帰宅したら習慣でテレビをつけたり、スマホを見たりする。
「すぐやるべきことがあったのに、気づいたら時間が無くなった!」というのは、私たちの「すぐやる」を邪魔する大きな要因です。
脳は、目から入った情報に、もっとも影響を受けています。
たとえば初対面のひとと会ったときに、私たちは無意識のうちに「相手がどのような人か」判断します。
「メラビアンの法則」によると、相手を判断するために与える影響は、視覚(見た目)で55%、聴覚(声の調子)で38%、言葉(話した内容)は7%程度と言われます。
相手がどんなに立派なことを言っていても、見た目が伴っていなければ、私たちは無意識に見た目の方を重視します。
相手がどんなに立派なことを言っていても、無意識に見た目の方を重視し、脳に見せてしまったものは、覆せない、
「一度脳に見せてしまったら、もう逆らえない」のです。
パソコンやスマホを前にして、「少しだけ見て、それからやろう」と思っても、すでにあなたは「問題の中」にあります。
問題が起こってから解決しようとしているので、切り上げるためには”意思の力”が必要です。
この「見たら逆らえない」のは、依存症も似ています。
アルコール依存症を抜けられない人は、飲んでしまった理由を「少しだけのつもりだった」とよく言います。
でも、一度飲んだらやめられないのです。
視覚がもたらす作用も、根本的には同じです。
「一度見たら、やめられない」
視覚は、脳に強い影響を与えますから、アルコール依存症同様の現象が、誰の脳内でも起こり得るのです。
ガマンなしに、努力なしに「すぐやる」には?
帰ってからすぐテレビをつけたり、スマホを取り出してしまうとき、私たちの脳内には、「やるか、やらないか」のせめぎあいが起きているといえます。
いちいち目に映ったものに対してせめぎあいをしていたら、脳はとても疲れてしまいます。
そのため、「無意識のスマホタイム・テレビタイム」を始めないためには、「スマホ・リモコンを見ない」ことが必要です。
病院や工場で重宝されている「あるルール」
「余計なものは見ない」。
これが、脳を迷わせないルールです。
そのためのコツが、仕事場や病院、工場でも徹底されていることである「使ったものは、もとの場所に戻すこと」。
いつもと違う場所にあるだけで、脳は余計なエネルギーを使い、ミスを誘発します。
試しに、スマホやリモコンを置く場所を1か所に決めてみましょう。
すると、スマホやリモコンをとりにいくときに、「自分はスマホ(またはテレビ)を見ようとしている」と自覚が芽生えます。
あなたの脳内にモデルフリーシステムが自動的に体を動かしていたところへ、”スキ”ができました。
あなたの中にこの”スキ”ができると、あなた脳は、望ましくない行動を踏みとどまることができます。
「好きだからやめられない」は、脳が仕掛けた甘いワナ
スマホをいつも同じところに置くだけ。
リモコンをいつも同じ場所に置くだけ。
そんな簡単なことですが、ここで邪魔するのが、実は「好きだ」という感情です。
ワタシも毎日スマホで漫画をみる癖があるのですが、家族に「その時間はもったいない」と言われております。
しかし「だって、好きなんだから!唯一の娯楽なのよ!」という言い訳をしてしまうんです。
でも、このセリフが「すぐにやらない自分」を作っていると著者は指摘しています。
痩せたいと言いつつ、「夜中にお菓子を食べるのが好きなので」。
朝時間に余裕を持ちたいと言いつつ、「二度寝が好きなので」。
これには、脳の無意識の反応がかかわっているのです。
よくよく振り返ってみると、本当は別に好きでも何でもないことです。
それなのに、「好きなつもり」でやってしまったから、後悔が起こるのです。
私たちは何かの感情を心に抱くとき、何もないところから自然発生的に生まれているのではなく、「情動(=体の反応)」がもとになっています。
呼吸が浅くなる。
心臓がどきどきする。
鳥肌が立つ。
冷や汗が出る。
このような情動によって、脳は「今の身体の状態」を判断し、そこに感情を与えるのです。
たとえば、あることが起こって呼吸が浅くなったとします。
すると、脳はこの浅くなった呼吸に対して、
「私は今、焦っている」
と判断して「焦り」という感情を持ちます。
私たちが感情を抱くときは、どんな感情であってもこの「情動」がきっかけになります。
「情動」がないときに、「焦った」「気持ちいい」「悲しい」などのセリフを言ったとしたら、それは本当に脳に感情が起こっていないのに発した「でまかせ」です。
二度寝すれば、自然な身体の反応として、だるくなたり頭痛がするはずです。
それなのに「二度寝が好き」と言っているなら、本当は感情が伴っていないのです。
これはただ、「二度寝をしてしまう現状」を変えるめどが立っていないだけなのです。
その変貌ぶりは、本人でも信じられないほどです。
「テレビが好きで、つい見続けてしまう」・・はずだった?
著者のもとに、テレビをつい見すぎてしまい、睡眠がどうしても足りないという患者さん(Aさん)が来ました。
「テレビが好きで辞めたくない」と言いました。
「帰宅したらテレビをつけて、気づいたら夜中の2時頃になっていて、・・・やばいなと思って眠ります。
でも、翌日昼間、仕事中も眠くなって、会議中でうたたねして怒られたり、ケアレスミスをしてしまって困っています」と言うのです。
そこで著者は、テレビを見る時間は減らそうと思わなくていいから、テレビのリモコンの定位置を決めて、いつもおなじ場所に置くようにアドバイスしました。
著者の指導の下、リモコンをもとの場所に戻していったAさん。
1か月後の受診では
「リモコンの位置は決めましたよ。
でも、変わらずテレビは見ていますよ。
どうしてもテレビを見たくなっちゃうみたいなんですよね」
なんだ、変わってないじゃないか、と思われるかもしれませんが実はこの1か月でAさんは確実に変化しています。
その後の変化で分かります。
さらに1か月後、Aさんは面談に来るなり、嬉しそうにこう言いました。
「昼間の眠気はほとんどなくなりました。
研修があって最後まで眠らずにいられたのでびっくりしています。
テレビ?夜はほとんど見なくなりましたね。
その分、朝早めに起きられるようになったので、その時間にテレビをつけてぼーっとしています」
さらに、
「夜、テレビを見なくなったことで、何か満たされない感じがありますか?」
と訊いてみても
「ありません。もとから見なくてよかったのかも(笑)」。
自分の脳を「すぐやる」に変える意識革命
つまり、Aさんは、ついテレビを見てしまっている状況に対して、「テレビが好きだから仕方ない」という理由付けを脳がしていただけなのです。
この脳が自分の行動を直感的に判断して、その判断をあとから理由付けする仕組みを「直感優先原理」といいます。
最初にAさんが「テレビが好き」と口にしたのは、「テレビを見ていて夜中の2時になる」行動の理由を、あとから付け足しただけです。
「好きだからやめられない」と理論を逆転させたために、Aさんはテレビを見るのをやめられなかったのです。
このAさんは、初診から1か月たった後には、
「どうしても、テレビが見たくなっちゃうみたいなんですよね」
と言っていました。
これは、まるで他人事のようですね。
これは、この方が「問題の当事者」であったのが、自分自身の脳を別物として扱って、この方自身が問題を外側から見ていることがわかります。
この現象を「脱中心化」といいます。
これは「すぐやるモード」に入る重要な1歩です。
脳と自分に距離を置くことで、「好きだからテレビを見るのをやめられない
」という脳の判断を無条件に信じることが無くなります。
あなたが抱え得る問題は、性格や今までの人生の問題ではなく、脳という内臓のしくみによるものです。
あなた自身を変えるのではなく、あなたの体を動かしている脳を変えることが大切です。
具体的な方策
パソコンのモニターをこまめにオフにする。
パソコンを使っていない時、作業していない時も、モニター画面がつきっぱなしになっていませんか?
視界の端に入るだけでも、脳はモニター画面に対して判断しています。
集中力も上がりませんし、疲れてしまいます。
こんな些細なことでも、それだけで頭のすっきり感を体験できます。
カフェでスマホを出さない。
作業や勉強をするためにカフェや図書館に行ったとき、テーブルの上にスマホを出していませんか?
(ワタシは必ずやっちゃってます!)
その状態で作業がはかどらないとしたら、それはスマホがテーブルの上に乗っているからです。
スマホ以外の手帳や本も要注意です。
「できればこれもやっちゃいたい」と、あれこれテーブルにのせると、脳は惑わされます。
使い終わったものは、鞄にしまいましょう。
やるべきことを忘れそうだと心配だったら、メモをしてポケットに入れましょう。
一つ終えたら、ポケットからメモを出して、次にやることを確認しましょう。
TO DOを付箋に書き出すのをやめる
脳について、よくある勘違いに、「脳は同時進行でいくつもの作業がこなせる」という認識があります。
実際には1つしか作業をこなすことはできませんし、できたとしても2つまでだということが明らかになっています。
脳がすぐに目の前の作業に取り掛かるためには、ひとつの作業に集中させてあげることが大事です。
「これも覚えておかなくっちゃ」という欲張りは手放しましょう。
PC画面の周り一杯にやることリストの付箋を貼ってライオンみたいにしないことです。
あなたに子供がいて、勉強に集中させたかったら、今やるべき今日海外の教科書を机に並べて見せ続けたりしないはずです。
あなたの脳も同じです。
脳の気が散るようなことはしないでください。
実は、昨週から風呂に入りながらのスマホ漫画をやめてみました。
(忙しすぎるということもあるのですが)
無くても、何もストレスを感じることはありませんでした。
かえって、睡眠時間が確保されて、頭がすっきりです。
脳が後付けした言い訳であったことがハッキリわかりました。
今日も1日、お疲れさまでした。
ゆっくり休んでくださいね。
では、また。