モノを取りに部屋に入った瞬間「あれ、何を取りに来たんだっけ?」ってことがワタシは増えた気がするんです・・・!
頼まれていた書類作成を提出し忘れて、先週お詫びをしたばかりです。
歳をとると、記憶力が衰えるもの・・・だから仕方ない・・・(涙)。
これって、アルツハイマー病の始まりでは?!
そう悲壮感一杯に思っていました。
これから、ますます役立たずになるんだ、もう人生終わりだ、と。
しかし、それは違うようです!
著者は『スッキリ』で有名な上大岡トメさんと農学者の池谷裕二さん。
脳科学者の視点から、わかりやすく記憶力をあげる方法や、「それって、アルツハイマー病の始まり!?」という叫びに対して、科学的に応えてくれます。
「年をとると、神経細胞の数がへっていく」はウソ
相当根強く誤解されているのが、「脳は年を取ったら衰える」という常識。
しかし、脳科学者の池谷さんは、それを否定します。
もちろんアルツハイマー病などの老年性認知症は、通常、高齢になってから発症します。
とうぜん、年をとることで発祥の危険性が高くなるのは事実。
しかし、認知症は誰でもがなる病気ではありません。
依然としてガンに比べれば患者数は少ないのです。
そして、アルツハイマー病は自分で自覚がないもので、家族に病院に連れてこられて初めて本人が気づくケースがほとんどなのだとか。
つまり、「最近、記憶力が・・・もしかしたら初期症状かな?」と、本人が心配しているくらいなら、大丈夫。
健忘症は「健やかに」「忘れる」と書くことからもわかるように、認知症とは異なる状態です。
「年を取ると、神経細胞の数が減っていく」はウソ
脳の研究をしている著者でさえ、「神経細胞が年齢とともに徐々に減っていく」というデータは見たことが無いそうです。
神経細胞は生まれた時に一番多いことは確かです。
しかしその減り方は、年齢とともに徐々に・・・ではありません。
むしろ3歳くらいまでに一気に減ってしまうのです。
生まれた時の新鋭細胞の役70%が3歳までに消えてしまうようです。
そして私たちは残った神経細胞を一生をかけて使いまわします。
40歳、50歳、60歳と、経時的に調べていっても神経細胞の数はほぼ一定です。
ど忘れは「人の名前」「モノの名前」
それでも多い、「仕事先の人の名前を忘れる」という大事件。
しかし、これは記憶の仕方の違いにより、どうにも忘れてしまうものなのです。
記憶の仕方の違いとは、次の3つの通り。
①知識記憶
これは、学校のテストや資格のテストなど、世の中のテストのほとんどで使われる記憶。
繰り返し学びなおさなければ、どんどん忘れてしまいやすいのが特徴です。
だから、人の名前が思い出せないのは、大丈夫。
認知症が始まったわけではないのです。
つまりは、あんまり興味が無いことだし、繰り返し思い出したりしないわけだから、忘れるのはとうぜんなのです。
よくよく思い出せば、ごく若いころも同じなのです。
私たちも子供のころのテストで、一生懸命覚えた歴史上の人物や英単語を、本番のテストで思い出せず悔しい思いをしたこと、一度はあるのではないでしょうか。
人の名前などの知識記憶が思い出せないのは、当たり前のことです。
②経験記憶
よく忘れる人の名前(失礼だから、忘れたくないんですけどね・・・)
一方で、逆によく思い出せるものもあります。
過去にあった出来事のことでも、たとえば楽しかった思い出に残る食事などについてなど。
どこで食べたとか、誰と食べたとか、スラスラ思い出せるものがあったりしませんか?
学生時代のきつかった部活だとか、マラソン大会のエピソードなども、かなり昔のことなのに、詳細に語ることができるのではないでしょうか?
ワタシは部活動の女子テニス部で、恐ろしいヤンキーな先輩にしごかれた経験を詳細に思い出せます!
それらは、自分の経験・体験の記憶。
経験記憶です。
経験記憶は、いつでもわりと自由に思い出せます。
しかし、知識記憶は思い出すのが難しい。
知識記憶は「きっかけ」が弱いと思い出せないのが特徴なのです。
だから、テストで知識として暗記する名前や単語に「エピソードをつけて覚える」というテクニックがあったわけです。
③方法記憶
もうひとつの記憶が方法記憶。
方法記憶は、「昔取ったきねづか」と呼ばれるもの。
自転車の乗り方やコマ回し、けん玉、トランプのルールや水泳など、久しぶりにやっても思い出せますよね。
方法記憶には、「無意識に作られる」「一度覚えると忘れにくく強固」という特徴があります。
これらの特徴をうまく生かすことで、記憶力はもっと上げていけるかも。
マスク生活で初めて会う人の顔と名前を一致させるのは、かなりの苦労ですよ。
貰った名刺の裏に特徴を書いておく、というのは、よく言われますけど理にかなっているんですね。
きっかけづくりをしていこうと思います!
海馬に記憶をさせるために
これらの記憶を脳内で行うために大きな役割をしているのが海馬です。
脳の真ん中あたりにあります。
形はタツノオトシゴに似ています。
長期記憶として残すか、忘れるかをジャッジする機能を持つそうです。
記憶するためには、海馬に「命に係わる重要な情報だ」と思わせることだそうです。
海馬は、一度さらっと見ただけの知識記憶は長期記憶に入れるべき内容とは判断しません。
そこで必要なことは次の通り。
①復習
海馬に記憶させるには、何度も思い出すこと=復習することが重要になります。
何度も繰り返し復習していくと、「繰り返し入ってくる情報だから、きっと生命に必要な内容だ」と海馬は判断し、長期記憶に入れてくれます。
こうして繰り返して記憶し脳神経のつながりを強化することを、LTP(long term potentiation)といいます。
・・・復習。
超苦手でした。
でも、本当に脳に大事だったんですね。
横にいる記憶力の高いクラスメイトが「教科書を読んでいるだけで覚えちゃうよ」とか言っているのを聞いて、「自分の記憶力の無さが恨めしい」なんて思ったものでしたが、ふつうは繰り返すことで、脳は知識を覚えるものなんですね。
学生時代の自分に教えてあげたい。
でも、嫌いだったんですよ、復習。
復習回数を減らすθ波
しかし、復習ばかりが覚える手段ではないのです!やった!
人間は「ときめき」のあるものであれば、何度も見なおさなくても、LTPなしで一発で覚えることができます。
それがθ波。
興味があることに対して、脳から出ています。
好奇心が活発になったときに出るもので、「初めて」行く場所や「初めて」会う人、「初めて」経験するとき、人は興味が外に向き、自然とθ波が出て、比較的覚えやすいものです。
韓流ファンのおばさまたちが俳優の名前をすぐ覚えたり、野球好きな男の子が初めて見る選手をすぐ覚えたりするのが、θ波によるもの。
う~ん、仕事先の相手にときめきを覚えていないから、記憶できないのか。
これはどうすればいいかな。
仕事にときめきをもっと持てばいいのだろうか・・・?
お互いおじさんとおばさんの出会いでしかないし。
さらに、好きだったものでも、あきたりマンネリ化するとθ波は出なくなるそうです。
人生において、ワクワク・ドキドキが少ないと記憶力も悪くなるのかもしれない、と著者は言います。恐ろしい。
最近、ワクワクもドキドキもなかった気がする!?
例えば大人になって人の名前を覚えにくいのは、子供の頃より会う人が多いというのがあるかもしれないと著者は言います。
でも、一流のホテルマンや会社の社長はよく覚えていますね。
自分でも覚える方法を編み出していきましょう!
憶えにくいのは、年齢のせいではないのですから。
偏桃体で復習回数を減らす
復習・LTPがなくても海馬に効率よく覚えてもらうには、また別の方法があります。
「思い出にする」という方法です。
あなたも、子供のころや学生時代の印象的な思い出などは、細かいことまで覚えているものではないでしょうか。
でも、数学の公式は覚えていなかったりしませんか?ワタシはさっぱり思い出せません。
喜怒哀楽の感情が大きく伴うものごとは、記憶に残りやすいのです。
これは、偏桃体が活発になったことが理由です。
人間の進化の過程で、偏桃体は記憶力を高めることを大切にしてきました。
例えば、猛獣などの敵に見つかり、生命の危機に瀕したとき。
そうした場面の恐怖が伴う記憶を強くすること。
そのことで、危険な場所や時間を強く覚え、生き残ってきたのです。
反対に、エサがたくさんあった嬉しい場所も、しっかり覚える。
だから覚えるときは感情をこめるのと、さらにうまくいくのです。
同じ英文を覚えるにしても、感情をこめて発音してみると効果があります。
眠ることも記憶のうち
学生のころ、テスト前夜に一夜漬けをするよりも、寝る前に集中して勉強を行い、ちゃんと眠ってテストに臨んだ方が点数が良いことがほとんどだと思います。
それは私たちが眠っている間に頭の中で海馬が「復習」をしているからだそうです。
睡眠中の海馬は、昼間得た情報を夢の中で再現し、さまざまな形で組み合わせ、整合性をテストしているそう。
つまり、復習しながら整理しているんです。
一般的に新しい情報を身につけた時は、その日6時間以上眠ることが必要とされているそうです。
私たちがつじつまの合わない夢を見ているのは、昼間の出来事を断片的に再生しているからだそうです。
ちなみに実はひと晩で見る夢の量は膨大で、私たちが思い出せるのはわずか1%だそうです。
そして・・・もし私たちが眠る時間が少なかったりすると、どうなるでしょう?
海馬は情報を整理しきれないのでパニックになります。
そして、整理しきれない新しい情報は、無差別廃棄にしてしまうのです!
だから、テスト前は潔く眠ることも大事になるわけです。
そして、私たちビジネスパーソンは、日々睡眠をしっかりとることが必要なわけです。
海馬からθ波が出ているタイミング
では、日常の中で、記憶力がアップするθ波が出る瞬間はいつでしょう?
歩いているときは海馬からθ波が出ています。
また、小腹が減っているときも、θ波が出ています。
実はこれ、百獣の王ライオンも同じ。
「小腹が減る」と言うのはライオンにとって死活問題ですよね。
獲物情報はライオンの食生活に大きな影響を与えるから、θ波が出て記憶しやすい状態なのです。
また、空腹時は胃からグレリンというホルモンが出て、これは海馬からLTPが出るように促します。
ちなみに歩くときにθ波が出るのは、周りの風景が変わるからではないかとされています。
「移動している」と脳に思わせると、現在位置を検索しようと動きが活発になるそうです。
だから、ものを覚えるときのメソッドとして
①歩きながら覚える
②お腹が空いているときは、記憶するチャンスなので覚える
③満腹の時は覚えづらいから休憩
と著者は紹介しています。
脳は入力より出力重視
樺沢紫苑先生の『アウトプット大全』にもあったように、出力することで記憶力はアップします。
教科書や参考書を見直すよりも、問題集をどんどんやった方が効果がありますよね。
英語も一人で音読するよりも、つたなくてもどんどん会話をしているうちにさらに上達したりします。
思い返すに、最近睡眠時間が足りていません。
だから、余計に忘れやすかったのではないかと反省です。
また、よくよく考えれば、ワタシは若いころからおっちょこちょい。
失敗も忘れ物も今に始まったことではなく、かえって今の方が仕事も整頓もうまくいっているかもしれません。
何もかも年齢や脳のせいにしては、いけないのです!
年齢を重ねるのは、経験を重ねること。
今まで出会った人数が多いだけに、なかなか覚えにくいということもあるのだと本書にはありました。
たくさん容量を使ったPCのようなものかもしれません。
その分、いろんなアプリが入っていたり、楽しい写真や動画も入っているPC。
そんなものだと思えば、ちょっと自分の脳が愛すべきものに思えてきました。
今週も、お疲れさまです。
よく休んでくださいね。
では、また。