米スタンフォード大学のビジネススクールで2013年、「思いやり/共感型リーダーシップ」というコースがスタートしました。
初日の授業で著者は2枚の写真を見せ、「どちらがリーダーに見える?」と尋ねました。
1枚目は、偉そうな顔をした中年男性。
口元は固く閉じられ、片方の口が少しひきつるように、ニタニタ笑っていて、目は相手を見下す”上から目線”。
2名目は、少し若い女性で、相手をしっかり見据え、穏やかな笑顔、頭を少しかしげていて、優しく話を聞いてくれそうです。
学生たちからは、苦笑いが起こりました。
学生からすれば「最低!」に見える男性の方が、よりリーダーらしく見えて戸惑ったのです。
答えは、「両方ともリーダー」です。
「見下す人」「思いやりがある人」リーダーシップには二面性がある
スタンフォードが定義した「思いやり」
もちろん思いやり/共感型リーダーシップは、「優しい笑顔があればいい」という単純なものでなく、思いやりを構成する要素は以下の3点と考えます。
①他者の欲求、要望、苦難に対する配慮。
②他者との相互依存の気持ちを持ち、相手を思いやり、強い関係を築くこと。
③他者の必要を満たし、苦しみを軽減させ、幸福のために支援をすること。
温かい家庭のような、悲しみに気づき、心配し、苦難に心動かされ、相手を励ます態度。
「自分の属している組織や地域が成長するのを見たい」という気持ちを根っこに持つこと。
そのためには、個人的な成功を一番にするのではなく、組織全体のゴールを目指すことが求められるのです。
自分が成し遂げたいことのために彼らのニーズを利用するのではなく、彼らの満足感や幸福感を心から気に欠けることが大事です。
最近の研究によると、思いやり/共感型リーダーシップは、強く、モチベーションの高い集団を作り、さらにリーダーの「燃え尽き症候群」を防げることも明らかになっています。
リーダーの立場にいなくても「必要な資質」
この資質は、リーダーでなくとも、どんな立場にいようと必要です。
不満だらけで苦情を訴える顧客への対応をするとき、思いやりをもって対処してみましょう。
嫌な客は苦痛を伴います。
個人的に責められていると感じ、自己防衛に走りたくなります。
しかし視点を変え、「不機嫌な客に攻撃される自分のストレス」に注目するのではなく、「誰かの心配事を解決してあげられる喜び」に関心を向けることができる、そのチャンスを得られていると考えてください。
「顧客の心配事を、簡潔明快に解決できる」という点では、思いやりのあるなしでも結果は同じかもしれません。
しかし、この思いやりは仕事への認識と、周囲からのあなたの評価を変えます。
おっくうな仕事は、著者にもあります。
そんなとき、「この仕事が『思いやりのある教師、助言者になる』という自分の目標を達成するために自分を鍛え、導いてくれる」と思うように著者はしています。
学生の成績をつけたり、出張をしたりするのは苦痛でしたが、心から楽しめるようになったそうです。
自分にとって「一番価値のあるもの」は何か
思いやり/共感型リーダーシップを実践するもう1つの方法は、自分にとって一番価値があるものは何かを常に考えることです。
ある研究によると「自分にとって一番大切な価値を考えることが、思いやりのある行動につながる」ことが明らかになっています。
それはあなたが「他者、あるいは自分よりも大きな何かとつながっている」と実感させてくれるからです。
価値観について考えることは、新しい情報を受け入れるときや、周囲の反応に広い気持ちで対処するのに、一役買ってくれます。
著者は毎朝、「今日は、どんな価値観を表現して見せようか」と考えることからスタートします。
勇気を示すこと、周囲の人たちを大事にすること、そしてもちろん思いやりを持つことです。
朝起きると、自分が大切にしている価値観を思い出し、それをその日のイベント仕事にどう生かせるかを考えます。
「自分が大切にする価値観」は、難しい選択や苦難への直面の際、道しるべになります。
周囲の人たちをどう巻き込むかを考えることも大切です。
「自分以外の誰の意見を取り入れるべきか」
「ほかに考慮すべき関係者はいるか」
「どうしたら要望・意見をもっと知ることができるか」
「ほかに知恵を貸してくれる人はいないか」
「誰かと協力すべきところを、自分一人でやろうとしていないか」
と自分に問うのです。
最後に、自分自身に心を配ることも、思いやり/共感型リーダーシップに大切です。
企業の重役や上級管理職の人間に聞くと、「自分を思いやるのが一番、難しい」と口をそろえて言います。
「他人を思いやる方が、まだ易しい」と考える人が多いのです。
しかし、自分に対して思いやりの気持ちを持つことは、力強さの源泉であり、サービス精神を発揮するための源です。
最も素晴らしいリーダーは、自分の幸福を大事にする人だと断言できます。
健康や幸福を犠牲にするリーダーは、メンバーに同様のことをすべきと言うメッセージを発信しているようなものだからです。
最高の仕事をするために、毎日1つでいいから「自分にとって最高」と思うことを続けてください。
『スタンフォードの心理学講義 人生がうまくいくシンプルなルール』についての紹介は、これで終了します。
具体例が本著にはもっとたくさん載っていますので、もし気に入っていただけたら、書店で手に取ってください。
週も半分まで来ましたね。
ゆっくり休んでよい夢を。
では、また。