ファッションのことになると、意外にも著者は子供のころから反逆児でした。
小学校3年生のとき、歌手のマドンナに見せようとキラキラ蛍光色の色を着て学校に行き、母親は学校に呼び出されます。
6年生の時には、シマウマ柄のレギンスが「教室では目立ちすぎる」と先生に叱られます。
高校ではシャネル風スーツやハイヒールのことで、呼び出されました。
大学時代は厚底ブーツやビンテージなワンピースなどで出席していました。
しかし、ボストンから北カリフォルニアに移り住んだとき、そのファッションはこの土地にそぐわないと気づきました。
カリフォルニアの女性たちは「大胆な色使い」「遊び心いっぱいのプリント柄」「デザイナーズブランド」ではなく、自然な色柄や素材の服、まるでハイキングにでかけるような恰好でした。
「カジュアル」という基準が、おしゃれのあらゆる面を支配し、女性はノーメイクで、ほとんどアクセサリーをつけず、髪形もミニマルで保守的。
著者はこの場所に適応するために、”トーンダウン”させるようになりました。
講師の服装がきちんとしていれば、学生は熱心に学ぶ!
そうしてスタンフォード大学で教え始めて2~3年たったころ、「講師の服装が学生に及ぼす影響」をテーマにした研究に触れる機会がありました。
驚いたことにその研究で、講師の服装がきちんとしていればいるほど、学生たちは熱心に学ぶということがわかりました!
著者は愕然としました。
ほかの研究でも、きちんとした格好で授業をする講師は、「有能で熱心だ」と学生に評価され、学習にも良い影響を与えることがわかりました。
この研究で、目が覚めました。
スタンフォード大学の講師が、ラフな服装で教壇に立つのはとても当たり前のことです。
スーツを着ている人はほとんどいません。
ジーンズにスニーカー姿の講師も珍しくないのです。
著者のティーチングメンター(講義にあたり助言・指導してくれる人)で、もっとお尊敬する教員は、学生に最も人気を博していました。
その先生はこの学部でも例外的な存在でした。
彼は、講義の時、いつもスーツジャケットを着ていました。
彼の服装も、講義の人気の一因だったのでしょうか?
この研究に出会ったった後、著者は方向変換します。
着るものが学生の学習に良い影響を与えるなら、ジャケットとヒールを身に着けようと思ったのです。
同僚より着飾っているように感じても、気にしない。
さらに、お化粧することも自分に許しました。
全くお化粧をしない人に比べて、少しお化粧をしている人の方が、「より知的で、仕事にも熱心だ」と評価されることが、研究でもわかっています。
そしてまた著者自身、少しお化粧した方が、教壇に立った時に表情が豊かに見えるのです。
きちんとした服装をすることは、「学生のために」と試みに始めたことでしたが、結果的には自分への”ギフト”になりました。
素敵な服を着ると、前よりも自信がわいてきました。
「自分がしていることには、重要な意味がる」という感覚が得られました。
1つひとつの講義が、何か特別なイベントのように感じられました。
服装1つで、仕事の成果も変わる
服装は、仕事の成果を変えることもできます。
米ノースウエスタン大学の心理学者たちはこの効果を「装いの認知力」と名付けました。
服装が「自分の役割を果たすための能力」を最大限に引き出す手助けとなることを発見したのです。
例えば、注意力が必要とされる仕事をするときは、白衣(医師や科学者の象徴)を身に着けた方が、いい仕事をします。
「自分はこうなりたい」と思う特徴と、服やアクセサリーを結び付けると、実際にその特徴を表現したり、仕事の質を高めるのに一役買ってくれます。
著者の場合、きちんとした服と楽しい服を組み合わせてくることで「心理学講師という自分」を表現しやすくなりました。
教育について真剣に考えていると同時に、学びのプロセス(方法)を楽しいものにしたい、と考える自分です。
講義を準備するとき、著者は少なくとも1度は、リスクを取るよう心がけています。
例えば、学生を教壇に挙げて、研究を実証することもあります。
時には、心理学的法則を説明するために、人気のテレビ番組のビデオを見せ、学生を驚かせたり、喜ばせたりすることもあります。
講義にあたり洋服を選ぶときや、公の場で講演するとき、この”同じ法則”に従うようにしています。
少なくとも1つのリスクを冒して、自分を楽しませることができないだろうか、と考えるのです。
こうした心構えでいられるよう、ネックレスやブレスレットをいくつも持っています。
「明るいピンクのツイードジャケット」のようなクラッシックなスタイルでありながらも、意外な色合いを持つものを、好んで使うこともあります。
始めて東京を訪れた時、原宿と表参道に買い物に行き、とても珍しいデザインの服を買って帰りました。
スタンフォード大学に戻り、最初の講演でそれを着た時、学生の間では著者が着たそのセーターの話題で持ちきりでした!
それは”プレッピーな(名門学校に通学している良家の子女が着るような)”ネイビーのセーターだったのですが、びっくりするような英語が書かれていたのです。
「見た目の心理学」の研究結果
「見た目の心理学」の研究の観点からすると、”スタイル戦略”は、とても有効です。
しかしながら、「自分らしくない服装」が逆効果になることもあります。
たとえば、ある研究では、「実際は手が届かないステータスシンボルを着ること」の影響に着目しています。
その行為は自信を高めず、かえって「自分には不似合いだ」という感情を絶え間なく生み出すことがわかっています。
あなたが着ているもののせいで「自分が偽物」のように感じるならば、仕事の場でも「詐欺師」になったように感じたり。
「他の人に好印象を持ってもらうため」
「目立ちすぎないため」
だけで服装を選ぶのは間違っています。
これは先に述べたように著者も、スタンフォードに来てすぐに、無理にナチュラルな格好に迎合したときに犯した過ちです。
自分のスタイルを隠すことで、自分がここの一員でないような気持になっていました。
成功するために服装を考えるなら、他人だけでなく”自分の心に焼き付くように”装いましょう。
逆説的に言えば、自分い自信が持てる服装、自分がしっくり感じる服装を身にまとっていれば、他の人にも好印象を与えられます。
ですから、重要なイベントで服装を選ぶ際には、「自信」と「自分らしさ」を最優先に考えることです。
その服装を着ていて、気分がいいですか?
社会的に、そして物理的に、服装だけが目立っているということはありませんか?
あなたの感情と熱意にを表すために、必要な動作をとることができますか?
あなたの着ているものは、あなたの個性を適切に表現していますか?
著者は、若いころ大好きだったピンク色の髪は仕事に合わなくなりましたが、明るく楽し気なプリント柄やアクセサリーで個性を表現し続けています。
あなたのことをサポートしている人を思い出せるアクセサリーや服を身に着けていますか?
著者は、大好きなネックレスがあります。
妹がくれたもので「思いやり(compassion)」のシンボルが刻まれています。
そのネックレスをつけていると、家族とつながっている実感を持てると同時に、自分の価値ともつながっていると、感じることができます。
著者は、このレッスンがファッションを楽しむきっかけになってくれたらうれしい、と書いています。
わたしたちは「目立たないためだけに装う」ことが多すぎます。
あなたが自分らしい服装をすれば、「自分がすべきことに関心を払い、それをやり遂げる自信を持っている」と、周囲に示すことになるのです。
成功する服装・スタイルのルール まとめ
ルール①
服装は「仕事の質を変える」と知ること
具体的な行動
→「服装は自分の気持ちだけでなく、仕事の成果も変えられる」と知る
→「自分はこうなりたい」と思う特徴と、服装を結び付ける
→「仕事に対するコミットメント」「専門性」を象徴する服を身に着ける
ルール②
成功する服選びは、「自分らしさ」を最優先すること
具体的な行動
→選んだ服を着ていて、「気分がいいか」チェックする
→選んだ服が、自分の個性を表現しているか、チェックする
ルール③
服装を選ぶとき、「1つだけ」チャレンジしてみること
具体的な行動
→「きちんとした服」と、「(自分が)楽しい服」を組み合わせる
→「対照的な装い」を取り入れる
今週は、疲れることも多いかもしれません。
あなた自身をよくリラックスさせてあげてくださいね。
では、また。