本著ではiPS才能でノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥さんとユニクロを1号店から立ち上げ、フリースブームを作ってきた会長の柳井正さんの対談から始まります。
山中 私が医学部を卒業した1987年のころ、ガンに関する画期的な発見が相次いでいて、「2000年にはガンが克服されるだろう」という未来予測が信じられていました。
しかし、30年経ったいまでもガンは克服されていない。
予測は完全にはずれです。
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ですから、よくも悪くも10年後、20年後の変化はわからないだろうと思います。
そうした前提に立つと、大切なのは、未来を決めてかからずに、どんなことが起きても対応できるように、「受け皿」を用意しておくことじゃないでしょうか。
僕たちの世界で言うと、アメリカでは変化にぱっと飛びついて機敏に取り入れる人と、もうちょっと慎重にやろうという人が半々です。
一方、日本では様子見をする人が圧倒的に多い。
結果、後手に回ることが多いので、日本でも飛びつき型の人が増えるといいなと思うんです。
柳井うーん。飛びつくことには僕は反対なんです。
僕はこれまで「変化に飛びつく」ことをしてきたわけではなく、世の中がどうなろうともやっていけるように、人間としての普遍的な能力を高めた方がいいだろうという考え方でやってきました。
変化があれば、それなりに困難なことも起きるでしょう。
でも、そんなに大変なことではないはずです。
そもそも困難に挑むのは楽しいことじゃないですか。
自分の能力を高めて変化を楽しむ、困難を楽しむ。
そういう精神が特に日本人には必要だと思います。
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僕は『1勝9敗』という本を書いたけれど、本当は1勝99敗、いや999敗。
でも、その過程を楽しんで続けてきたから、自分自身を発見できたんです。
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エジソンは「99%の汗と1%のひらめき」と言ったけど、99%の汗なしにひらめきは生まれない。
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人生なんて一瞬です。
明日死ぬかもしれないからです。
昔は僕も、時代の大きな流れとは関係なしに、いろいろなことをじくじく考えていましたが、考えても解決できないことを考えても仕方がないんです。
それより今日1日何ができるのか、さらに1週間、1か月、1年と広げていって、結局自分は人生で何をしたいのかと考える。
山中「人生が一瞬」というのはよくわかる考え方です。
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僕自身、10年後、20年後に生きているかどうかわかりません。
そう思うと、先延ばしにするのはやめて、いまできることはとにかく手を付けようという思いがありますね。
さらに本著では、さまざまな人の「自分を変える方法」が紹介されています。
悩みとストレスを消す練習 茂木健一郎
茂木先生もストレスに振り回されて体調不良も多かった時期があったそうです。
しかし30代を過ぎて脳科学と出会い、ストレスのメカニズムを知ることで、メンタルをだいぶコントロールできるようになったそうです。
どうすればストレスをコントロールできるようになるのでしょうか。
最初のキーワードは「メタ認知」です。
僕たちいんげんは、今日来ている服や髪形がどうなっているか、鏡を見て確認することができますよね。
しかし、自分がいまどういう感情を抱き、どのようなことを考えているのかなどの、内面に関することは鏡に映し出すことができません。
そのような状況を、あたかも第三者の視点から眺めるように把握できる能力を「メタ認知」と呼びます。
僕もこれができるようになるまでだいぶかかりました。
子どものころからアインシュタインに憧れ、彼のような立派な学者になりたいと願ってきた僕は、当時の「ありのままの自分」や「何物でもない自分」を認めることができなかったのです。
つまり「こうあるべき」という理想や義務感が強すぎる間は、自分自身を冷静に見つめる「メタ認知」ができないということです。
例えば、本当はほかにやりたいことがあるのに「せっかく大企業に就職できたのだから」と自分い言い聞かせている人もいるかもしれません。
人によってストレスを感じる環境は多様で、一概に「忙しい=ストレス」とは限らず、なかには「暇すぎる=ストレス」の人もいるのです。
自分がどのような環境では一番くつろげるのか、「メタ認知」を働かせることができるようになると、自分でも気づかなかった意外な一面が見えてくるかもしれませんよ。
自分勝手に相手をジャッジしない
ストレスで最も多いのは、人間関係に関するものではないでしょうか。
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ヒトなどの霊長類には「ミラーニューロン」という神経細胞があります。
他者の行為をあたかも自分の行為であるかのように脳が捉え、共感能力に発展させる能力です。
さきほどの「メタ認知」を鍛えることで、自分自身を理解できると述べましたが、それを発展させることで、他者への理解力はかなり進みます。
大切なのは、相手のいい面を探すということです。
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「しつこい」人は「粘り強い」人でもあり、「ヘラヘラ軽い」人は「周囲への気配り」をしているのかもしれません。
「口うるさい」人は「努力家」の表れなのではないでしょうか。
相手の長所をフォーカスする練習を積んでから、僕は「苦手なタイプ」がほとんどなくなりました。
もう1つ意をつける点、それは他者をジャッジしないということです。
例えば、どう考えても思考が明晰でない上司、やり方が強引すぎる同僚、何度仕事を教えても覚えない部下に対して、「あいつはアホだ」「強引すぎる」「君はバカか」というのは、あなたの勝手な価値判断(ジャッジ)です。
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相手の人格ではなく、行為に関してのみ言及する、これは人間関係を円滑に行う上での大前提です。
ストレス=悪いことと思いがちですが、実はこれを味方につけることで、高いパフォーマンスを引き出すことができることをご存知ですか。
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うまくアドレナリンを活用することで、仕事や勉強に活かすこともできます。
その好例が「タイムプレッシャー」です。
なぜ私は毎朝1時間走り続けるのか
最後にご紹介したいのは、脳の「デフォルト・モード・ネットワーク」機能を味方につけることです。
私たちの脳は、通常、読み書き、計算などのときに活動しています。
ところが、何もせずにボーッとしているときにこそ活動する回路があることが近年わかってきました。
それが「デフォルト・モード・ネットワーク」です。
これはいわば脳のアイドリング機能で、瞑想や禅を行っているときなどに活発化し、脳のメンテナンスを行うと考えられています。
自分でも意識に上がってこない心の整理をしたり、新しい気付きを得たり、ストレス解消したりと言ったことを行ってくれている、非常に大切な機能なのです。
とはいえ禅などはなかなか日常生活に取り入れることが難しいですよね。
そこで皆さんに提案したいのが、散歩やランニングです。
実際僕も毎朝1時間ほどランニングしているほか、仕事と仕事の間の移動はなるべく歩くようにしています。
公園の緑などを眺めながら無心に歩くと、「あの人の言った意味はこういうことだったのか」「自分の心はこういう感情にあったのだな」ということが、思うともなく整理されていくことだから面白いことです。
現代人はちょっとした隙間時間でもつい携帯電話を取り出しがちですが、ぜひ、日常的にこの「デフォルト・モード・ネットワーク」を働かせることを心がけてみてください。
必ずや、ストレスから解放される心地よさを感じるはずです。
自分自身を「幽体離脱して上から見てみる」ということで、メタ認知を鍛えることができるそうです。
すると、たとえば今まで見えていたのが唯一「怒っている自分」だったのが、気づいていなかった「自分の表情やしぐさ」「他の人の表情、しぐさ」に気づけるようになり、冷静になれるそうです。
そういえば、確かに昔「ガンはきっと克服できる」という話を聞いたことがあります。
「何となく、こうなっているだろう」なんて考えたりしているんですけど、ホントは未来って読めないんですね~。
明日からの1週間が、あなたにとってすてきな毎日になりますように。
では、また。
↓ちょっとだけ画像が違います。