人生が本当に変わる「87の時間ワザ」と題した『時間術大全』
著者はGoogle×YouTubeの出身者でテクノロジーと時間オタク。
しかし、超人はいっさい登場しません。
ごくふつうの人が試してみて効果のあったメソッドばかりが紹介されています。
彼らがGoogleなどにいたころ、会社の社員にも参加してもらって行った「集中するためのメソッド」をまとめたものです。
先週ご紹介し、ワタシ自身も試してみて、効果を実感できたことがたくさんありました。
本著で言いたいことは大きく次の2つです。
1.最優先課題(「ハイライト」と本書では呼んでいます)を書き出す
2.スマホやそのほかのアプリをできるだけ消す。返事に時間をさかない。
では、実際どうやったらうまくいくのかについて、細かいところをもう少し書かせていただきます。
あなたの人生をコンテンツに食われてはいけない
現代の私たちはいわゆる「多忙中毒」であり、「無限の泉」と称されるスマホやタブレットからあふれ出る楽しみに時間を浪費しています。
著者はある日、リビングで遊ぶ子どものそばにいるときに、「パパ、どうしてスマホを見ているの?」と尋ねられました。
その日は子どもたちと過ごす時間を楽しみにしていて、やっとその時間がきたのに、著者はうわのそらだったのです。
そのとき著者は気づきました。
自分がどんな大事な瞬間さえも気が散っているということを。
私たちが全人生の中で大事にしている瞬間。
いつも私たちは気が散っているのです。
来る日も来る日もやってくる、予定表に、受信したメールに、際限なく更新されるネット上のコンテンツ。
私たちの人生は、そうした目の前にあるものにいつも食いつぶされているのです。
生産性を高めても、忙しいのはなぜか?
しかし実は、そのころ著者は生産性と効率性の達人を自負していたのでした。
勤務時間をそこそこに抑え、毎晩夕食に間に合う時間に間に合う時間に帰宅していました。
まさに、理想的なワークライフバランス!
ところが、8歳の息子にうわのそらだと見抜かれていたのはなぜでしょうか?
朝200通あったメールを深夜までに0にしたからといって、充実した1日だったと本当に言えるでしょうか?
子どもと向き合う時間を正面から楽しんでいないなんて!
彼は、「いつかやりたい」と思っていた本を書く仕事も後回しにして、数年たっていました。
誰かの更新情報、誰かのランチの画像の海で立ち泳ぎしているので精いっぱいだったのです。
本当にやりたいことができない理由を分析してみよう
ワタシも先週自分をふりかえったとき、まったく同じでした。
「忙しい」「今日もいっぱい働いた!」とぐったりして帰宅。
「家に帰ってたら、充実したのんびりする時間をとるぞ~」と決めていたのに、やったことは?
さらに忙しく映画やドラマ、漫画を検索し、ラインの返事をして、誰かの食事の写真にいいねを押して、自分もアップして・・・・。
家族との会話をしながらもスマホをいじっていることもたびたび。
成長した子どもたちと過ごせる時間は、あとわずかだというのに。
日課にしていた夜日記を書くことも、夜すこしだけ本を読むことも、スマホのコンテンツを追い回す中ですっかり忘れ去られていました。
日記を書かないからモヤモヤは解消されず、せっかく買った本が”つん読”になることもしばしばでした。
しかも、ネットフリックスのドラマでドキドキしてリラックスできない状態からベッドにはいるものだから、なかなか眠れず翌日も眠気でいっぱい。
「昨日遅くまで働いたからかなぁ」と仕事を睡眠不足の言い訳にする朝。
眠気をとるためにカフェインをとり、胃がいたくなる。
夕方はエネルギーが切れたからとお菓子をつまみ、「忙しいから、いつまでも痩せられない」と嘆いていました。
そこで、スマホの充電器を寝室からカバンのおいてある部屋へ移しました。
これで、スマホを忘れて出勤することもなければ、「眠気がこないから何か見ようかな」という誘惑もなくなりました。
これだけで、今週は1時間睡眠時間が増えました!自分史上では結構画期的なんです!
「何か連絡が入ったら大変だから、スマホは枕もとに」というデフォルトをちょっと変えただけで、大きな変化です。
(でも、夜バイトしている子どもから連絡がありそうな日だけは、寝室にスマホを持ち込みました)
ニュースを見るのは週に1度
当然、最新情報を手に入れることに義務感を持って生きてきました。
しかし、今ではニュースは週1度と決めているそうです。
それでも、実際は困らないのだそうです。
彼らがそうするようになったのは、理由があります。
より高い集中力を日中に発揮するためには、スマホの”朝の巡回”を徹底的に減らすことが有効であることを、見つけたからです。
よりによってGoogleの社内で「より集中力を上げる方法」として社員全体で試行錯誤してきた中での実践による結果でした。
目が覚めてから、多忙中毒と無限の泉から離れている時間が長いほど、あなたの集中力は高まった状態でいることができます。
それは睡眠時間が5時間だろうと10時間だろうと、ほぼ同じです。
試しにメールやツイッター、フェイスブック、ニュースを確認する”朝の巡回”をする時間を1時間遅らせてみてください。
最新情報を更新したくなる気持ちはわかりますが、一晩たてば必ず世界はどこかしら変わっています。
でも、画面を立ち上げた瞬間、今この瞬間「ネット上の全コンテンツ」と「あなたが注意を向けたいものへの集中力」をめぐる争うが勃発するのです。
朝の巡回を9時、10時、11時と後回しにしてみましょう。
安らかで穏やかな気持ちを長く保てるようになります。
さらに、睡眠時間を調整して朝型人間になりました。
ドアを閉める
その日1日で集中したいものに取り組むとき、ドアを閉めることはけっこう重要。
実はワタシも今日「ブログをひとつ書こう」と思っていながらも、リビングとつながるドア(息子が隣でのんびりテレビを観ている)を開けていました。
それを本書に従って閉めてみたら、とたんに集中できました。
ドアはあなた自身に対して、それからほかの人に対しても決意表明にもなります。
いまは集中できる時間がきたことをあなたに伝えることができます。
1日7分の運動(無理しない程度に!)
運動は20分ほどでいい
運動の最も重要な効果である、認知機能と健康、気分の向上は、たった20分の運動で得られることが研究でわかっています。
毎日やろう
エネルギーと気分の向上効果は約1日持続します。
毎日いい気分でいたければ、毎日運動しましょう。
おまけに、毎日の習慣はときどきの習慣より続けやすいのです。
少しでもできたら自分をほめる
完璧ではなくていいのです。
週7日のうち4日できれば、3日よりも良いのです。
がっつりやるより「小さく続ける」
運動、というと”こうあるべき”というのが頭に浮かんでしまいます。
シューズメーカーのCMや、雑誌にあるバキバキの腹筋が脳にビジュアルで思い浮かべられるように企業が叩き込んできますが、そんなお金のかかることを考えなくてもいいのです。
たとえば著者のジョンは、週3回次のステップをしています。
①腕立てをやれるだけやって、1分休む
②スクワットをやれるだけやって、1分休む
③リフト(家にあるいすなどを持ち上げる)をやれるだけやって、1分休む
アメリカスポーツ学会が2013年に「ヘルス・アンド・フィットネス・ジャーナル」に発表した論文では、「7分間ワークアウト」というものがあります。
これは12種類のそれぞれ30秒というごく短いワークアウトを間にさらに10秒の休憩まではさみ、7分で終わるというものです。
内容は、
①ジャンピング
②空気椅子
③腕立て伏せ
④腹筋
⑥スクワット
⑦二の腕筋トレ
⑧プランク
⑨ももあげ
⑩フォーワードランジ
⑪ローテーション腕立て
⑫サイドプランク
シュガークラッシュが自分に起こっているか意識する
糖分の摂りすぎはシュガー肺(糖分による興奮状態)を招き、時間がたつとシュガークラッシュ(血糖値の急下降)を招きます。
しかし、デザートをやめるのは、実際難しい!
それなら、デフォルトを変えましょう。
ダークチョコレート(乳製品を含まない、カカオ分が高いチョコレート)を常備。これに限りデザートはオッケーにするのです。
ダークチョコレートの健康効果は、多くの研究で分かっています。
著者いわく「やばいほど、すばらしい」ダークチョコレート。
今週からワタシも本格的に試そうと買ってみました。
著者のジェイクは大の甘党。彼にもこんなエピソードがありました。
妻のホリーとシアトルからポーランドまで車で旅したときのこと。
途中立ち寄ったガソリンスタンドで、コーラのジャンボボトルとラムネ1袋、ロリポップ1本を買い、飲み食いしながら運転しました。
すっかりシュガーハイになった著者は、スーパーマリオブラザースのモノマネを効果音入りで5分間も実演するはしゃぎっぷりでした。
そしてやってきたのが、壊滅的なシュガークラッシュでした。
その日の残りのドライブは助手席に沈み込み、あまたがズキズキするとぼやき続けて、ホリーに笑われました。
糖分を摂りすぎると、あとで気分が悪くなります。
それから著者はダークチョコレートを、いつもデザート代わりに食べるようにしています。初めは苦みになれないけれど、そのうち味蕾が適応し、普通のデザートを甘すぎると感じるようになるそうです。
いまでも週に2日はアイスやクッキーを食べますが、それは意識的に食べるおやつです。
ワタシも今週、「ダークチョコレート」を試すべく買ってみました。
1日の「最優先事項」を決める
本書では「ハイライトを選ぶ」として、「無限の泉を遠ざける」と並んでツートップの重要事項として紹介されています。
実は先週のブログで、最優先事項を決めることを紹介しています。
実際ワタシも先週から実践しました。
ハイライトの実践には、いくつかポイントがあります。
朝、今日1日にひとつの「ハイライト」(最優先事項)を選ぶ
ハイライトは直感で選ぶ
それを手帳やふせん、スマホなどに書いて、とにかく目に見えるところに置く
その時間を手帳の中に確保する
というものです。
(先週これについてはさらにしつこく詳しく書いています)
それが「今日こそ夕飯を作る」ならば、その時間を逆算して「5時にはおおよそ仕事を終える」などの計画が立つでしょう。
あなたにとって重要であれば、「子どもと遊ぶ」「マリオカートをする」、何でもなんでも良いのです。
ワタシは水曜日、前夜の漫画による睡眠不足で眠くて仕方ない朝を迎え、試してみることにしました。
朝のうちに「健康管理をする」と手帳に走り書きしただけです。
「書いた」だけで、効果抜群でした。
何となくおやつが減り(翌日の体重計でガッツポーズでした)、
帰宅時間が早くなり(家で家族とおしゃべりできました)、
翌朝の目覚めがさわやかでした(コーヒーをがぶ飲みしてトイレ回数を増やす屈辱が翌日に減りました)。
翌日の木曜日は「急ぎの仕事を片付ける」。
そして4つの期日が近い仕事をメモ帳に走り書きしました。
いつもなら1つ終えるのがやっとのタスク。それが4つとも終了です!
しかも集中できて、いつもより早い退勤時間を実現できました。
書くことにより、自然と「どうでもよいタスク」をカットしていました。
そのことが、4つの重要タスクを短時間で終えるという成果を裏付けていたのでした。
無限の泉対策
最優先事項に「より集中」するには、ラップトップやスマホなどの無限の泉を見えないようにして遠ざけること。
Googleの社員は、コレで全員が100%の注意力を注ぐことできることが分かりました。
また、集中力の継続については試行錯誤の結果、間にヘルシーなランチや短い散歩、頻繁な休憩、時間の短縮という工夫が有効であることが分かりました。
今週試してみたいと思います。
著者の1人であるジェイクは、夜に執筆の時間をとりたいと思いながら、ずっとできずにいました。
実は、テレビの誘惑が大きな問題でした。
そこで実験を重ね、生活の中のデフォルトを抜本的に改革したのです。
DVDプレイヤーをクローゼットにしまい、ネットフリックスを解約しました。
意志力では、絶対に勝てないのですから、環境から変える!これが本書で一貫して叫ばれていることです。
自由になった時間で彼は冒険小説に取り組みました。
子供のころからの夢のための時間を作ることができて、最高の気分だったそうです。
ジョンと妻のミッシェルの長年の夢はヨットで長旅をすることでした。
ジョンたちは古いヨットを購入して、週末ごとに2人で手を入れました。
このとき、メイクタイムの戦術を使い、1日のタスクを1つ決めて、それをやり遂げるための時間を予定表に書き込みました。
お蔭でディーゼルエンジンの整備や電気系統、遠洋航海について学ぶ時間を作ることができました。
ジョンと妻はこれまでサンフランシスコから南カリフォルニアを経てメキシコへ、さらにその先へ旅しているのです。
時間とテクノロジーの主導権をあなたに
メイクタイムは別にアンチ・テクノロジーの試みではありません。
現代人らしくインスタグラムで友人をフォローしたり、ニュースを読んだり、メールを送ったりしてもいいのです。
でも、「あれをやれ」「もっとやれ」とさかんに急き立ててくる世界の標準行動に背を向ければ、テクノロジーを活用しながらも、主導権をあなたの手に取り戻すことができます。
そして、いったん主導権を握れば、あなたがゲームのルールを書き換えることができるのです。
本書は今すぐできる実践ばかりが87個掲載されています。
テクノロジーを作り上げてきた人々さえも、そのテクノロジーに人生をのっとられがちであることが、ワタシにとっては驚きでした。
GoogleやYouTubeを作ってきた人が「コンテンツを消す」って何?と思いませんか!
でも、作った本人たちがのっとられるくらい、次々にやってくるコンテンツは超魅力的ってことですよね。
私たちが人生でやりたいのは、コンテンツに時間を食いつぶすことではないはず。
一緒に自分の人生の主人公になりましょう。
では、また。