メキシコ湾で小舟を浮かべ、ひとりで魚をとって日をおくっているサンチャゴ。
かれは、決して若くない。
魚が釣れない日が続き、彼を慕っている少年は両親からサンチャゴと海に出ることを禁じられています。
夏の終わりに『老人と海』が沁みました。
キューバの老漁夫サンチャゴは、長い不漁いもめげず、小舟に乗ってたった一人で出漁しています。
1匹も魚が釣れない日が84日も続きながら、かれは漁師としての誇りを失っていません。
少年は、彼を慕っているのですが、両親は不漁の続くかれと一緒にいることを許してくれません。
今日もひとり海に出たかれの、残り僅かな餌に想像を絶する巨大なカジキマグロがかかります。
4日間の死闘が始まります。
そこで描き出されるサンチャゴの姿の描写。
遥か沖合で孤独と恐怖。
もうだめかもしれないという観念したくなる気持ちとの闘い。
やせた四肢で巨大な魚と格闘しながら、精神的にも追い詰められながらも、決して負けない漁夫の誇りあるサンチャゴ。
長い時間をギリギリの体力の中で、たった一人で。
朗読するなら、ぜひ「紅の豚」の主人公ポルコ ロッソのあの声でお願いしたい!!
本文より
『一度魚は大波のようなうねりを見せたかと思うと、やにわに老人をうつむけに引き倒した。
眼の下が切れ、血が頬を伝って流れる。
が、すぐかたまり、頤(あご)までとどかぬうちにかわいてしまった。
やっとのことで老人はへさきのほうにもどり、船べりにもたれて体を息(やす)めた。
袋の位置を直し、綱を肩のべつのところにそっとあてがう。
それから肩を支えにして綱を握りしめたまま、注意ぶかく魚の引き具合をたしかめ、片手を水に浸して船の速度を計った。
~中略~
「おい」老人は魚に向かって大声で、しかしやさしく語りかける、
「おれは死ぬまで、お前につきあってやるぞ」
やつもおれにつきあう気だ、そうにちがいない、と老人は思う。
かれは明け方を待ち焦がれていた。
夜明け前のいま時分が一番寒い。
かれはへさきの板に体を押し付けて暖をとろうとした。
やつがその気なら、おれだってその気になってやるぞ、かれは心のなかでそうつぶやく。
あたりがほんのり白んできた。
綱は水底に向かってまっすぐ伸びている。
船は相変わらずじっくり海面を滑っていた。
太陽が水平線にきらりとその頂をのぞかせる。
最初のひかりが老人の右肩にさっとあたった。
「やつ、北に向かって進んでるな」と老人は言った』
精神的にも追い詰められ、ときに独り言で「あいつがいたらなぁ」と少年がいないことを悔やむサンチャゴ。
しかし、運命は皮肉です。
本著は厚さ1センチにも満たなくて、1時間もあれば読み終えてしまう1冊。
ブックオフで108円で手に入れました。
よかったら書店で手に取ってみてくださいませ。
超かっこいいです。
もう、本当に惚れてしまう。
かっこつけた描写は何一つないのに。
今日も1日お疲れさまでした。
ゆっくり休んで、素敵な夢を。
では、また。