多くの場合、プレッシャーのある場面では「リラックス、リラックス!」と自分に言い聞かせていませんか?
実は、本当はその逆であり、なぜそうなのかと言う理由も解き明かされています。
アスリートも、ストレスを前向きにとらえることで自身が強まったりパフォーマンスが向上します。
また、不安を受け入れると、困難にうまく対処できるようになり、身体の反応までもが、典型的な「恐怖反応」から「勇気を生み出す反応」へと変化するのです。
抵抗を止めれば、ストレスはパワーの源になる
不安を受け入れると、さらに「脅威」を「チャンス」に変える方法や、「麻痺状態」から「行動」へと切り替える方法も見えてきます。
何をすべきか、どうすべきかもわからずに、うまく対処する地震などないときでも、ストレスを受け入れれば、あきらめずにがんばる力が湧いてきます。
緊張する場面では、「リラックス」より「ストレス」がいい
ロチェスター大学の心理学教授、ジェレミー・ジャイミソンは、学生の頃、アメリカンフットボールの選手でした。
彼は選手生活の中で、ふと興味を持ったことがありました。
チームメイトたちは試合前のストレス状態を、「気合が入っている」とか「ワクワクしている」と表現していました。
わざとアドレナリンを増やして、パフォーマンスを向上させているのでした。
学生たちは試験前にも、ある意味では同じような興奮状態になります。
ところがチームメイトたちは、アメフトの試合前とは打って変わって、「緊張する」とか「不安だ」とか「プレッシャーで辛い」などと言っていました。
同じことなのに、なぜだろう?
ジェイミソンは不思議に思いました。
チームメイトはどちらの場合もストレスを感じて、「がんばらなければ」と思っていました。
しかしなぜ、フィールドのストレスはプラスになると思っているのに、試験前のストレスはマイナスになると思ってしまうのでしょうか?
ジャイミソンは大学院で、人々がパフォーマンスの前に緊張を恐れるのは、ストレスに対するネガティブな思い込みのせいなのではないか、と考えるようになりました。
「ストれ者害になる」と思い込むと、実際には多くの場合、ストレス反応がわたしたちの役に立っている事実を見過ごしてしまいます。
落ち着いた方がうまくいきそうなときでも、じつは気合を入れた方が、プレッシャーに負けずに実力を発揮できるのです。
中学校、高校、大学で実験を行ったところ、テスト中にアドレナリンの量が急増した学生たちの方が、落ち着いてテストを受けた学生たちよりも、成績が良かったことがわかりました。
アメリカ陸軍特殊部隊でも、レンジャー部隊でも、アメリカ海兵隊でも、尋問中にストレスホルモンのコルチゾールの分泌量が最も多かった兵士たちは、敵に有用な情報を漏らす確率が低いことが分かってきました。
さらに連邦警察官の場合、人質交渉の訓練中に心拍数の増加が最も大きかった警察官たちは、人質を誤射する確率が低いことが分かりました。
ジェイミソンは、ストレスをうまく利用して実力を発揮できるのではないかと仮説を立てました。
不安な人ほどテストの点数が高くなる
ジェイミソンは試験を受ける学生たちの唾液中のストレスホルモンの量とテストの点数の関連性を調べました。
学生たちには、テスト前に緊張することは、パフォーマンスを上げるために有効であるという次のようなマインドセット介入を行いました。
「多くの人々はテストを受けるとき、不安になったら失敗してしまうと思っています。
ところが最近の研究によって、ストレスを感じるとテストの結果が悪くなるどころか、むしろ良くなることがわかっています。
試験中に不安を感じている人の方が、成績が良いくらいです。
ですから、今日の試験中にもし不安な気持ちになっても心配する必要はありません。
もし不安になっているのに気づいたら、
『ストレスのおかげで上手くいきそうだ』
と思えばいいのです」。
このメッセージによって、学生たちの成績は大きく口授しました。
介入メッセージで励まされたグループの学生は、介入メッセージを受けなかったグループの学生よりも、高得点だったのです。
ここで疑問に思ったのが、介入メッセージによって「安心感」を得られたから、テストの点数が高かったのではないかと言うこと。
その可能性を検証するため、ジェイミソンは模擬テストのあとに2回目の唾液サンプルを学生たちから回収しました。
心が落ち着いたのであれば、唾液中のストレスホルモンの数値が、テスト前より下がっているはずです。
しかし、ストレスホルモンの数値は、テスト前より上がっていました。
さらに、介入メッセージを受けて試験を受けた学生たちに、その3か月後にアンケート調査を行いました。
すると、介入メッセージを受けていない学生に比べて、介入メッセージを受けた学生たちは、不安を感じてもあまり心配しないようになりました。
「自分ならちゃんとやれる」という自信を持ち、「不安な方がかえって実力を発揮できるはずだ」と信じていました。
そして、両グループの差は模擬テストにくらべて、さらに成績の差が広がっていたのでした。
不安は興奮のしるし
さらに、不安をポジティブにとらえると、仕事がきつくてもバーンアウトしないようになります。
ドイツのヤーコプス大学の研究では、中堅の教員と医師を対象に1年間の追跡調査を行い、不安に対してどう向き合ったかによって、職場での健康状態について、どのような影響が現れるかを調べました。
まず1年の調査機関の初めに、教員と医師たちには、不安についての考え方を尋ね鵜質問に回答させました。
「不安は役に立つものであり、不安があった方が、エネルギーとかやる気が湧いてくると思いますか?
それとも不安は悪いものだと思いますか?」
そして、1年後に結果を調べたところ、「不安は役立つ」と答えた人たちの場合は、バーンアウトに陥ったり、挫折したり、疲れ切ったりした人が少ないことが分かりました。
ポジティブな考え方がもたらす効果がもっとも顕著に表れたのは、やはりもっとも不安の大きかった人たちでした。
「不安は役に立つ」と思うことで、バーンアウトしないで済んだのです。
あなたも不安を「興奮」「エネルギー」「やる気」の表れだと思うことで、実力を最大限に発揮することが出来るのです。
すぐにてんぱってしまうワタシなのですが、
「よっしゃー、ナイス緊張!」
とばかりに、ストレスを楽しむ習慣を作ってみようと思いました。
今日もお疲れさまでした。
ゆっくり休んでくださいね。
では、また。