仕事や会社がにとっていちばん大切なことは何でしょうか?
利益?社員の幸せ?ブランド?戦略?ビジネスモデル?
どれも大切です。しかし、いちばんではない。
では、なにがいちばん大切か?
著者の答えはシンプルです。
ヒット商品をつくり続けること。これしかありません。
ヒット商品をつくり続ける会社が成長し、ヒット商品をつくることができなくなった会社が滅びる。
古今東西、ビジネスを支配しているのは、このシンプルな法則です。
利益も、社員の幸せも、ブランドも、ヒット商品が生まれた結果として生み出されます。
戦略も、ビジネスモデルも、
ヒット商品がなければ、画に描いた餅にすぎません。
だから、ビジネスの本質は、「ユーザーが本当に求めているものを提供し続けること」。
それ以外にないのです。
そのためにどうすればいいのか?
これもシンプルです。
ユーザーのニーズに応える情熱と能力を持つ社員だけを集める。
そして、かれらが、何物にも縛られることなく、その能力を最大限に発揮できる環境を作り出す。
これ以外にありません。
そのために必要なことだけをやり、不要なことはすべて捨てる。
著者がやってきたことは、これに尽きます。
シンプルに考えるー。
これが著者の信条です。
悩むことをやめた、と言ってもいいかもしれません。
悩むとは、なんとなく「あれも大事、これも大事」と迷っていること。
結局、何も決めらえず、行動に移すことができません。
あるいは、「あれもこれも」と力を分散させてしまう。
しかし、結局、人間が一度にできることはひとつだけ。
結果を出すためには、ひとつのことに全力を集中させなければなりません。
だから、悩んでいてはダメだと思うのです。
大切なのは「考える」こと。
人が悩むのは「表面的な価値」に惑わされているからです。
だから、「何が本質か?」を考えつくさなければなりません。
そして、最も大切なことを探り当てて、それ以外のものは捨て去る。
シンプルに考えなければ、人は何も成し遂げることができないのではないでしょうか。
会社も同じだと思います。
「表面的な価値」を「本質」と取り違える愚を犯してはなりませんし、人材、資金、時間などの限られたリソースを「あれも大事、これも大事」と分散させてはなりません。
「ユーザーのニーズに応える」という「本質」に全力を集中させる。
それ以外に、ビジネスを成功させる方法はないと思うのです。
だから、著者はLINE株式会社の社長に就任した時に、こう心に決めました。
「年齢、職歴、役職に関係なく、ユーザーのニーズに応える情熱と能力がある人間が主導権をとる。
そして、クオリティの高いプロダクトを、どこよりも早く出す。
ルールはこれだけだ」
そしてそのような環境を生み出すうえで邪魔になる考え方を、自分のなかから徹底的に排除しました。
かつてMBAで学んだことや経営書で読んだこと、常識とされていることにとらわれることなく、試行錯誤を繰り返しながら「実質」のみを追求したのです。
その結果、次のような方針が確立していきました。
「戦わない」
「ビジョンはいらない」
「計画はいらない」
「情報共有はいらない」
「偉い人はいらない」
「モチベーションは上げない」
「成功は捨て続ける」
「差別化は狙わない」
「イノベーションは目指さない」
「経営は管理ではない」
驚かれる人もいるかもしれません。
確かに、これまでの常識に反することばかりです。
しかし、これらの方針はLINEを生み出したチームで今もまさに実践していることです。
だからこそ、彼らはLINEを短い期間で、世界数億人のユーザーに利用されるグローバルサービスに育て上げることができたのです。
著者は2015年3月31日をもって、LINE株式会社の社長の座を後進に引き継ぎました。
日本テレビ放送網、ソニーを経て、LINE株式会社の前身となるハンゲーム・ジャパン株式会社に2003年に入社。
創業3年の若い会社であるハンゲーム・ジャパンは、大企業につきまとう社内のしがらみもなく、「いま世の中が求めているもの」や「新しいもの」を自由に追求できると考えたのです。
資金力もブランド力もなく、あるのは「情熱」と「知恵」だけ。
仲間とともにがむしゃらに働きました。
それから12年。数多くの失敗をしてきました。
つとめて楽天的にふるまってきましたが、正直なところ不安で眠れない夜もありました。
思い通りにいかず、部下とともに声を出して泣いたこともありました。
しかし、失敗から実に多くのことを学ぶことができました。
いえ、「なぜ失敗したのか?」を徹底的に考えたからこそ、ビジネスの「本質」に近づくことができたのだと思います。
あきらめることなく、一歩ずつ歩み続けた結果、ここまでたどり着くことができたと著者は言います。
この12年間が一生の宝だと。
そこで、社長退任を機に、これまで人生で経験したこと、学んだこと、考えたことを、ビジネスパーソンとシェアするために本著を書きました。
「熱」こそが成功の条件である~使命感をもってユーザーのために尽くす
著者には忘れられない光景があります。
2011年3月末。
東日本大震災直後、社員の安全を最優先するために、東京オフィスの閉鎖を決定。
著者たち経営陣は福岡オフィスで業務を継続するとともに、社員の安否確認を続けました。
混乱が収束しつつあった2週間後、業務を再開すべく、東京オフィスを再開した時のこと。
正直言うと、著者は心配していました。
震災の心労でみんな疲れているのではないか、と。
しかし、それは全くの杞憂でした。
みんな待ち望んでいたという様子で、すごい集中力で仕事を始めたのです。
著者は、その様子に目を見張る思いでした。
そのなかに、LINEのプロジェクトに携わっている面々がいました。
2010年末、「スマートフォンに特化したサービスを開発しよう」という掛け声のもとで選抜された、少数精鋭のチームです。
彼らは、市場調査を踏まえて検討を重ね、「ゲーム」「写真共有」「コミュニケーション」の3つのテーマを厳選。
さらに、このなかからどれかひとつに絞り込んでプロジェクトに着手しようとしていました。
ところが、その矢先に震災が発生。
彼らは、震災で自らの体験をもとに議論や分析をさらに深めていきました。
そして、いま求めらえているサービスは「クローズドなコミュニケーションだ」と確信。
のちにLINEと名付けられるメッセージアプリの開発に着手したのです。
おそらく、震災後、彼らは、家族や親類や友人たちの安否確認に心を砕いたはずです。
電話、メール、SNS・・・。
あらゆる手段で連絡を取ろうとした。
そして、一部のネットリテラシーが高いユーザーだけではなく、「誰もが使いこなせる、もっと便利なメッセージサービスが必要だ」と切実に感じたに違いありません。
だからこそ、世の中が求めているサービスを明確にイメージできたのでしょう。
1分1秒でも早くそれをカタチにして、ユーザーにとどけなければ・・・。
メンバーの多くは、ほとんど家に帰らずに仕事をしていたようです。
いま思えば、このときの「熱」が、そのままLINEの成功につながったように思うそうです。
著者たち経営陣は、彼らの方針・ビジョンに一切口をはさみませんでした。
意味がないからです。
社長である著者の仕事は、自分よりその分野に強い人に仕事を任せること。
その人がリーダーになり、必要なメンバーが集まって、全力でプレーをしている。
そこで著者たち経営陣が何を言っても邪魔になるだけ。
著者たち経営陣の仕事は、かれらの邪魔するものを取り除くこと。
必要なものを用意すること。
彼らの「熱」を守ることこそが、最大の使命なのです。
著者の理想はシンプルです。
現場はひたすらユーザーのために全力を尽くす。
経営は、現場が仕事にとことん集中できる環境を作る。
それが、著者が長年思い描いている理想です。
そして、その理想的な状況の中でLINEは生み出されたのです。
「本当に良い仕事ができた!」と思えた瞬間には、燃え上がるような情熱があるものですよね。
その瞬間を守ることができたなら、確かに上質な仕事をし続けることができるのかもしれませんね。
今日もお疲れさまでした。
では、また。