猫のメメとモエ

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「忘れる」ことが、大局を俯瞰する力になる~『思考の整理術 問題解決のための忘却メソッド』前野隆史

本著は、記憶というシステムについて論じています。

記憶の物理的メカニズムではなく、「記憶システム」が何か、何のために存在し、どう役立つのかを述べています。

記憶システムの本質は、「忘却」「成長」「システム思考」「幸福」と結びつく、という意外なダイナミズムの小見白さにつながります。

そして、忘却は、記憶の整理、思考の整理につながっており、それらは、大局的な問題につながっています。

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「忘却メソッド」

「思考の整理術」という視点から考えると、忘却というメカニズムは本質的に重要です。

記憶力進行が隆盛を極める現代だから、逆に「忘却」というシステムが人間にとって極めて重要であることを思い出す必要があります。

さらに、ちょっとしたテクニックで「忘れる力」を強化する面白さがあります。

忘れることがなぜ必要なのか

「自分は物覚えが悪くて」ときおっく力の記憶力の悪さを嘆く人は少なくありません。

小学生のころから、覚えることを叩き込まれたため、忘れることに恐怖心を抱くようにできているのです。

クイズ番組でも記憶力の悪さを揶揄するクイズ番組がはやるなど、記憶力偏重の考え方は、今も根強く残っています。

受験の数学でさえも、ほぼ実質暗記科目であったり。

 

でも、「忘れること」の効用を説く人も増えてきました。

将棋の棋士である羽生善治さんや中原誠さんがしょっちゅう電車の中に傘を忘れるそうですが、駅の忘れ物センターへ行くと、必ず見つかると言います。

なぜなら、何時何分に、どこからどこまで、何両目のどの席に座っていたかを正確に覚えているからだそうです。

ほかにも、1年前に1度だけ言ったことのあるすしやの名前を正確に思い出せる棋士の話や、手書きの原稿をファックスで送った後は覚えているからすべて捨ててしまうという棋士の話が紹介されています。

 

しかし羽生さんと柳瀬尚樹さんが対談している『勝ち続ける力』では、こんなことを話しています。

「今は、あまり重要でないことは、どんどん忘れたほうがいいと思っているんです。

記憶する努力よりも、忘れる努力が必要ですね」

 

みなが天才と認める羽生さんが「忘れる努力」を口にするのは理由があります。

羽生さんは30代後半から、若いころに比べ記憶力の低下を感じました。

対局中に前例を思い出さなければならないとき、今は思い出すのに結構時間がかかるのです。

それえもあえて「忘れる努力」が必要だと言う。

これは、「独創的な思考や、創造的な思考に頭を切り替えるとき、記憶は足を引っ張る」からだそうです。

 

将棋は、定跡や前例が重要。

その基礎があっての強さですが、だからといって定跡をうのみにし、自力で考えて道を切り開くことを怠ると、真の強さは身につかない。

 

羽生さんによると、前例や定跡中心の将棋は大きなリスクがなく、平均点が取れて、無難に収まるけれど、飛躍的なことや突発的なときに突飛なことができなくなる。

それでは限界が来るのです。

だから、羽生さんはあえて「忘れる努力」をしています。

羽生さんは言います。

「記憶のために時間を費やすことよりも、違うことに時間を費やした方がいいと思います。

年齢が上がるにつれて、覚えることよりも、創造的なことや総合的なこと、つまり、漠然としたものをなんとなく把握するとか、あいまいなことを理解してツボをおさえるとか、そういう能力が長けてくるんですよ。

もう、単に覚えることには四苦八苦してしまうでしょうし、この年齢になれば、記憶に時間を費やす意味はありません」。

 

知識や経験は時に新しいアイデアの邪魔をする

神経心理学者の下条信輔さんは『サブリミナル・インパクト』の中で、「独創性を発揮する秘訣は、全体の状況を良く把握した後に忘れることではないか」と、独創性のためには忘却が重要であることを説いています。

外山磁比古さんも、『思考の整理学』のなかで、人間の、人間の頭は知識を詰め込むだけの倉庫ではなく、新しいことを考え出す工場でなければならないとしたうえで、「場ふさぎ(無駄な記憶」がごろごろしているのは不都合である。忘れる努力が求められるようになった」と説いています。

 

たくさんの知識を持っていることは、悪いことではありません。

大い役に立ちます。

しかし、一方で知識や経験が多すぎると、新しいアイデアを生む邪魔になることもあるのです。

 

記憶力が衰えているのは、すでにたくさん意味記憶を蓄積しているから

大人になって、新しい映画や俳優、曲に興味が若いころよりも持てなくなるのは、不思議です。

しかし、若いころは様々なものをインプットして、フィードバック的な生き方をしているため、ドラマでも音楽でも、様々な意味記憶を脳にインプットしているのです。

一方、年を重ねるに従い、脳の中には大量の意味記憶が蓄積されます。

このため、脳の中の意味記憶を利用して、フィードフォワード的な思考を行うことが可能になるのです。

 

すると、新たな意味記憶を導入しなくても、いろいろなことができるようになります。

そのため脳は、もう新たな意味記憶を獲得する必要はないと判断して、フィードバック誤差学習をしなくなるため、自然と意味記憶を獲得する力が衰えてくることになります。

年代によって、記憶の果たす役割は違う

人間が何かをできなくなるのは、それがもう必要ではないからです。

記憶力の衰えは、能力の故障ととらえがちですが、必然的意味があってのことです。

音楽や映画への興味が衰えるのも、気力が減退したからではなく、もうすでにたくさんの意味記憶を獲得したからです。

 

生活に必要な意味記憶だけが残り、不要なものは忘れるようにできています。

旅行での部屋番号や、ショッピングセンターの駐車場番号、引っ越す前の電話番号など、必要なその当日を過ぎてしまうと忘れてしまうもの。

学生のときに必死で覚えた歴史の年号や化学の元素記号も。

でも、今住んでいる家の電話番号は忘れない。

 

実際、誰も、今の仕事や生活に直結する意味記憶は、多くの場合、しっかりと覚えているものなのです。

だから、必要な記憶が残り、不必要な記憶は自然と忘れてしまうものだ、くらいに開き直った方がいいのです。

忘れる技術

嫌なことやつらいことをそのままにしておくと、不満や愚痴になる

ニュースを見ると、かつての記憶が怨恨となっていつまでも残り、それが悲しい事件の引き金になっていることをしばしば目にしますね。

楽しい記憶も長く残りますが、悲しい記憶や嫌な記憶はそれ以上に長く重苦しく脳に残り、私たちを時にネガティブな感情へと駆り立てます。

 

たとえば、仕事でも、しんどいことやつらいことがあったとします。

上司に訴えても、「そのうち何とかするから、それまで我慢しろ」とやり過ごされたとします。

すぐ対処してもらえば問題は小さいうちに解決するのに、放っておく。

すると、誰かが不調を訴えたり、不良品がたくさん出たり、社員が退社する事態まで発展したり。

それと同じです。

何の解決もしないで「忘れよう」「なかったことにしよう」と、先送りしていると、同じように苦い記憶として残り、蓄積されると会社と同じでやっかいな問題に発展し、強く嫌な記憶が残ります。

 

同様に、小さいうちに解決してしまえば、しんどかった記憶は不要になるので忘れられ、「改善により楽になった」という楽しい記憶が残るのです。

だから、問題は極力解決し、過去にさかのぼって解決できないことなら、今の時点でできる最善を尽くしておくことが大切です。

 

いずれにせよ、いつまでも忘れられない悲しい記憶やつらい記憶は、どこかでその問題と正面から向き合い、問題の原因を究明し、今できる最善の解決法を探ることが必要なのです。

そうすることによってはじめて、ネガティブな記憶は必要なくなり、少しずつ忘れられていくのです。

正しい「忘れる努力」の仕方

記憶は不思議なもので、「覚えておかなくては」と思うと忘れ、「こんなこと、早く忘れなければ」と思うと、忘れられません。

 

悲しみに打ちひしがれているあなたに、誰かが

「いずれ時間が解決してくれるさ」

「起きてしまったことは忘れなさい」

と言ってきたとして、それができますか?

「あんたに、わたしの気持ちが分かるか」

という定番のフレーズが浮かびませんか。

気分転換で一時忘れることができても、記憶そのものは消えません。

 

「忘れよう」という努力よりも、「なぜ失敗したのか」という原因を究明して、次に生かすことが必要です。

人間、誰でも多少の失敗をします。

特に、新しいことにチャレンジする場合、失敗はつきものです。

失敗を恐れて新しいことをやらないと、失敗はない代わりに進歩も生まれません。

 

大切なのは、失敗を悔んだり、忘れることではなく、「次にどうすればうまくいくか」を考えること。

そこまでいけば失敗はただの失敗ではなく、成功の母です。

フィードバックの誤差学習です。

そして、次にうまくいけば、失敗もただの笑い話になり、懐かしい思い出、あるいは美談になります。

 

こうしたステップを踏みことなく、ただ失敗を後悔し続けたり、ほかの人や社会のせいにしてしまうと、失敗の記憶はずっと残るばかりか、やがて大きくなっていって、やがて感情の爆発につながる危険があると著者は言います。

 

そうならないためには、失敗の記憶やつらい記憶、いやな記憶を、できるだけ早い段階でいったん反省材料にすること、整理することが重要になります。

そうすることによって、そうした記憶は前向きになる力に変わることも多いし、何より感情のキャッシュフローをプラスに保つことができます。

記憶は、必要がなくなれば自然と消えていきます。

年齢を重ねて知識やスキルが増えてくるにつれ、記憶の果たす役割は徐々に減ってくるものなのです。

忘れるほど、生き生きと生活できる

日本は記憶力偏重な風潮がますます強くなっている、と著者は警鐘を鳴らしています。

それでは、大局を俯瞰する力を持ったリーダーが育っていかないのです。

大企業のリーダーたちが、今までの知識と経験ばかりに頼っていたら、世界で勝ち残っていけないのです。

それは、リーダーだけではありません。

日本人一人ひとりが、新しいものを創造していく力を求められている今、知識はいったん横に置いておくことが重要です。

 

そのためのスキルとして、マインドマップやkj法も有効です。

たくさんのトライを推奨し、その失敗そして成功も「見える化」していくこと。

見えるようにしたら、あとは忘れてしまうこと。

これからの会社は、それが必要なのです。

 

著者は記憶力への執着を超越することで、あらゆる問題が解決に向かっていくのだと言います。

リラックスし、楽観し、おおいに忘れること。

気軽かつ楽観的に記憶と付き合えば、細かい詳細の記憶は気にせず、積極的に忘れることができます。

それは、記憶を整理、整頓し、体系化につながります。

そのことは、大きなビジョンを持ち、大局的に施行し、おおらかに人々を先導し、様々な問題を解決することにつながっています。

同時に自分自身や周りの人を幸福に導くことにつながるのです。

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忘れてしまいがちな自分の脳みそを常々いやだと思ってきましたが、その分新しいことを始めるのが得意だったのかな?とちょっとうれしくなりました。

 

今日も一日、お疲れさまでした。

ゆっくり休んで素敵な夢を。

では、また。

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