あなたの脳は、あなたが脳に感じさせたもの、つまり脳に見せたり聞かせたり触らせたりしたものでつくられています。
これから何を見せるか、何を聞かせるか、何を触らせるかであなたの脳は変化していきます。
能力としてはできるのに「すぐやらない」状態になっているとき、脳には必ず余計な情報が入っています。
それで的確な指示が出せず、体との歯車がかみ合わなくなっているのです。
そのときに必要なのは、「今すぐやるぞ!」と気合を入れることでも、モチベーションアップの方法を学ぶことでも、やらない自分を責めることでもありません。
あなたの脳を「すぐできる」ように仕向けてやることなのです。
そこで脳と体の歯車が再びかみ合うような「トリガー」を見つけていきませんか。
あなたの脳に「見せる」「聞かせる」「触らせる」という3つの入り口を使って、脳と体を「すぐやる」ように仕向けていくのです。
うまくトリガーを引いてあげることで、脳は「すぐやる」モードに切り替わり、同じ行動でも、実行に移すまでの労力が驚くほど少なくなります。
「すぐやる」人だけが持つ、この発想
企業研修をしていて著者が感じることですが、課題をすぐ解決して高い成果を上げている人に睡眠不足の人はいません。
睡眠を管理できているということは、「自分の仕事や人生についてマネジメントの発想を持っている」とうことです。
日々睡眠が不足しがちな人は、「問題が起こってから対処する」という発想を持っています。
起きられなかったら目覚まし時計を増やす、眠気があるときに栄養ドリンクを飲む、という具合です。
体調管理もその場しのぎになりがちです。
一方、ハードな勤務でもきっちり睡眠をかっくほしてくる人は、「問題が起こらないようにする」という発想を持っています。
寝つきが悪くならないように、帰りの電車ではねない、夜にはコーヒーや紅茶はひかえる、という感じです。
脳を「すぐやるモード」にするのは、この「問題が起こらないようにする」という発想です。
あなた自身が頑張るのではなく、あなたの脳が動きやすいように仕向けるのです。
脳に「別のものを見せてしまった」ら手遅れ
「テレビを見よう」と思ったわけではないのに、帰宅したら習慣的にテレビをつけてしまい、そのままテレビタイムに突入した。
つい手に取ったスマホでSNSを見たら、けっこうな時間が過ぎてしまった。
仕事中にパソコン画面を見たら気になるニュースがあって、つい読みふけってしまった。
このような経験はありませんか?
「すぐやるべきことがあったのに、気がついたら別のことをしていて時間がなくなってしまった」というのは、私たちの「すぐやる」を邪魔する大きな要因です。
脳は、目から入った情報に、もっとも大きな影響を受けています。
たとえば初対面の人に会ったとき、私たちは無意識のうちに「相手がどんな人か」を判断します。
メラビアンの法則によると、判断に与える影響は、視覚(見た目)が55%、聴覚(声の調子)が38%、言葉(話した内容)は全体の7%と言われています。
相手がどんなに立派なことを言っても、見た目が伴っていなければ、無意識に見た目の方を重視してしまう。
見てしまったもの、つまり脳に見せてしまったものは、なかなか覆せない。
「一度脳に見せてしまったら、もう逆らえない」のです。
ですから、テレビやスマホ、パソコンを前にして、
「少しだけ見て、それからやろう」
という気持ちになったとしたら、あなたはすでに「問題の中」にいることになります。
切り上げるために”意思の力”が必要になるからです。
ガマンなし、努力なしにすぐやる方法
テレビを目の前にして「テレビを見ない!」と宣言するのは、いったん脳を「テレビを見るモード」にしてから、無理にテレビを奪おうとする行為ですから、無理があります。
さらに「やってはいけない」と念じたことをやってしまうことで、脳はさらに「すぐやらない」ようになります。
「やってはいけない」ことをしてしまうと、罪悪感が生まれます。
この罪悪感が「すぐやる」の敵です。
罪悪感は、脳内の「両側内前頭葉」という部位を活性化します。
ここが期待感を作る「ドーパミン」をキャッチする受容体が多く分布している場所であるため、余計に期待感が高まるのです。
「罪悪感を抱くと、何ゆえか期待感が高まる」のは、そのせいです。
脳には、最初から「やってはいけないことは目にしない。見せない」しか手がありません。
リモコンさえも見ない
私たちの脳の中では、何かを見た時にいつも「やるかやらないか」「手を出すか出さないか」のせめぎあいが起こっていると言えます。
買い物中に、気になる商品を手に取っては考えて棚に戻す、ということがありますが、脳内でも起こっているのです。
いちいちせめぎあいが起こって疲れてしまうのです。
脳のエネルギーはそれで消耗し、本当にやるべきことにエネルギーが回せなくなります。
そのため、「無意識のテレビタイム」を始めないためには、リモコンさえも見ないことが重要なのです。
また、「使ったものをもとの場所に戻す」。
これも、大切なコツです。
これは病院や工場でも徹底されていることです。
いつもと違うところにものが置かれているだけで、脳は余計なエネルギーを使い、ミスを誘発しやすくなります。
試しに、テレビのリモコンを置く場所を1か所にまとめてみましょう。
するとリモコンを取りに行ったときに「自分は今からテレビを見ようとしている」という自覚が芽生えます。脳内で「スキ」ができました。
このスキができると、脳は望ましくない行動を踏みとどまることができます。
実は「テレビを見るのが好きだからやめられない」と思っていることが、脳の働きによる思い違いであることがたくさんあります。
あなたの抱える問題は、今までの人生の問題ではなく、脳という内臓の仕組みによるもの。
あなた自身を変えなくても、あなたの身体を動かしている脳を変えることが大切です。
「すぐやる」ための簡単エクササイズ
パソコンのモニターはこまめにオフ!
作業中もパソコンのモニターをつけっぱなしということがあります。
これは脳のエネルギーの無駄遣いになり、集中力もなかなか上がりません。
もともとデスクワークは脳に疲労がたまりやすいので、脳に入る情報を絞ってあげることが大切です。
カフェでスマホを出さない
作業や勉強のために入ったカフェや図書館で、テーブルの上にスマホを出してしまうことがあります。
そこで作業が捗らなかったら、テーブルの上にスマホを置いたことが原因です。
スマホ以外にも、手帳や本なども要注意。
「できればこれもやっちゃいたい」とあれこれテーブルにのせると、その瞬間から脳は惑わされ、結局ひとつも達成できなくなってしまいます。
使い終わったものは鞄へいちいち戻す。
やるべきことを忘れる心配があったら、やることをメモに書き出し、それをポケットにしまう。
一見非効率に見えますが、余分なものが見えなくなるだけで、脳はやるべき作業を確実に成し遂げていくことができるようになります。
TO DOを付箋に書き出すのをやめる
パソコン画面のモニターがライオンのたてがみのように付箋で囲まれているなら、やめるべきです。
脳についての誤解で、「脳は同時進行でいくつもの作業がこなせる」というものがあります。
しかし実際は脳はひとつひとつしか作業ができません。
欲張りは手放しましょう。
あなたの子どもに勉強をさせるとして、勉強に集中させようと思ったら、今やるべき教科書以外の教科書を机に並べて見せ続けたりはしないはず。
自分の脳も同じで、脳の気が散ることはしないでください。
今日も1日お疲れさまでした。
ゆっくり休んで素敵な夢を。
では、また。