心の中がごちゃごちゃで自分を見失うことがありませんか?
精神科医である著者は、ストレスが多い今、頭の中でストレスがモンスター化してついには心を壊しかねない人がたくさんいるといいます。
わたしたちは自分に合った「心のトリセツ」を見つけることが、今とても大切です。
そんなヒントになることをたくさんの項目で紹介されている本書。
日々のなかでやってしまっている”わるい癖”が細かく説明されています。
ちょい専門的ですが、修正するきっかけにできそうです。
「自動的に」頭をよぎる考えを鵜呑みにしない
「異動願いを出そうかと思っているんです」
という女性の相談を著者は受けました。
経験豊富で面倒見がいい彼女は、若い後輩から頼りにされているようだったので、ちょっと驚きました。
「なにか嫌なことでもあったの?」
と聞くと、言いにくそうに
「この前、得意先へのメールで大失敗してしまったんです。
普段から後輩に、『メールのミスは絶対しちゃだめ。しっかり確認して』と厳しく言っていたのに。
きっと、後輩たちも私のことを『自分ができないことをほかの人に押し付けている』と思っているし、いままでの努力がすべて無になった気がします。
だから、部署を異動して心機一転したほうがいいかと思って・・・」
著者は彼女が自動思考の罠にとらわれているだけだと思いました。
自動思考とは、人がそれぞれ持っている「考え方のクセ」です。
たとえば些細なことでもうまくいかないと、何の疑いもなく「これからもなにをあってもうまくいくはずがない」と投げやりに考えてしまう人がいます。
一度くらいのミスで評価がゼロになるわけがありません。
しかし、彼女は自分がミスをしたことが許せず、周囲の評価を失ったと考えています。
しかし、自動思考には、誤った結論を導き出してしまうケースが珍しくないのです。
この女性のように、「すべてが完璧でないと意味がなく、存在意義はゼロになってしまう」という自動思考を「白黒思考」と呼びます。
誤った自動思考はこれも含め11パターンあるとされています。
たとえば、一生懸命頑張って、仕事の成果を上げた人がいます。
周囲も「よかったね」とほめたり、「自信をもって、その調子でがんばって」などと励ましているのに、本人は「まぐれに違いない。基本的に私は運が悪いから」と、まるで失敗した人のような面持ちでいたりします。
これは、「マイナス化思考」と呼ばれるもので、謙遜を通り越し、自己卑下としかい
いようがありません。
また、会社の業務で「やってみなければわからない」ものもあります。ところが、何の根拠もないのに、「きっとダメだ」と決めつけて、チャレンジしないというビジネスパーソンを観たことがありませんか?
これは「先読み的思考」と呼ばれるもので、たしかに失敗はしませんが、発展もしません。
双かと思えば、重大な問題が起きているのに、「たいしたことではない」と決めつけて、正しい対応をしない「過小評価的思考」の持ち主がいたり、その逆に些細なことにすべてが影響されると決めつける「拡大解釈思考」の人もいます。
たとえば、話題の映画に誘ったのに、「共演している俳優の〇〇が嫌いだから行かない」と、一見合理的に見えてもただ感情で判断しているという「感情決めつけ思考」というものもあります。
どうでしょう?
ワタシは「拡大解釈思考」のせいで目下悩んでいることに、今気づきました・・・・。
著者が言うには、「自動思考は考え方のクセ」で、だれもが 持っているものだそうです。
ほどほどの妥協が大切なはずだと言います。
自然と浮かぶネガティブな考えは、「軌道修正」できる
ひとは自然とネガティブな方向に考えるようにできています。
自動思考パターンといって、自然と思いつくからといって正しいわけではなく、しかもこの自然と浮かんだネガティブな思考パターンが誤りであることに気づかないケースがとても多いそうです。
「自然と浮かぶ思考が暗いのだから、自分は直しようがない」
と思う人がほとんどなのだとか。
しかし、絶対治せないものではないそうです。
だいたい、「直せそうもない」「無理だ」と断定的に考えることも、「一般化思考」という自動思考パターンにとらわれている証拠です。
医者として
「それも自動思考パターンのひとつですよ。もっと柔軟に考えてみましょうよ」
とアドバイスすると「ハッ」とした顔をして頭をかいたりするそうです。
このような指摘をあえてするのは、自分がどのような自動思考パターンにとらわれているかを理解することが大切だからだそうです。
「あ、これが自分の自動思考パターンだ!」
と理解するたびに、
「この考え方を少しずつ直していこう」
と思うことができます。それだけでも、自動思考は改善するそうです。
このように自分の考え方を知ることから始める治療を「認知行動療法」といいます。
本来は専門家の協力を受けながら進める必要があるそうですが、ある程度までは自分でもできるそうで、その方法が紹介されています。
①自分がとらわれている自動思考パターンに気づく
いままでのことを振り返り、自分がどんな自動思考パターンをもっているかを明らかにしていきます。
②自動思考パターンが導いた結果を知る
自分が問題だと考えるパターンがわかったら、それによって「どんな感情が引き起こされたか」「どのような問題が起きたか」を考えます。
③自動思考パターンの影響を知る
自分がとらわれている自動思考パターンが、自分の気持ちや行動にどんな影響を与えているかを考えてみましょう。
④自動思考パターンのクセを知る
自分がとらわれている自動思考パターンが、どんな状況で発生し、そのとき、どんな気持ちになりがちかを考えてみましょう。
⑤自動思考パターンのズレを修正する
自動思考パタンで生まれる考え方や、気持ち、行動が、現実的なものとどれくらいズレているかを確かめ、考え方を柔らかくして現実に近づけていきましょう。
後日、著者は前項の人事異動を考えていた女性を呼び出しました。
「みんなはあなたが考えているほど、失敗を深刻に受け止めていないものだよ。
勇気を出して聞いてみるといいよ」
とアドバイスしました。
また、「あなたは自動思考パターンにとらわれていると思うので、勉強してみてはどうかな?」と伝えました。
その後、彼女が「頼りになる先輩」として、以前にもまして活躍していると聞いたそうです。
「心を縛る正体」に気づいた瞬間、ゆるまっていく
誰でも得手不得手はあります。
たとえば、料理だったり、車の運転だったり、カラオケだったり・・・。
学校の勉強であれば、親や先生から励まされますが、克服するのは大変です。
著者の知人に「犬が苦手」と言う人がいます。
聞いてみると、幼いころ大きな犬にほえられて、以来怖くて仕方にとのこと。
「どうやらそれがトラウマになっていて、犬が好きになれないのだろう」
と、自己分析していました。
また、大学を優秀な成績で卒業し、周囲から「さすがだね」と言われているような企業にも就職し、仕事で高い評価を得ているにもかかわらず、「自分に全く自信が持てない」と悩んでいる人がいました。
カウンセラーが本人との面談を通して、その原因を調べたところ、幼いころ、ある人から「お前は大した人間に言われたことがトラウマとなり、勉強も仕事も、人なみどころではない、きわめて優秀であるのに、まったく自信が持てずにいたそうです。
「幼少期に体験したことが、現在の自分に影響を及ぼしている」と思うことは少なくないでしょう。
いいことも悪いことも含めて「自己定義」のことを認知心理学では「スキーマ」と呼びます。
中でも幼少期に形成されて好ましくない反応を起こすスキーマを「早期不適応的スキーマ」といい、18種類あります。
病気ではありませんが、時としてそれが妙なこだわりや苦手意識になるケースもあるわけです。
たとえば、弟や妹の世話をして「いい子ねぇ」とほめられたことから、幼稚園や小学校でも年下に優しくしてあげるようになり、社会人になっても後輩指導に熱心という人もいるでしょう。
もちろんとてもいい人ですが、「自己犠牲スキーマ」の可能性もあります。
典型的な例として「見捨てられスキーマ」があります。
人は私をすぐ見捨てるという考えをしてしまい、人と親密になるのを避ける傾向にあります。
「親からほったらかしにされた幼い子」、いわゆるネグレクトの環境にあった人が抱えそうなスキーマです。
先ほどの「優秀なのに自信が持てない人」は、マイナス思考が強い「否定・悲観スキーマ」の一例と言えるかもしれません。
反対に、なんの実績もないのに自信満々の「俺様キャラ」だったり「女王様気取り」という人もいますね。「尊大スキーマ」と呼ばれるもので、根拠もなく「自分は特別な存在だ」と信じています。
「自分は失敗ばかりしてしまうのではないか」という強い不安を抱える「失敗スキーマ」があります。
周囲が結婚話で盛り上がると「自分は誰にも愛されず、理解されない」と考えてそれがひどくなると「情緒はく奪スキーマ」に陥りかねません。
人はそれぞれで、結婚は=幸福とは限りませんよね。
このように、さまざまなスキーマがありますが、車の運転が苦手でも違反や事故もなく安全運転すればいいだけですし、カラオケでうまく歌えなくても人に迷惑はかけません。
妙なこだわりや苦手意識は、植え付けられた早期不適応スキーマであるケースがほとんど。
深刻に悩む必要はないのです。
今週もお疲れさまでした〜
ゆっくり休んでくださいね。
では、また。