脳は、将来の報酬にはあまり反応しません。
サバイバルをしていた大昔の習慣で、「いま、目の前にある報酬」をがっちり捕まえるべく、目の前にある誘惑に対してアドレナリンが放出され、強烈な魅力を感じるように、脳ができているのです。
昨日は、そんなときの対処法として、「10分ルール」を勉強しました。
「10分待ってみて、それでも欲しかったらOkにする」という決まりを自分に決めること。
それによって、将来の報酬と目の前の報酬を比較したときにバランスを失った考え方をすることを防ぐことができます。
「割引率」が10年後の成功を決める
将来の報酬を割り引いて考えてしまうのは、人間の性だとしても、その割引率は人によって異なります。
最高級品は決して値下げしない高級店よろしく、割引率が非常に低い人たちもいます。
将来大きな報酬を手に入れることをつねに念頭に置き、そのために待つことができます。
いっぽう、割引率が非常に高い人もいます。
最大90%オフまで値下げしてでもわずかな現金収入をねらう閉店セールのように、目先の快楽を味わわずにはいられません。
実は、この割引率の大きさによって、長期的な健康と成功が決まります。
個人の割引率によって生じる長期的影響を調査した最初の実験は、「マシュマロ・テスト」と呼ばれる、古典的な心理学の実験でした。
1960年代の後半、スタンフォード大学の心理学者ウォルター・ミシェルは、4歳の子供たちにマシュマロをすぐに1個もらうか、15分待って2個もらうかを選ばせました。
実験の説明を済ませると、担当者は子供の前にマシュマロ1個とベルを置いて部屋を出ていき、子供を一人にします。
担当者が戻ってくるまで待っていられたら、子供はマシュマロを2個もらえます。
もし待てなければ、ベルを鳴らしてから食べてもよいという決まりです。
4歳児のほとんどは、欲求の充足を遅らせるには、ほとんど役に立たない方法を試しました。
マシュマロをじーっと見つめ、どんな味がするのかなぁ、と想像していたのです。
そういう子供たちは、すぐに降参してしまいました。
いっぽう、同じ4歳児でも最後まで待てた子供たちの多くは、マシュマロを見ないようにしていました。
じたばたしながら待っている子供たちの姿を撮影したゆかいなビデオ映像もあります。
まさに自己コントロールについて学ぶには、うってつけの教材です。
ある女の子は、お菓子が見えなくなるよう、長い髪で顔を隠してしまいました。
また、ある男の子はお菓子に目が釘付けになりながらも、降参のベルを手の届かないところへ置きました。
別の男の子は食べるのをぐっとこらえて・・・・なめるだけにしました。
4歳児がどのように欲求の充足を遅らせるかについて、研究者たちは実験で数多くのことを学びました。
しかし、それに加えて、これは子供の将来を予見する方法として非常に優れていることがわかりました。
どれくらい待てる子かが、その子の将来の学業成績や社会的な成功を物語っていたのです。
この個人差によって、人生は大きく左右されます。
平たく言えば、明日の幸せよりも今日の幸せをどれだけ大事に思うかということです。
将来に対する割引率が高い人たちほど、自己コントロールに関してさまざまな問題を抱えやすくなります。
タバコの吸いすぎや、酒の飲みすぎ、薬物依存やギャンブル依存症のリスクが高くなります。
常に「いま」しか頭になくて、やらなければならないことも先延ばしにしてばかりになります。
意志力の実験:割引率を下げる
個人の割引率は、幸いにして物理の不変の法則ではありません。
選択についての自分の考え方を変えるだけで、割引率は下げることができます。
仮に、著者があなたに90日後に換金可能な100ドルの小切手をプレゼントしたとします。
著者はすぐに気が変わってケチろうとします。
「今日からすぐに使える50ドルの小切手と交換しませんか?」
こんな場合、ほとんどの人は
交換しないでしょう。
けれども、もし最初に50ドルの小切手をもらっていたら、かなり待たないと換金できない100ドルの小切手と交換しないかと言われても、ほとんどの人はやはり交換しないでしょう。
つまり、人は最初にもらった報酬を手放そうとしないのです。
その理由のひとつはm、人はすでにもらったものを失うのが嫌だからです。
50ドルもらえる喜びより、50ドル失う痛手のほうが強烈に感じられます。
そのあとで大きな報酬が手に入れるのを期待していたのに、すぐにもらえるとはいえ、それを少額の報酬と取り換えるのは損に思えます。
しかし、すぐに報酬を手に入れていた場合(50ドルの小切手を握りしめています)、あとでもっと大きな報酬をやるから我慢しろと言われても、やっぱり損に思えてしまいます。
経済学者たちは、人は様々な理由をつけて正当化し、最初にもらいたいと思った報酬を手に入れようとすることを発見しました。
最初に「この50ドルをもらっておこう」と思った人は、目先の欲求を充足させたほうがいいと思う理由をさらに付け足そうとします。
たとえば、
「このお金があればいろいろと使える」
「100ドルの小切手が90日後にちゃんと換金できるかどうか、わからないしなぁ」
など。
いっぽう、「100ドルの小切手をもらうことにしよう」と最初に決めた人は、欲求の充足を遅らせたほうがいいと思う理由をさらに付け足します。
たとえば、
「お金が2倍あれば、買い物も2倍できるもの」
「90日後だってお金が必要にきまってるし」
など。
このように、将来の報酬を先に考えれば、将来の報酬に対する割引率が著しく下がります。
何かの誘惑にかられ、目先の欲求に従いたくないと思ったら、次のようないっぷう変わった意思決定の仕方を試してみることを著者は勧めています。
①長期的な利益に反する行動をとりたくなった場合は、目先の快楽に負けてしまったら、あとで得るはずの最高の報酬をあきらめることになるのだ、と自分に言い聞かせる。
②長期的な報酬が手に入ったところを想像する。
自制心を発揮して我慢したおかげで手に入った成果を味わっている、未来の自分の姿を想像する。
③最後に、自分に問いただす。
「いっときの快楽のために、大事な目標をあきらめていいの?」
明日は、背水の陣で「もうひとりの自分」と戦う方法について勉強します。
昨日から「10分ルール」にチャレンジしておりますが・・・まったく成功しません・・・。
「5分ルール」で再チャレンジします。
自分が4歳児の頃にマシュマロ・テストしていたら、「なんて自己コントロール力のない子供なんだ」と研究者たちに笑われたことでしょう・・・。
「誘惑にかられた自己」は、行動経済学者に言わせると、「まったく別の人間だと思って、相手の動きを予想し、封じ込めるべく手を打たなければならない」ものだそうです。
別の行動心理学の本でも、誘惑に負ける自己に対して「こどもの〇〇(自分の名前)」とでも名前を付けてしまえと書いてありました。
意志力を強くして、今年こそもっと!
今日もお疲れさまでした。
ゆっくり休んで、すてきな夢を。
では、また。