
こうして著者は、効果的なマーケティングの方法をゼロベースで模索することで、本質的なノウハウを学び、サービスの企画力も磨くことができました。
「何もない」状況でこそ大きく成長ができます。
そして、試行錯誤を繰り返す中で、「リソースが足りなくても成功できる」という確信を得ることができます。
その核心こそが、ビジネスパーソンの自身の源となるのです。
ひとつのことを極めると、ついその技術にしがみついてしまうことがありました。
それが、「いちばん大切なこと」から目隠しをしてしまうんですよね。
今年は、「そもそも」を忘れない年にしたいものです。
今日も、寒い1日でした。
よく温まってくださいね。
では、また。