人々の振る舞いが感染するとき、その人とあなたの関係が決め手となります。
同僚の影響など、親友の影響に比べたら足元にも及びません。
親しい間柄では、なぜ感染しやすいのでしょう。
体の免疫システムも、自分の細胞を攻撃したりしません。
しかし、「自分と違うもの」と認識すると、脅威としてそのウイルスやバクテリアを隔離したり破壊したりします。
それと同じで、私たちが愛情や親しみを抱いている人たちのことを考えるときには、私たちは「自分と同じもの」とみなします。
「好きな人」から感染する
このことは、脳スキャナーを使った実験でも、実際に確認できます。
まず成人の被験者たちに、自分のことを、次に母親のことを考えてもらいます。
自分のことを考えた時も、母親のことを考えた時も、脳の活動した領域はほとんど同じでした。
つまり、私たちが「自分」と思っている小野には、自分が大事に思っている人も含まれているということです。
私たちの自己意識は、ほかの人たちとの関係の上に成り立っており、多くの場合、ほかの人たちのことを考えることによってのみ、自分というものをとらえることができます。
私たちの自己意識は、このようにほかの人たちが含まれているために、その人たちの選択が私たちの選択にも影響を及ぼすのです。
マイクロスコープ:あなたは誰の影響を最も受けていますか?
自分にとって「親しき他人」とは誰だろう、と考えてみましょう。
いちばん長く一緒に過ごしている人は誰ですか?
尊敬する人は?
自分と一番似ていると感じる人は?
誰の意見を最も重要だと感じますか?
誰のことを一番信頼し、大事に思っていますか?
いつの間にか、よいことでも悪いことでも、その人たちと同じことをやっていませんか?
あるいは、その人たちのほうが、あなたと同じことをするようになりましたか?
「ろくでなしの仲間」にはなりたくない
スタンフォード大学で行われた介入教育では、あるやり方で、大学生の問題行動を減らしました。
研究者たちは、学生たちの大量の飲酒を思いとどまらせるようなチラシを2種類用意しました。
1つは、理屈で攻めるタイプ。
「一晩飲みすぎただけで、抽象的な思考力がそのあと30日も衰えます」など、飲酒にまつわる恐ろしいデータを並べたもの。
これは微積のテストを心配している点取り虫の学生たちにはかなりの効果があるでしょう。
もう1つは、飲酒のイメージを大学生活のつまはじきものである大学院生と結びつけるという手です。
チラシには一人酒を飲んでいる男子大学院生の姿が描かれ、そのわきにはこんな文句が載っています。
「スタンフォードの院生は酒飲みが多い・・・そのほとんどはろくでなし。酒を飲むなら慎重に・・・。こんな野郎と間違えられたら最悪」。
2種類のチラシは、別々に2つの新入生寮で配布されました。
それから2週間後、寮生たちは無記名のアンケート調査に回答しました。
前の週の飲酒量について尋ねる調査です。
すると、ろくでなし院生のチラシがそこらじゅうに貼られた寮の学生は、理屈で攻めるタイプのチラシを貼られた寮の学生に比べて、飲酒量が50%も下回っていました。
この実験は不健康な行動をやめさせるための新しい戦略しめしたことになるでしょう。
すなわち、
「そんなことをするのは、あなたが絶対に仲間になりたくないような人たちの習慣ですよ」
と言えばいいのです。
この「こんな仲間にはなりたくないなぁ」と考えてみることは、けっこう有効でした!
目の前にいる「こういうのは、ちょっと・・・」というタイプの人を反面教師にするのは、ちょっと失礼ですけど、確かに「仲間には絶対なりたくない!」というパワーがたくさん出ました。
今週もお疲れさまでした。
ゆっくり休んでくださいね。
では、また。