人生が100年の時代になりましたね。
しかし、わたしたちは「100歳まで生きたいですか?」と聞かれたら、「滅相もない!」と答えることが多いのではないでしょうか?
ワタシもこの本を読むまでは、「少なくとも70歳より前に死にたい」と思っていました。
人生最後の数十年がどういうものかを目の当たりにしてきているからです。
人工呼吸器に種々雑多な薬。
股関節骨折とおむつ。
化学療法に放射線。
手術に次ぐ手術。
そして忌々しい医療費。
しかし一方で元気に駆け抜けて終わる人もいます。
ワタシの叔母も、亡くなる直前までぴんぴんしていてました。というか、彼女の大好きなタバコをばんばんふかしていました。
ある日「ちょっと調子が悪いから」と病院へ点滴を打ちに行き、点滴を打ちながら「眠いから横になる」と言って待合室の長椅子で横になりました。
そして長椅子に横になったまま、そのまま亡くなりました。
ワタシの最期もああなりたい!と心底思っています。
お年を召した方々が、こうありたいとよくおっしゃるのが、「ピンピンコロリ」。
チューブで繋がれるのでも、痴呆症で苦しむのでもなく、最後まで自力で歩いて楽しく過ごして最期の時まで過ごしたいものです。
著者は、祖母が大好きでした。
明るく闊達なのびのびした発想の人だったそうです。
しかし彼女が人生最後の10年を見るのもつらい姿になって、見送ることになりました。
著者はその経験から、老化というのは果たしてDNAに運命づけられた必要なものなのか、ということを徹底的にエビデンスをとって調べ上げました。
そしてそこから、元気に若々しく人生の最期まで楽しめる人生の作り方を見つけていきました。
結論から言います。
「少食」こそが老化を遅らせる最大のポイントだそうです。
それから、「小さいことにくよくよするな」「運動しろ」。
そして、人によって健康方法は合う・合わないが必ずあるから、「自分に合うもの」を見つけることが重要、ということです。
それから、「老化」が必要なことである、というエビデンスはDNAの解析からも一切出てきませんでした。
DNAの解析では、うまくすれば130歳くらいまで「元気に」生きてよいそうです。
そう!「元気に」生きていれば、医療費もかからず介護もいりませんからね。
人間という種が社会を形成する中で、「老化」は必要?
20世紀前半まで、生物はおいて死ぬのが「種のため」だとする見方が一般的でした。
しかしこれは研究により完全な間違いだそうです。
私たちが命を終えるのは、次の世代に道を譲るためなどではありません。
それから、遺伝子変異が老化の原因でもない証拠が研究者によってわかっています。
これはクローン技術の開発に携わった医師たちが、世界初のクローンヒツジの「ドリー」の研究で分かったことです。
この「ドリー」は平均寿命の半分しか生きられませんでしたが、ヤギ、ヒツジ、マウスでクローンとして生を受けても平均寿命をまっとうすることができています。
つまり、体細胞の核を生殖細胞に移すことでクローンが誕生するのだから、老化は核DNAの変異によるものではないことが断言できるのです。
老化の唯一の原因は存在しない
老化はすべての細胞、すべての生き物に等しくやってくるわけではない、ということが分かりました。
大勢の聡明な研究者がかなり頑張っても老化のただ1つの原因をつきとめられなかったのは、もともとそんなものが存在しない、ということを証明しています。
いささか玉虫色の見解ではありますが、老化するのは次の特徴が組み合わさった結果です。
・DNAの損傷によるゲノムの不安定
・染色体の末端を保護するテロメア(DNAとタンパク質の複合体)が短くなる
・遺伝子スイッチの変化
・タンパク質が正常に働かなくなる
・ミトコンドリアの機能の衰え
・老化細胞が蓄積して炎症を起こす
・幹細胞が使いつくされる
・細胞間情報間伝達をきたして炎症性分子が作られる
これらの問題に対処すれば老化を遅らせ、病気を未然に防ぐことができます。
つまり、私たちは古いDVDディスクのようなものです。
縁が欠けるなどは修復できませんが、「ひっかき傷がついた」くらいなら、DNA情報の回復はできます。正しい研磨剤を使えばいい、それくらいのことなのです。
若返りは可能であることをDNAは示しています。
適度なストレスが長寿遺伝子を働かせる
ストレスが大きすぎると損傷が激しすぎて、修理が追い付かなくなるのは、あなたも自分の体で体験していることと思います。
しかし、運動などの適度なストレスは、長寿遺伝子を働かせる良いストレス因子です。
そのほかに、ときおり絶食する、低タンパク質の食事をする、高温度や低温に体をさらす、などです。
これは「ホルミシス」と呼ばれます。
ホルミシスは生物にプラスの作用を及ぼします。永続的なダメージを引き起こさず誘発できた場合はなおさらです。
運動する人ほどテロメアが長い理由
元気に暮らすには運動がいいというのは、何世紀も前から叫ばれていました。
ただしその理由は(さらに多くの医師が)思っているものとは違う、と研究でわかりました。
400年前、イギリスの医師ウィリアム・ハーウ”ィーが血液の循環を発見。
以来医師たちは運動により血行が良くなって、かすが溜まらないよう押し流してくれるから健康になると考えてきました。
もちろん結構は改善し、肺や心臓が健康になるのも事実。筋肉が増強されるのも間違いありません。
しかし何より重要なのは、細胞レベルです。
運動習慣を持つ数千人の成人を対象に血液細胞のテロメア(特徴的な反復配列を持つDNAとタンパク質からなる複合体)を調べた結果、1つの際立った相関関係が認められました。
頻繁に運動する人ほど、テロメアが長かったのです。
アメリカ疾病対策センターによると、よく運動する(1日最低30分のジョギングを週に5日行うのに相当)人は、座りがちな生活をする人より長く、その長さは10歳近く若い人と同等でした。
テロメアが長くなる理由は、運動により原初のサバイバル回路を始動させることができるからです。
サバイバルモードに入れと細胞に明示させるには、食事の摂取量を減らしたり、アミノ酸を摂りすぎないようにすることでもできますが、運動でも可能です。
サバイバルネットワークにより、エネルギー生産量が上がり、筋肉は酸素を運ぶ毛細血管をさらに増やすようになります。
サバイバル回路によってコントロールされる「ホルミシス」のプログラムがカギを握ります。
運動は、避けて通ってはいけないものです。
特に年齢を重ねるにつれて、努めて体を動かす必要があります。
にもかかわらず、実践しているのは66歳以上の10%にすぎません。
何時間も休みなしに運動する必要はなく、週に6.5キロ~8キロ走るだけでも(毎日15分程度)心臓発作のリスクが45%減り、全死因死亡率が30%下がることが示されています。
この研究では55000人あまりの被験者を15年間フォローしました。
3215人が亡くなりましたが、ジョギング習慣のあった人は予想通り心臓病で死亡する割合が格段に低くなりました。
しかも、肥満や喫煙などの因子を調整しても、ジョギングする人が調査対象期間中に亡くなる割合は低く出ました。
驚くべきは、運動量がどれくらいであっても、ほぼ同じような運動効果が認められたことです。
1日5~10分程度軽くランニングするだけでも走る習慣のない人より数年長く生きたことがわかりました。
走れば、好きなだけ食べてよいのか?
答えは、ノーです。
これはラットを使った実験でもわかっています。
さらに、カロリーが高くなくても満腹感のあるものにすると、健康効果をすべて得ることができないとわかっています。
カロリー制限が功を奏するには、空腹になることが肝心なのです。
空腹んあると、長寿ホルモンを分泌する脳内の遺伝子が作動しやすくなるからです。
これはアルバート・アインシュタイン医科大学の研究チームが指摘しています。
断食と運動を組み合わせたら、間違いなくうまくいくでしょう。
しかし、さらにできることがあります。
寒さに身をさらして長寿遺伝子を働かせる
身体が安定した平衡状態を求めようとすることを「ホメオスタシス」といいます。
あらゆる生物に共通する原則です。
これはとりわけ体温が低い時に表れます。
研究者によると、カロリー制限をすると、体の深部体温をさげることが分かっています。
この深部体温が下げる、ということを2006年スクリプス研究所が遺伝子操作によってマウスの深部体温を0.5度低下させることによって成功しています。
するとメスは寿命が20%長くなり、オスでは12%伸びました。
過去から学べること~過密都市ロンドンでコレラが流行
以前過密した年であったイギリスのロンドンでコレラが発生しました。
「人口の増えすぎを抑えるために、流行が起きる」と考える人も多くありました。
しかし、実は当時はロンドンの衛生状態が悪く、環境要因を整えることこそが重要でした。
ロンドンにおける公衆衛生の改善
現在のロンドンは900万人の人口を擁しており、コレラ発生当時のおよそ3倍の人が住んでいて、今なお増え続けています。
人々が長寿になり、人口が今の2倍になったら!?と思うと怖くなったりしますが、ロンドンは、人口過密の都市だからこそ繁栄したのです。
イギリスで最も多い人口であるこの歳では、数々の博物館や美術館、レストランやクラブが立ち並び、サッカー・プレミアリーグに所属するクラブが5つ、世界で最も格式の高いテニス選手権を開催し、世界トップクラスのクリケットチームを2つ擁しています。
世界を代表する証券取引所、ハイテクセンター、世界最大級の規模と影響力を有する法律事務所がいくつも本拠を構えています。
さらには、高等教育の一大中心地でもあります。
人が多いからと言って、未来を暗く捉える必要はないのです。
著者が実践していること
「食事のカロリーを減らせ」
「小さいことにくよくよするな」
「運動せよ」
以外のことに、医学的アドバイスは無い、と著者は言います。
著者は研究者であって、医者ではないからです。
そして、断りとして次のことを付け足しています
・あなたのすべきことがこれと同じとは限らない
・私がそうしているのが正しいのかどうかすら私にはわからない
・人間を対象にした臨床実験が現在進行中ではあるものの、厳密で長期的な臨床試験がなされた老化の治療法や療法は1つも存在しない。
そして、著者が実践していることは、
・ビタミンD、K2の1日推奨量を摂取
・砂糖、パン、パスタの摂取量をできるだけ抑える。デザートを食べるのは40歳でやめたが、こっそり味見することはある。
・1日のどれか1食を抜くか、少なくともごく少量に抑えるようにする。スケジュールが詰まっているおかげで、たいてい昼食は抜いている。
・毎日できるだけ歩く。
・植物をたくさん摂取し、ほかの哺乳類をできるだけ避ける。運動したときは肉を食べる。
・タバコは吸わない。電子レンジにかけたプラスチックや過度な紫外線や、レントゲンやCTスキャンを避けるようにしている。
・日中と睡眠時は、涼しい場所にいるようにしている。
・BMI(体重を身長の2乗で割ったもの)の数値を保つ。22~25。
・NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)、レスペラトロール、メトホルミンを毎朝摂取する。
など
著者の父は、著者とほぼ同じことを実践しています。
未だに闊達で病院にかからず、シドニー大学で第2のキャリアを積んでいます。
昔からの友人と一緒にアメリカの東海岸を数週間かけてくるまあ出回り、それからオハイオ州のサマー・シアター・フェスティバルに足を延ばしたそうです。
夏の終わりにはオーストラリアに帰りましたが、わずか数週間でワシントンDCでの著者の表彰に立ち会いました。
今はまだシドニーにいて、友人に会うために1000キロのドライブを計画しているそうです。
著者の実践する長寿方法に効果があるかは、まだわかりませんが、とにかく害がないことはわかっています。
著者は今50歳だそうですが、心臓も見たところでは30歳であるそうです。
少食、くよくよしない、運動。
そして、小さなストレスと付き合って生きていくことですね。
寒い場所や断食、運動でサバイバルモードに入ることも大事。
貯金も大切だけれど、それより健康長寿を伸ばした生活をしていくことができることが一番やりたかったことです。
健康ならば、老後の心配をしなくて済みますもんね。
では、すてきな週末を!