人から人に感染するものは、いろいろあります。
しかし、意志力も感染します。
2010年の全米経済研究所の報告では、米国空軍士官学校の士官候補生の中で、まるで感染症が広まるような勢いで、不健康な生活習慣が「感染」し、健康状態が悪くなってしまったのです。
そこで3487人の士官候補生を対象に、高校時代の体力テストから士官学校の定期体力テストまで、合計4年間の記録をチェックされました。
すると、飛行中隊で最も不健康な士官候補生に引きずられるようにして、ほかの士官候補生たちの健康状態が悪化していったことがわかりました。
意志力はうつる
この研究は一例にすぎませんが、このようにいっけん自己コントロールの問題に思えるようなことでも、じつは周囲の影響をかなり受けています。
私たちは、自分の選択には他人の影響など受けていないと思いがちで、自立した自由な意思を持っていることに誇りを感じています。
しかし、心理学やマーケティングや医学の研究が示している通り、私たち個人の選択は、他人が考えていることや、欲しがっているもの、やっていること、さらには他人が自分に期待していることなどに、強い影響を受けています。
これから見ていく通り、こうした社会的な影響によって、私たちはさまざまな問題に巻き込まれます。
しかし、社会的な影響が逆に意志力の目標を達成するのに役立つこともあります。
意志力の問題における失敗が感染する一方で、自己コントロールが感染することもあるのです。
肥満はこうして感染する
疾病対策予防センターは、新型インフルエンザや初期のエイズ禍発生の追跡などの活動で知られています。
しかし、センターではさらに米国全土の肥満率や、国民の健康状態の推移を長期に調査。
1990年には、肥満率が15%以上の米国全州に一つもなかったのに、1999年には、肥満率が20%から24%の州が18もありました。
ところが、2009年には、肥満率20%を下回ったのは、コロンビア州1州と首都ワシントンだけ。
25%以上の州が33にものぼりました。
ふたりの科学者、ハーバード大学医学分ニコラス・クリスタキスとカリフォルニア大学のジェームズ・フォーラーは、公衆衛生局の職員やメディアがこの肥満の拡大傾向を指して使い始めた表現に衝撃を受けました。
「肥満の感染」と呼んだのです。
これを確かめるため、彼らは「フラミンガム心臓研究」へのアクセス権を取得。
この研究は、マサチューセッツ州フラミンガムの住民1万2000人以上のデータを32年間にわたって調査したものでした。
観察の結果、まさに感染症のような実態が見えてきました。
肥満は家族や友人の中で感染していたのです。
ある人の友人が肥満になった場合、その人が将来肥満になるリスクは171%増加。
姉妹が肥満になった女性の場合、本人が肥満になるリスクは67%も増加し、兄弟が肥満になった男性の場合、本人が肥満になるリスクは45%増加しました。
さらにフラミンガムの地域で広まっていたのは、肥満だけではありませんでした。
飲酒量が増えた人がひとり出ると、その地域では飲みに行く人や二日酔いになる人が激増しました。
ところがいっぽうでは、自己コントロールが感染する証拠も見つかりました。
ひとりが禁煙すると、その人の友人や家族も禁煙する確率が高くなったのです。
禁煙以外にも薬物の使用や睡眠不足、憂うつなどが同様のパターンで広まっていました。
悪い習慣も好ましい変化も、ともに人から人へとウイルスのように感染するのです。
マイクロスコープ:あなたの「感染源」を発見する
意志力の問題は、すべてが周囲からの”感染”とはいえないにしても、社会的な影響を受けています。
あなた自身の問題についてはどうでしょうか?
・あなたの仲間内のほかの人たちも、あなたと同じ問題を抱えていますか?
・あなたの習慣は、友人や家族の習慣がうつったものだと思いますか?
・一緒に楽しみにふける仲間がいますか?
・仲間内で、あなたと同じ問題の改善に取り組み始めた人はいますか?
ダイエットに感染したい!身近なスリム美人をチェックですね。
また、意識の高い人といっしょにいると、仕事のペースはほんとうに上がりますよね!
選べる環境も、そうでない環境もあるけれど、意識して”自己コントロール”を感染させていきたいものです。
今日もお疲れさまでした。
ゆっくり休んでくださいね。
では、また。