「どうやってすべてをこなしているの?」
と、著者はよく聞かれます。
「すべて」というのは、スタンフォード大学での心理学の講義や本の執筆、リサーチ、世界じゅうでの公演、さらには趣味で教えているヨガとダンス、といった様々な活動のことです。
著者は自分自身を「生産性の模範になる人物」だと思っていません。
自分自身のやりたいことのリストを見ると、圧倒されています。
やることが多すぎるのです。
時間管理術について
やりたいことが多すぎる著者。
どうしたらすべてを終わらせられるのでしょうか。
著者の事務所を見ると、そこは整理整頓された状態とはほど遠く、ゴチャゴチャしているそうです。
時間管理術について書いていると、自分がペテン師になったように感じることもあるそうです。
効率を上げるための助言をするにしては、ネットショッピングに時間をかけすぎて、時間を無駄にしすぎてはいないか、と。
「完璧にやらない」ことが、すべてをこなす秘訣
一方で、「TODOリスト」や散らかった机を見ると、恵まれているな、とも感じるそうです。
スーパーマンではなく、普通の人間でありながら、やりたいことは「すべて」できるのですから。
何とかこなすそうです。
そして、ほとんどの場合、楽しんでいます。
・・・うらやましい!
一番のポイントは完璧にやらなくていいことです。
それこそが、著者が「すべてをこなす」ことに成功している本当の秘訣です。
生産性を挙げる一番のコツは、計画的になったり、時間管理をすることではないのです。
何かをやり遂げるために、「こうあらねばならない」といった杓子定規なやり方ではなく、自分らしく仕事をすることを許してあげるのです。
著者は、物事をやり遂げるうえで邪魔になる「自分の癖」を受け入れ、その癖を利用する方法を学びました。
例えば著者は夜型人間なので、「朝に大事な仕事をこなそうとする」ことをやめる必要がありました。
朝の時間を上手に使うことで、1日がうまくパターンができました。
朝は、運動や瞑想でリラックスしたり、雑用を済ませることに費やします。
夜型で夕方以降に高い集中力とエネルギーが発揮されることがわかり、1日の遅い時間に仕事を始めても構わないということも学びました。
「仕事を受けすぎる」という自分の性格も、受け入れています。
「仕事を受けすぎることは悪いことではない」と。
今までのキャリアの中で何度か、仕事を減らし、人生をシンプルにしようとしたことがありました。
主だった仕事を1つ減らし、授業回数、出張の回数を減らしたり、集中したり。
仕事を減らしてストレスを少なくすれば、自分は幸せになれると信じていたのです。
仕事を減らそうとするたび、スケジュールが開いている時間帯に予定を入れたがっている自分がいました。
新しいクラスやプロジェクトはもちろん、家のリフォームができればと夢想していました。
著者にとっての空き時間は「クリエイティブな発想で埋め尽くさないと気が済まない」ものだと悟るようになりました。
「空き時間があればバランスのとれた日々を送れる」とふつうは考えるものですが、著者は逆だったのです。
人間は「忙しい」方が、幸せを感じる?
仕事量を減らせば、しあw背になるというのは、よくある誤解です。
米シカゴ大学と中国の上海交通大学の研究によると、たとえ本人が望む以上に強制的に忙しくさせられていたとしても、人間は忙しいほうが幸せに感じるそうです。
多くの人は、忙しくないほうが幸せだと信じていますが、真実はその逆なのです。
やることが多いのに避ける時間がなく、文句を言いたくなった時は、著者はこの事実を思い出すようにしています。
自分の人生で最も忙しかったいくつかの出来事・・・論文を仕上げるとき、本を執筆しているとき、そして結婚したとき。
その忙しかった時期に、信じられないくらいの成長を遂げたことを、自分に言い聞かせています。
「忙しさ」は、ポジティブなストレスとなり得るのです。
趣味というものも、エネルギーをモチベーション(動機付け・意欲・やる気)の源です。
単なる気晴らしではありません。
例えば著者は今、本を書きあげるために必死で働いています。
それにはものすごい集中力と鍛錬を必要としています。
そんな忙しい時なのに、「インドアサイクリング」のインストラクターの資格を取るために先週、1日休みを取りました。
今後、インドアサイクリングのクラスを受け持って教える時間が、果たして著者にあるでしょうか。
いいえ、ありません。
では、なぜそんなことをするのか。
忙しい時だからこそ、自分の可能性を広げることで、前向きに、情熱的になれるのです。
別の言い方をすれば、多くのことをすることで著者は、刺激され、多くのことを成し遂げられるのです。
「先延ばし」が効率を上げる?
また、あなたに「やらなけれなならないことを先延ばしにする癖」があるなら、それを受け入れ、活用することができます。
時間管理術を学ぶときは通常、「やるべきことは、いったん放っておきましょう」と言われることはないでしょう。
ですが、著者の場合、先延ばしすることで最高の仕事ができています。
著者はこれを「生産的先延ばし」と呼んでいます。
この「生産的先延ばし」については、スタンフォード大学哲学科名誉教授ジョン・ペリー氏から教わりました。
彼は「TODOリスト」の中に負担に感じる難題が1つあると、他の「やらなければならないこと」が輝いて見えることを発見しました。
最も気がかりに感じていること以外のタスク(作業)を「休憩(ブレーク)」と位置づけ、やるべきことを終わらせる”絶好のモチベーション”と考えればいいのです。
ストレスを感じがちな著者にとって、この考え方はとても参考になりました。
この考え方がなければ、やるべきことを先延ばししているという不安が著者を支配していたかもしれません。
「生産的先延ばし」は、億劫な気持ちを力に変えてくれました。
現行の章の構成に迷うと、講義内容を考えるのがご褒美に感じられます。
講演するのが不安になったときは、ダンスの新しい振り付けを考えるのが、至福の時間になります。
この原稿を書く過程でも、「生産的先延ばし」を活用しました。
執筆にとりかかろうかと考え始めた時、それをする代わりに、心理学講義で使う教材を作り終え、2つの講演のための飛行機を予約し、本の最初の章を考えました。
この原稿を書き終える今は、明日の出張の荷造りを先延ばししています。
以前は「生産的先延ばし」に罪悪感を感じていました。
本当に成功する人は物事を先延ばしにしたり、時間を無駄にはしないと信じていたからです。
成功する人は合理的で、きちんと練られた計画に従って淡々とことを終わらせるのだと。
そうした働き方をしている人もいるかもしれませんが、著者の性には会いません。
先延ばしが、著者の効率を上げるのです。
その時まさに取り組まなければならないことを先延ばししている最中に、最高のアイデアが出たり、素晴らしいプロジェクトが浮かんだりします。
「生産的先延ばし」は、仕事のプロセルの重要な要素だと信じることを学びました。
「生産的先延ばし」が著者に会うのは、「やるべきこと」が「やりたいこと」に代わるからです。
”生産的”に先延ばしすれば、「不安な気持ち」を取り除こう、鎮めよう、と格闘するよりも、よっぽど時間を無駄にしません。
この方法が、すべての人に有効だとは思わない、と著者は言います。
この方法は、著者個人の特徴・癖を生かしてくれるからこそ、効果があります。
実は著者は時間の管理より、性格の管理をしています。
紹介したいくつかの方法を試そうという気になった方もいれば、とんでもなく悲惨な方法だと考える方もいるでしょう。
このレッスンで一番伝えたいことは、「あなた自身がどう働き、何がモチベーションになるのか」を知る、つまり自分を知るということです。
自分を知る方法に正解はないのです。
まずは、自分自身が時間と労力をどう管理しているか、把握してください。
「うまくいくべき」と思う手法を試すのではなく、「どうしたら本当にうまくいくか」を見つけることに集中してください。
あなたに合わない”生産性向上モデル”を自分に押し付けていないか、自分を見つめてください。
例えば著者は、もともときっちりした性格ではありません。
書類の山やごちゃごちゃした机は、逆に著者をやる気にさせてくれます。
だからオフィスをきれいに保つことや、ファイル整理をする時間をとることをやめました。
でも、もしあなたが「整理整頓された環境だと、やる気が出る」ならば、どうでしょうか。
整頓がモチベーションを高めることでしょう。
著者は仕事とプライベートの境界線をはっきり引かないのが好きな人間です。
仕事上のプロジェクトのためにプライベートの時間を費やしても、かまいません。
しかし、あなたは仕事とプライベートの線引きをしたいと考える人かもしれません。
あなたがそうならば、その日に成し遂げたことと明日すべきことを考える「今日はこれで終わり」という儀式を行うと、プライベートに仕事を持ち込まずに済むかもしれません。
私たちは、皆それぞれ違います。
あなたのスタイルに合ったやり方をいろいろ試して見つけてください。
手に負えないほど忙しいスケジュールであったとしても、自分の仕事のスタイルや癖を見極める機会をつくってください。
「その日のTODOリストをすべて完璧にこなしたかどうか」で自分を評価するのではなく、「TODOリストが自分の人生を反映しているか」「自分が貢献したいことを反映したTODOリストかどうか」で評価してみてください。
時間管理のルール まとめ
ルール①
なんでも完璧にやろうとしない
具体的な行動
→「何かをやり遂げるためにはこうあらねばならない」という杓子定規なやり方を見直す
→何かをするときに計画に縛られ、追われるようにやる必要はない
→整理整頓されていなくても、よしとする
ルール②
時間管理をするのではなく、自分の性格や癖を管理する
具体的な行動
→自分自身が時間と労力をどう管理しているのか把握する
→働くうえで何がモチベーションになっているか把握する
→自分らしく仕事をすることを、自分に許す
→「自分の仕事のスタイル」を見極める
→「仕事を受けすぎる」なら、その性格を肯定する
→TODOリストが自分の生き方を反映しているか、振り返ってみる
ルール③
「生産的先延ばし」を実行すること
・・・最も気がかりに感じていること以外を、仕事の「休憩(ブレーク)」と位置づけ、やるべきことを終わらせる”絶好のモチベーション”と考える。
具体的な行動
→最も重要と思う仕事を後回しにして、他の仕事を済ませる
→「成功する人が、寝られた計画に従ってことを終わらせる人ばかりでない」と知る
つい、「片づけなくっちゃ!」とか、「やらなければならないことを、まず頑張らなくちゃ!」と自分にプレッシャーをかけ、それと戦いながらぐったりしつつ仕事をしてしまいます。
疲れ果て、本来の意味を見失ったり・・・。
その「TODOリスト」を味方につけることもできるんですね。
今日も、お疲れさまでした。
4月は気ぜわし季節。
ゆっくりする時間もとって、あなたを大切にしてくださいね。
では、また。