著者がハーバードで学んだ「一番役に立ったこと」は、「経済的成功」でも「他人に勝つ方法」でもありあせんでした。
それは、
「豊かに働くとはどういうことか」
「どんな夢に挑戦すればいいのか」
「本当の成功をつかむには、どうすればいいのか」
著者が学んだハワード先生は教授であると同時に、企業の経営者であり、投資家でもあります。
正真正銘、社会の荒波にもまれて培われた知性による「起業家学」。
まずそこには「起業家精神」があります。
それは、「自分のコントロール下にある経営資源にいっさいとらわれることなく、市場の機会をひたすら追求すること」。
これは、すべての「働く人」に心得たい定義です。
社内の新しいプロジェクトを始めるとき「今あるもの」にとらわれて、自分自身を無意識に縛り付けてしまったりします。
何もかもが「できそうにない」と思っていては、並の仕事しかできません。
それではせいぜい「無難なアイディア」どまり。
人の心を動かし、誰もが求める製品やサービスや事業を生み出すには、「自分の小さな枠組み」を超えていかねばなりません。
多くの人はビジネスにおいて、これと反対のことをします。
自分の能力で何ができるか、手元の資金をどう活用するかということしか考えない人がたくさんいます。
しかし、その発想では、新しい価値を生み出すことができません。
著者が「ライフネット生命」の立ち上げに参加しようと決めた時、手元に「資金」など何一つありませんでした。
お金もなれば、人材も自分を入れて2人だけ。
それでも、「こういうサービスがあったらいいな。そのためにはどうしたらいいだろう?」というビジョンをひたすら追いかけていくことで、会社を軌道に乗せることができました。
あなたの持っている資源にとらわれず、まっさらなキャンパスに絵を描くように発送する。
それがどんなビジネスにおいても基本なのです。
この本では、ハーバード・ビジネススクールに留学しなくても、その核となる仕事哲学とセオリーのエッセンスを1冊で学べるようになっています。
「押し付けられた知識」よりも「自ら考え抜く知性」
本著でハワード先生は、「将来のビジョン」を描く重要性を説いています。
「なりたいあなた」を思い描くこと、と言い換えることもできます。
そして、そのビジョンを常に頭におくことが、仕事ばかりか、充実した人生を送る鍵である、と先生は言っています。
著者自身が大切にしているビジョンは次の3つです。
1 魅力的で尊敬できる人たちと働き、ともに過ごす
2 自分にしかできないことに挑戦する
3 社会に足跡を残す
ハーバード・ビジネススクールというと、競争心や向上心の強い、エイリーと意識の塊のような人たちが集まっているというイメージがあるかもしれません。
しかし、著者がハーバードで叩き込まれた哲学は、
「今、世の中に何が必要か?どんな新しい価値を届けられるか?」
それを徹底的に考えなさい、ということでした。
人生の「水先案内人」を見つけよう
著者の「3つのビジョン」のうち、とくに大切にしているのは、まわりにいる「尊敬できる人たち」です。
あなたの人生のお手本になる人物を、ハワード先生は「ロールモデル」と呼んでいます。
「こうなりたい」という理想の人物のことです。
「ロールモデル」は1人である必要はありません。
著者自身も、「生き方として自分が目指す方向ではないけれど、ビジネスに関しては、こういう人になりたい」と思える「ロールモデル」もいます。
優れた人たちを見つけては、「Aさんはとても教養が合って魅力的だ。Bさんは人望も厚くて信頼できる人。それにCさんは頭の回転が速くて仕事ができる。・・・・彼らはいったいどういうスキルやエネルギーの使い方をしているんだろう?」などと観察しています。
万能である必要はありませんが、「こういうところは、この人のようになりたい」というお手本を何人も持つことが重要なのです。
「自分の軸」を大切にできる人、できない人
ハワード先生は誰にでも人生の流れが大きく変わる「変動期」が訪れることがある、と言っています。
就職、結婚、異動、子どもが生まれた時、大きな仕事を任されたとき、同い年の同僚が自分より先に昇進したとき・・・。
人それぞれ、節目というものは必ずやってきます。
著者にとってはライフネット生命の創業に誘われたときでした。
ハーバードでMBAを修了したとき、著者にはもっと堅実な就職先からのオファーがありました。
それを選ばず、人も具体的なプランもない道に飛び込むなんて、ありえない!という人もいました。
多くの人は、自分で判断し、道を選び取るほんの少しの勇気をもたないようだと著者は言います。
会社が有名かどうか。
他人に評価されそうかどうか。
羽振りのいい業界かどうか。
企業のランキングでは何位か。
みんなが歩いている道から外れていないか。
そういうことに縛られているから、チャンスが来ても踏み出せないのです。
大事な「変動期」を、活かせないまま終わってしまうのです。
ハーバードには、「挑戦する人はカッコイイ」という雰囲気が漂っています。
それに海外では、英語で自己紹介するときに会社名を使いません。
そのうえで、自分が「何をしている人間なのか」を説明できなければいけない。
まず、個人がいて、会社は1つの特性いしか過ぎない。
そんな意識が根底にあるのです。
自分自身で「人生の主導権」を握る!
著者はたびたび、「今の会社を立ち上げるときに、失敗するのが怖くなかったのですか」と尋ねられます。
でも、考えてみましょう。
「失敗」とは、多くの場合「学習の瞬間」なのです。
ある経営者は「成功するまで続ければ、失敗もない」といいました。
ハワード先生もいっています。
世の中のほとんどの「失敗」は、やり直しがきくものだ、と。
そう考えると、本当に怖がるべき「失敗」などないのです。
若いころ、とくに20代は、早く1人前になれるように、失敗など恐れず、がむしゃらに働き、とにかく「自分の引き出し」を増やしましょう。
そして、30代になるろ、1段階上のステップへ。
少し冷静になって、自分の本来の生き方を探し、バランスを取っていくべきです。
「自分がいなくても、会社は回るものだ」ということを、心の隅に置いておくことも必要です。
少し謙虚になり、家族や友人、仕事における人間関係を見つめなおすことも大切でしょう。
人生は複雑なパズル。
しかしまた、チャレンジを楽しむことも、豊かに生き、働くこともできるのです。
あなたの「これから」をあなた自身の手で切り拓き、本当の「成功」をつかみ取りましょう。
今週もお疲れさまでした。
ゆっくり休んでくださいね。
では、また。