ワタシの父は、ある日突然事故にあい、その朝まで元気だったにもかかわらず帰らない人になりました。
多少こじれた親子関係ではありましたが、もっと話をしたかったり、ただ生きていてほしかったと思い、涙が止まらない別れとなりました。
著者も本著で、終末医療を専門に行い、これまで約1000人の詩死を見届けてきた緩和医療医・大津秀一先生の体験を載せていました。
救急車で運ばれた若い男性は、朝からふつうにデスクワークをしていました。
しかし突然倒れ、呼吸もしていません。
心臓マッサージ、人工呼吸を、汗だく一心不乱に頑張りました。
くも膜下出血でした。
そこに、この男性の家族が駆け付け、若い女性と小さな女の子が来ました。
小学校に上がる前の娘さんが、冗談でやっているのかと笑顔で呼びました。
「パパ、何やっているの?パパ!」
やがて娘さんは理解し、
「パパ!!パパ!!」
と叫び声を上げました。
大津先生は、どうしてもこの命を救いたかった。
でもムリでした。
死亡宣告を終えて、部屋に戻ると、
「医者って何ですか!?
こういう命を救うために、僕らは医者を焼ているんじゃないですか!?」
と後輩が泣きながらいいました。
「今日無事に生きていられるというおは、実はとても幸福なことです。
自らの両親が健在なのだとしたら、それもまた幸福なことです」
大津先生はそうおっしゃいます。
大好きな人が死なずに、今日生きてくれる。
それ以上の幸福ってありますか?
生きているって、大好きな人に合えること。
愛に行って、その人を感じることが出来る。
これ以上の幸福ってありますか?
そして、あなたが大切に思っている人は、同じように、あなたが生きていることで幸福を感じているはずです。
幸せの本質は、そこにいてくれること、「存在」にこそあります。
一億円上げるって言われても、大好きな人に合えない人生なんていらないから。
人は、失ってから始めて幸福に気がつく。
でも、ワタシ多対は、失わなくても、気が付きました。
これだけは失いたくないモノベスト5は?
「これだけは失いたくない」ものってありますよね?
そのベスト5を考えてみてください。
例えば
・家族
・友達
・仕事
・成果
・好きなもの
あなたはどうでしょうか。
必ず5つ、考えてから、先に進みましょう。
はい、あなたはそのすべてを失います。
あなたが死ぬ日に、それらをすべて失います。
著者のひすいこたろうさんは、友人に誘われて岩手の山田町に旅行に行きました。
山田町と言えば、東日本大震災の津波で町ごと流されてしまった場所です。
著者たちを最初に出迎えてくれたのは漁師のおじちゃん。
いきなりごっそり新鮮な牡蠣とムール貝を出してくれました。
「食べんしゃい、食べんしゃい」
と漁師のおじちゃん。
「ここにいる仲間は、みんな家も流されて、仕事もないんだ。ははははは」
被災地の方たちが、家も流されて仕事もないのに、こんなに明るい。
笑いの絶えない山田町の人たちの様子に、著者はそのおじいちゃんにこう切り出しました。
「どうしてそんなに早く立ち直れたんですか?」
その質問で、おじいちゃんの笑顔が一瞬止まったように見えました。
「立ち直っていると思う?」
あああああ!しまった!!そうだよな。
なんて無神経な質問をしてしまったんだろう・・・。
そう思っている著者に、おじいちゃんは続けました。
「悲しんで下を向いたってなにも始まらない。
いまは前を向くしかない。
ウソでも笑える人は前へ進める」
後にわかったことは、そのおじいちゃんは震災でお兄さんを亡くされていました。
一夜にして家を失い、仕事を失い、家族を亡くしながらも、ウソでもいいからと笑い、前に進もうとしている方たちが山田町にはいました。
遊びに行った日の夜は、漁師さんのほか、魚屋さん、スーパーマーケットを経営している方、レストランのシェフの方など若手のみなさんも飲み会に参加してくれました。
スーパーで働くある方はこう言いました。
「絶対泣いちゃダメだ」
そういって、次の日から仕事を再開して町の人たちにお弁当を配って回り、震災後4日目には壊滅したスーパーの駐車場で、青空スーパーを開店しました。
「山田町のみんなを見たら、『がんばれ』っていえなくなると思う。
だってがんばっているから」
ある漁師さんはこういいました。
「食えないからって、この仕事を辞めるつもりはない」
お店を流されて自宅で食品加工業を再開したある社長さんはこういいました。
「海に恨みはない。
逆にこれまでいかに海が私たちに恵みを与えてくれていたのかに気づいた。
こうして働けるようになって、いまは仕事が楽しくて感謝しかない」
食べるものがなくなって山の中に入ってどんぐりを見つけた時、「これで何かあっても食べていけrと思った」と語ってくれた人。
山田町が大好きな子供たちのために、来月イタリアンレストランをひらくんだと語ってくれた人。
よくよく話を聞いたら、その方は、奥さんを震災で亡くされていました・・・。
1階が津波で壊滅。
2階もボロボロ。
ならばと3階で床屋さんを再開しているお店もありました。
「自分のことで悩めるって幸せよ」
「つまらないものを持っているからつまらなかったんだとわかった。
つまらないことをしているからつまらなかったんだとわかった」
「すべてを失って、なにもいらないことがわかった」
「元気だからがんばるんじゃない。がんばるから元気が出るんだ!」
著者は効いた言葉の1つひとつが、胸に突き刺さりました。
私たちは100年後、この地球にいません。
得たものをすべて手放す日が来ます。
寒さの中、家族や家、仕事を失いながら、ウソでもいいからと笑って前へ進む人たちがいます。
そんなすごい力が、人間に、あなたに隠されています。
どうせ死ぬなら、自分の底知れぬ可能性に驚いてから死にたい。
後日、山田町の方々の声を生で聞いてもらおうと、著者の友人が東京で講演会を開きました。
2次会で、たまたま一人のスタッフの誕生日であったため、お酒をプレゼントされていました。
そのボトルがあまりにかわいくて、封を切るのを渋っていたところ、山田町の方に笑いながら、こういわれてしまったそうです。
「封をあけちゃえば?とっておくと、津波で持っていかれちゃうよ」
これが、いまを生きる生き方です。
父のほかにも、大事な人を亡くしたことがあります。
いつでも会えると思っていましたが、やはりある日突然のことでした。
そのあと体調を崩して仕事を休むことになってしまい、それまでの仕事や立場を失うことになりました。
しかし、さまざまなことを失くしてみると、家族の大切さに気付いたり、自分を取り戻すことができました。
失くす前に、気づくことも大切。
そして、失くしても、前を向いて歩き続けること。
限りある命の中で、「いま」を生き続けていきたいですね。