研究者によって、自己コントロールを鍛える方法は、さまざま試されてきました。
本著では、この「意志力」を鍛える方法として、
①自制心を要する小さなことを継続する
②「難しい方を選ぶ」ことを繰り返す
というやり方も提案しています。
自制心を要する小さなことを継続させる
自制心を要する小さなこと・・・
例えば、
姿勢をよくする、
毎日手がつかれるまでハンドグリップを握る、
甘いものを減らす、
出費を記録する
など・・・
これらを継続して行った場合、意志力が全般的に強くなるという結果が出ています。
研究者たちは、参加者にふだんはとくにコントロールなどしていないような、些細なことをコントロールしてもらうことで、自己コントロールの筋力を鍛えることができるか、実験し成果を出すことができました。
例えばわたしたちは、クローゼットの整理など、ずっとやろうと思っていながらやっていないことに応用できます。
期限の設定方法の例としては、こんなものです。
第1週 クローゼットの扉を開け、ぐちゃぐちゃな様子をしかと目に焼き付ける。
第2週 ハンガーにかかっている服を片っ端から整理する。
第3週 レーガン政権以前の服はすべて捨てる。
第4週 非営利団体が骸骨模様の服も引き取ってくれるかどうか確認する。
第5週 ・・・・
意志力の訓練生たちが自分なりにこのようなスケジュールを作成して取り組んだところ、2か月後にはクローゼットが片付いたりプロジェクトが完成しただけでなく、食事の内容が健康的になったり、運動量が増えたり、タバコやアルコールやカフェインの摂取量が減ったりしました。
まるで自己コントロール筋がきたえられたようなかんじでした。
「難しい方を選ぶ」ことを繰り返す
ノースウェスタン大学の心理学者のチームは、2週間の意志力トレーニングによって恋人への暴力を減らすことができるか、という実験をしました。
40名の成人(18歳から45歳まで、全員恋人がいる)をてきとうい3つのグループに振り分けました。
第1グループは、利き手ではないほうの手を使って食事や歯磨きをしたり、ドアを開けるように指示しました。
第2グループは、汚い言葉を使うのを禁じられ、「うん」と言わずに「はい」と答えるよう指示を受けました。
第3グループは、とくに何も指示されませんでした。
さて、2週間後、第1グループと第2グループの人たちは、嫉妬に駆られたり、パートナーにないがしろにされたり、あるいはそう感じたりなど、いかにもかっとなりそうなことが起きても、あまり反応しないようになっていました。
しかし、第3グループの人たちにはそのような変化は何も見られませんでした。
私たちも、たとえ暴力の問題はないにしても、かっとなってしまって後悔するような経験は誰にでもあるはずです。
これらの実験のトレーニングで行われたアクションでもっも重要なのは、期限を守ったり、左手でドアノブを開けたり、汚い言葉を飲み込んだりすること自体にはありません。
最も重要なことは、自分が何をしようとしているかに気づき、実行するのがたやすいことより困難なことを選択することです。
毎回こうした意志力のエクササイズを行っていると、脳はすぐに行動に出ないで考えるようになります。
課題が些細なことであればあるほど、このプロセスはたやすくなるでしょう。
指示された内容はそれなりに厄介ですが、手に負えないほどではありません。
意志力のトレーニングの課題があまり重要なことではなかったおかげで、参加者は苦痛を感じることなく、自己コントロール筋を鍛えることができたのです。
苦痛を感じてしまうと、何かを変えようという試みも往々にして挫折してしまいます。
意志力の実験:目標に関係のある強化法をやってみる
あなたが意志力トレーニング法を試してみたい場合は、次の意志力トレーニングメニューから一つ選び、自己コントロールが筋肉に似ていることを実感しましょう。
「やらない力」を強化する
汚い言葉を使わない(あるいは口癖を言わないようにする)、座っているときに脚を組まない、日常生活で食事をしたり、ドアを開けるときに利き手を使わない、など。
「やる力」を強化する
何かを毎日継続して行うようにする(既にやっていること以外で)。
これは、サボる言い訳をせずにひとつのことを続ける習慣をつけるための練習です。
母親に電話をする、5分間の瞑想を行う、捨てるもの、またはリサイクルに出すものを毎日ひとつ見つけるなど。
自己監視を強化する
ふだんはとくに注意を払っていないようなことについて、きちんと記録をつけてみる。
何にお金を使ったか、何を食べたか、インターネットやテレビをどのくらい
見ていたか、なんでもいいでしょう。
どのエクササイズを行うにしても、あなたの取り組みたい意志力のチャレンジの関連のあるものを選ぶとよいでしょう。
なかなか達成できない目標があるので、今回覚えた”助走”をつけて、みようと思います。
ゆっくり休んでよい夢を!
では、また。