部下のモチベーションを上げる、それが上司の重要な役割だと、よく言われます。
でも、著者は疑問に思うのです。
企業はプロフェッショナルを採用しているからです。
会社や上司にモチベーションを上げてもらわなければならない人は、プロとして失格だと思うからです。
このようなことが常識のように語られることは、社会全体が幼稚化している証拠ではないかと感じています。
もちろん、情熱を注いでいる仕事で結果を出せず、リーダーを外されたり、プロジェクトを中止されたとき、誰だって一時的にモチベーションが下がることはあります。
著者も、会社に必要な判断なら、それらを伝えてきました。
このようなとき、相手を納得させるテクニックなどありませんから、誠心誠意伝えてきました。
それでも、彼らのモチベーションが失われるなら、それはやむを得ないこと。
ビジネスは結果がすべて。
社員のモチベーションに配慮するという理由で、結果が出ないプロジェクトを継続することはできません。
結果が出せてないプロジェクトから外されて、モチベーションが下がるのでは、プロとは言えません。
それだけではありません。
さらに問題なのは、モチベーションを上げてもらおうという人が、優秀な人たちの足を引っ張ることです。
大企業の人から、管理職が付かれているという話をよく耳にします。
部下の教育や評価、山のような決裁書類、経営陣の報告書。
そのうえ部下のモチベーションまで上げなくてはならない。
そんなユーザーと関係ない雑務に追い回されて、家まで持ち帰って仕事をする状況では、誰だって疲れるでしょう。
そして、「ユーザーのために」という志をあきらめてしまう。
これは、優秀な人の使い方を誤っているとしか思えません。
いい結果を生み出すためには、優秀な人が余計なことに惑わされず、速いスピードで動ける環境が必要です。
であれば、価値を生み出さないばかりか、優秀な人の足を引っ張るモチベーションの低い社員は必要ない、という結論になるのが当然だと著者は思うのです。
だから、著者は社員のモチベーションを上げる必要はないと考えています。
それは、会社や上司の問題ではなく、社員一人一人の問題です。
そもそも、サバンナの野生動物が「最近モチベーションが上がらなくて・・・」などと考えるでしょうか?
考えるはずがありません。
彼らは、ただひたすら必死で生きている。
会社で働くのも、それと同じではないでしょうか?
「ビジョン」はいらない~未来予測より目の前のことに集中する
会社のビジョンや、中期、長期の戦略をメディアや社員から質問されることが、著者にはあります。
その度に、著者はこう答えてきました。
「いや、わかりやすいビジョンは特にありません」
すると一部の社員は不安そうな顔をして、メディアの人たちは残念そうな顔をします。
でも、ないものは仕方ない。
むしろ、
「なぜ、ビジョンが必要なんですか?」
とたずねたいと思ったものです。
近年「ビジョン経営」の重要性が指摘されています。
経営理念に基づき、企業の目指す姿を中長期計画のように「目に見える形」で示すことが、経営の責務のように語られています。
しかし、誰しも「未来」のことは、わかりません。
わからないものを明文化するのは難しいと思うのです。
とりわけ、現代は変化の激しい時代。
「わからないこと」をさもわかったように語ることの方が、よほど無責任ではないでしょうか?
著者自身、これまでの仕事を振り返って、やはり「未来はわからない」と言わざるを得ません。
ハンゲーム・ジャパンに入社したころは、パソコン向けのオンライン・ゲームでナンバーワンになることを目標に頑張ってきました。
しかし、その後フィーチャーフォンが登場に、次いでスマートフォンが登場。
そんな未来を予測したか?もちろんできませんでした。
ましてや、LINEが世界数億人に利用されるサービスになるなど、予想してできることではありません。
これがビジネスの現実ではないでしょうか?
だとすれば、ビジョンは掲げない方がいい。
なぜなら、それに縛られてしまうからです。
会社にビジョンを掲げたら、ビジョンに従ってきた社員たちを説得しなければなりませんし、新たにビジョンを作る手間も必要になる。
そんなことに時間をかけている間に、時代の変化に取り残されます。
変化の時代を生き抜くために最も大切なのは、いち早く自分が変化することです。
それを邪魔するものをあえて作ることは意味がないことです。
「ビジョン」を求めたくなるのは、将来に対する「見通し」がほしいからではないでしょうか。
しかし、著者はそれこそ危険だと考えます。
なぜなら、危機感が失われるからです。
人間は、不安だからこそ、神経が研ぎ澄まされます。
だからこそ、ユーザーの変化にも、敏感に対応できる。
そんな野性的な感覚を研ぎ澄ますことこそが、サバイバル能力につながります。
そして、そういう社員が多い会社でなければ、この変化の時代を生き抜くことはできないと確信しています。
若手の人たちのモチベーションを上げるのも、ベテランの仕事・・・とばかりに頑張っていたころもありました。
でも、思うようにはいかないものでした。
しかし、これは結構や労力がかかる割に、仕事の本質とは違う場所にエネルギーを大きくとられました。
今、仕事先では「すべての新人に全力をかけるのではなく、伸びる人材に力を注ごう」と管理職とベテランたちが言っています。
モチベーションを持つかどうかは本人次第。
厳しいようですが、仕事の本質は、新人育成よりもユーザーのニーズに応えること。
それを取り違えているようでは、ワタシもまだまだでした。
今日もお疲れさまでした。
では、また。