昔大好きだった人のことは、10年以上たっても詳しく覚えているもの。
人間は入力された情報の99%を忘れますが、「とても楽しかった思い出」は復習しなくても、非常によく記憶していますね。
記憶と情動は深くかかわっていて、喜怒哀楽など感情が大きく動かされたことは、強烈に記憶する仕組みになっていることで知られています。
今回のキモは「感情操作のしかた」。
こんばんは、ラブです。
感情コントロールで記憶に残す方法
クラインスミスとカプランは、8つの単語と1桁の数字を組み合わせる実験をしました。
単語には、「キス」「嘔吐」などの情動を刺激する単語と、普通の単語が混ぜられています。
1週間後にテストをした結果、情動を刺激する単語の組み合わせは、普通の単語の組み合わせよりも、よく記憶されていたのです。
情動が刺激されると、記憶力が高まるのは、情動刺激と共に私たちの脳の中で分泌される脳内物質、神経伝達物質が、記憶を増強する作用を持っているからです。
例えば、心躍るとき、楽しい時、幸せな時に出る幸福物質ドーパミン。
ものすごくハッピーなときに分泌される脳内麻薬エンドルフィン。
恐怖や不安を感じる時に出るノルアドレナリン、アドレナリン。
これらには、どれにも記憶を強くすることが分かっています。
楽しい出来事、幸せな出来事を強く記憶することで、私たちは楽しく幸せに生きられます。
恐怖や不安な出来事を強く記憶することは、同様な危険を避ける重要な意味があります。
このような情動を喚起する出来事に対する記憶を「情動記憶」といいます。
これは普通の記憶より圧倒的に残りやすく、何度も復習する必要さえありません。
つまり、意識的に感情のコントロールをすることで、情動の記憶増強効果を利用し、覚えなくても勝手に記憶に残すことができるのです。
ほどよい緊張記憶術
学生時代、模擬試験に出た問題が本番で出題されたとき、「これ、模擬でやった!」とうれしくなったことはありませんか?
普段家で解くよりも、「模擬試験で出た問題」が圧倒的に記憶に残りやすいのは、「程よい緊張感」にあります。
ほどよい緊張状態は、脳内にノルアドレナリンという物質が分泌されています。
ノルアドレナリンは偏桃体や海馬で他の神経伝達物質やホルモンなどと相互に作用し、長期記憶の形成を促します。
長期記憶形成において、非常に重要な脳内物質なのです。
「緊張したらどうしよう~!」と緊張を「敵」とみなし、緊張を怖がってしまう人も多いのでしょうが、「ほどよい緊張」は、私たちの「心強い味方」だったのです。
さらにノルアドレナリンは、「作業記憶」とも密接に関係しています。
いわゆる「テンパる」という状態は、ノルアドレナリンの過剰分泌によって、作業記憶が上手く働かなくなった状態です。
緊張感が無いよりは、適度な緊張感がある方が脳のパフォーマンスは高まります。
しかし、極度の緊張状態では、脳のパフォーマンスは下がってしまいます。
緊張したら、記憶の絶好のチャンス
模擬試験を受けたり、発表者になったりするなど、多少の準備ができなくても、絶好のチャンスです。
結構なプレッシャーがかかりますが、資料や文献の読み込みや準備期間に勉強したことは、ありありと記憶されます。
そして、そのために準備したことは、数年後になっても記憶されています。
不安緊張は伴います。
「できれば避けたい」と思うものです。
しかし、このような「人が嫌がるようなイベント」にこそ、ほどよい緊張を与え、あなたの知識と経験を爆発的に広げる絶好のチャンスなのです。
過度の緊張は記憶の敵
味方にすると最強の「緊張」ですが、大きすぎると「記憶」「学習」「想起」への障害を引き起こします。
ノルアドレナリンの大量分泌が、作業記憶の働きを低下させるからです。
それを避けるには、緊張する場面に慣れておくことです。
人前で話すチャンスがあれば、積極的に手を上げておくことも「緊張の場に慣れる」ための機会になります。
緊張を2分でとりのぞく
それでも、発表本番にものすごく緊張することがあります。
そんなときに役立つのは、「深呼吸」です。
これは脳科学的に見ても効果が絶大です。
人間は緊張すると呼吸が速くなり、心臓がどきどきします。
心臓の速度を自分で調整することはできませんが、呼吸の早さはコントロールできます。
20~30秒かけて鼻からゆっくり吸い、20~30秒かけて鼻からゆっくり吐き出します。
これだけでも緊張は和らぎます。
呼吸が速くなり、心臓が速くなるのは、交感神経が優位になっているから。
深呼吸をすることで、副交感神経に切り替えていくのです。
呼吸のリラクゼーション効果は絶大です。
「緊張したら、深呼吸する」ということを普段から習慣にしておくことがベストです。
なぜなら本当に極度に緊張すると、「深呼吸すれば緊張がとれる」ことすら忘れてしまうからです。
火事場の馬鹿力記憶術
夏休みの最後の一日で、手つかずの宿題と自由研究を終わらせたことがあるかもしれません。
人間は追いつめられるとノルアドレナリンという脳内物質が出ます。
ノルアドレナリンが分泌されると、注意力、集中力が高められ判断が素早くできるようになり、それと同時に記憶力、学習能力、作業遂行能力など、ほとんどの脳機能が高まります。
同時にアドレナリンという物質も出て、筋力、瞬発力、心肺能力を高めます。
火事のときにおばあさんがタンスを背負って逃げた、という話はまんざら嘘ではないのです。
火事場の馬鹿力をビジネスマンが仕事に応用するには、「納期を守る」ということを自分に徹底的に課すことです。
「少し待ってもらえばいいや」と思っていると、ノルアドレナリンが分泌されないからです。
締め切りも守らず、効率も上がらず、だらだら仕事をしてしまうことが無いように、自分に対して「納期を守る」ことを約束する。
それによって夏休み最後の日の子どもと同じように、ものすごいパフォーマンスが発揮できます。
制限時間記憶術
火事場の馬鹿力記憶術とは言っても、「締め切りのある仕事」はしょっちゅうあるわけではありません。
そこで、自分で締め切り時間を作ることで、軽い緊張状態を作ることができます。
「この書類作成を1時間で終わらせる!」とあえて決めることで、ノルアドレナリンが分泌して、集中力がアップし、いつも以上の仕事効率が発揮できます。
また、ゲーム感覚を時間制限によって持つことができるので楽しくなり、ドーパミンも分泌されます。
ドーパミンによる集中力アップ、記憶力増強も得られます。
残業の時にも、「これが終わったら帰ろう」よりも「これを9時までに終わらせて、9時に変える」と決めることで、早々に帰ることができます。
著者はパソコンのタイマーアプリを使っています。
また、TODOリストを書くときにも、項目ごとに30分、60分と制限時間を書き込むか、「13時まで」と終了時間を書くと集中できます。
火事場の馬鹿力は酷使するとうつ病になる?
ノルアドレナリンは火事場の馬鹿力の元です。
これだけの効果があるので頼りたくなりますが、注意が必要です。
毎日、毎週、締め切りに追われまくっている状態にあると、「うつ病」になりかねません。
「うつ病」は脳科学的には、ノルアドレナリンが足りなくなった状態です。
ノルアドレナリンは、ストレスがかかったときに分泌される「緊急応援物質」なので、毎日酷使すると枯渇します。
これが「うつ病」の状態なのです。
著者も原稿締め切りの1週間前は缶詰め状態になりますが、書き終わったら1~2週間は休養をとります。
緩急をつけて仕事をすることで、仕事は最もはかどるのです。
よく勧められている、「ほどよい緊張を作り出す」こと。
それは脳内の物質を味方につけたやりかただったんですね。
リラックスさせることも大事にしながら、緊張を味方につけていきたいと思いました。
あなたの明日からの1週間が楽しい毎日になりますように!
では、また。