タバコの警告表示はとても大きくて、ダイレクトに害について訴えています。
でも、タバコを吸う人はそれを眺めながら吸ってますよね。
多くの医師はあの表示によって喫煙者のタバコへの欲求を下げる効果が期待できると考えています。
しかし、その警告は逆効果をもたらしていることが研究結果からわかってきています。
タバコの警告表示はなぜ「逆効果」か?
とくに、タバコの警告表示よりもさらにショッキングな映像(病院のベッドで死にかけている肺炎患者の画像など)を見せられたりすると、喫煙者はかえって、猛烈にタバコを吸いたくなるのです。
その理由とは?
画像を観て、恐怖に襲われたからです。
不安な気持ちを落ち着かせるために、タバコを吸うよりいい方法があるでしょうか?
恐怖を感じれば禁煙につながる行動をとるはず、という医師たちの予想に反して、喫煙者はただ恐怖から逃れようとするだけだったのです。
恥をかくと「自己破壊的な行動」に走ってしまうのは?
もうひとつ、必ずと言っていいほど裏目に出る方法は、不健康な生活習慣のある人たちに、恥をかかせることです。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校で行われた実験です。
肥満の女性たちに『ニューヨーク・タイムズ』の記事を読んでもらいました。
「肥満の従業員らに対し、雇用主による差別待遇が始めっている」という内容です。
その記事を読んだ女性たちは(今度こそ減量すると誓っていたにもかかわらず)、その直後の実験で、全く別の職場問題に関する記事を読んだ肥満女性たちに比べて、2倍のカロリー量のジャンクフードを食べてしまいました。
恐怖、不名誉、自己批判、恥・・・そのようなネガティブな感情を人々に抱かせれば、健康状態を改善するための強力な動機付けになるだろうと、多くの医療従事者は考えます。
ところが、科学的な実験を行ってみると、ネガティブなメッセージを受け取った人たちは、医療従事者が変えたいと思っていた、まさにその問題行動に走ってしまうのです。
わたしたちは何年もの間、同じようなことが繰り返されるのを目の当たりにしています。
医師や心理学者は、良かれと思って警告のメッセージを伝えるのですが、患者は打ちのめされ、ゆううつになり、自己破壊的な行動に走ってしまうのです。
「ストレス役に立つ」と思うと現実もそうなる
まっすぐに立って、右腕を肩の高さで横に伸ばします。
右腕を、心理学者アリア・クラムがぐいぐい押してきます。
腕を下げまいと必死に抵抗しますが、数秒後腕は下がってしまいました。
次に「右手であなたの大切な人か大切なものとつながっているつもりでやってみて」と心理学者が言います。
すると、まるでこの心理学者が手加減してもらったのかと疑問に思うくらい、押されても右手が下がりません。
「ものごとについてどう考えるかによって、そのものごとから受ける影響は変化する」のです。
こうした反応は、マインドセットの研究者にとって見慣れた反応です。
マインドセットは長期的な健康や、幸福感や、成功にも影響し、さらに重要なことに、考え方を変えるための簡単な介入実験にたった1度かかわっただけでも、その後何年にもわたって、参加者の健康状態や幸福度が向上し、成功する可能性が高くなることが分かっています。
この分野では、従来の考え方を見つめなおすべき研究結果が相次いで発表されています。
プラセボ(偽薬)に関しても、自己充足的予言(思い込んだことが現実になること)に関しても、思い込みが大きく影響します。
思った通りになる
「考え方しだいでやせられる」「健康だと思うのが肝心」。
心理学者アリア・クラムの初期の研究結果を報道したニュースでは、このような見出しが躍りました。
クラムは、考え方が健康状態と体重に及ぼす影響を研究するため、全米の7つのホテルで客室係の実験参加者を募集しました。
客室係の業務は運動量が多く、1時間に300キロカロリーも消費します。
これは、ウエイトリフティングや、水中エアロビクス、耳側5、6キロ程度のウォーキングに匹敵します。
一方、会議に出席する、パソコンに向かって作業するなどのオフィスワークは1時間100キロカロリーほど。
にも拘わろず、クラムの実験に参加した女性客室係の3分の2の人たちは「定期的な運動をしていない」と回答していました。
残りの3分の1の女性たちは「まったく運動していない」と回答していました。
参加者たちの体つきは、まさに自分たちが思っているとおりになっていました。
つまり、平均的な客室係の血圧、ウエスト・ヒップ比、体重は、まるで座りっぱなしの生活をしている人と同じようだったのです。
クラムは、客室係の業務は立派な運動になることを示すポスターを作成しました。
ベッドメイキングでマットレスを持ち上げたり、床に落ちているタオルを拾ったり、荷物が満載のカートを押したりする位は、体力とスタミナが必要です。
ポスターには行動別カロリー消費も掲載しました。
(例えば、体重65キロの女性が15分間、バスルームの清掃をした場合の消費カロリーは、60キロカロリーです)
クラムは7つのうち4つのホテルで15分間のプレゼンテーションを行い、以上の情報を客室乗務員に伝えました。
そして、例のポスターを英語とスペイン語で表記し、客室乗務員の休憩所に貼りました。
さらにクラムは客室係の運動量は明らかに、公衆衛生局長官による推奨運動量の基準に達しているか、むしろそれを上回るほどであり、活動的な生活による健康効果が期待できるはずだと説明しました。
残りの3つのホテルの客室係は、実験の対照群です。
こちらのグループの客室係には、「健康のために運動がいかに重要か」という説明をしましたが、客室係の業務が立派な運動になることは伝えませんでした。
4週間後、クラムは客室係たちの体の状態をチェックしました。
客室係の仕事はよい運動になると告げられていたグループは、体重と体脂肪が減少しまし、血圧も下がっていました。
さらには客室係の仕事が以前より好きになっていました。
一方対照群の客室係は、そのような健康効果は見られませんでした。
では、たとえば「テレビを見るだけでカロリーが減る」と思い込んだだけで、体重が減るでしょうか?
答えはノーです。
クラムが客室係の女性たちに行ったのは本当のことです。
でも、クラムが言うまで自分たちの仕事が運動になるとは思っていなかったのです。
クラムの仮説はじつに興味深いものでした。
「ふたつの効果が想定される場合(今回のケースでは、運動によって健康効果が表れるか、作業によって身体に負担が生じるのか)、その人がどう思っているかによって、どちらの効果が表れるかが決まる」という考え方です。
結論として、客室係たちが自分たちの仕事を健康的な運動として認識したことによって、身体にはよい変化が現れました。
言い換えれば「思った通りになる」ということです。
同じことが、ストレスでも応用できるのではないか、とクラムは考えました。
どうやら、「考え方」でストレスホルモンの分泌が変わるようです。
今日もお疲れさまでした。
最近「秋」が短くなってきたとか。
貴重な時期を、楽しみたいですね!
もう、夜は虫の声がきれいですし。
栗やサツマイモなどのオヤツで、楽しい季節です。
そんな何かで誰かをちょっと笑顔にできたりしたら、いいですよね。
明日もあなたにとって素敵な1日になりますように!
では、また。