私たちが注意すべきワナは、たくさんあります。
私たちは、何か欲しいものが出てくると、あれこれもっともらしい理由をつけて、楽しもうとします。
週末にスーパーのへ買い物に来ているとき。
冷凍食品売り場で、何やら試食を出しています。
トレーに乗った試食用のサンプルを差し出す女の子。
キラキラした後光を浴びて、出してくるトレー。
「おひとつどうぞ」と差し出す女の子が、天使に見えます。
後光効果が「罪」を「美徳」に見せかける
思わず食欲をそそられますが、そのトレーに乗ったミニサイズのホットドッグを見た時、飽和脂肪とコレステロールのことが頭に浮かびます。
ホットドッグなんて、ダイエットにはよくないに決まっているけれど、こんな天使のいうことなら、聞いたっていいでしょう?
一口だけなら、きっと・・・。
こうしてあなたは、後光(ハロー)効果にはまってしまいます。
人は誘惑に対して「イエス」と言うための理由を無理やり探してしまいます。
同じように、パッケージに「脂肪分0!!」と書いてあれば、中身はしっとりふわふわのチョコレートクッキーでも、手が出てしまったり。
最近の研究では、そうした”魔法の言葉”が新しくリニューアルしています。
「オーガニック」という表示のついたオレオクッキーは、ふつうのオレオよりもカロリーが低い気がして、毎日食べても大丈夫だと思ってしまうらしいのです。
マイクロスコープ:誘惑の「キーワード」を見つける
自分の好きなもののいい面にだけに注目して、買いすぎてしまうことがありませんか?
あなたがつい惑わされてしまうキャッチフレーズに気を付けてみましょう。
「1点買えば、もう1点無料」
「天然100%」
「フェアトレード」
「オーガニック」
「チャリティー」
など。
今週は、「魔法の言葉」が目標の邪魔をしていないか、注目してみましょう。
エコ活動が・・・罪悪感を鈍らせる?
「小さなことから地球を救おう」と、節電タイプの電球を変えようとか、買い物にはエコバッグを持参しようとか、さまざまな呼びかけが行われています。
そのような行為自体は、環境にとって良いことです!
けれども、私たちは環境にやさしい買い物をしたことによって気が大きくなりがちであることが、研究でもわかっています。
環境にやさしい小さな活動が、消費者や企業の罪悪感を鈍らせてしまい、かえって害をもたらす行為につながることを懸念している研究者もいます。
罪悪感や心配がなくなると、私たちは無駄を見落としがち。
エコバックを持参したせいで、ついいらないものまで買ってしまったり、木を1本プレゼントするのだからとせっせと旅行にいそしんだり、節電タイプの電球を使うのだからと、電気を大量消費する住宅に住みたくなったりしがちなのです。
罰則を作るとルール破りがしたくなる?
メルボルン大学の経済学者らの発見によると、人々が悪い行いに対し”罪滅ぼし”のためにお金を払うと、ラインセンシング効果が最も生じやすくなります。
たとえば、家庭の電力消費によって、二酸化炭素が発生する罪滅ぼしに、気を1本植えるための費用として2、5ドル負担するなど。
すると、環境に悪いことをしているという意識が薄れ、その結果さらにエネルギーを消費しても構わないと思いがちになります。
そのほか、ペナルティ制度に関しても同じ傾向が見られます。
たとえば、保育園で子供のお迎え時刻に遅れた保護者に、チャージを請求することにしたところ、かえってお迎えに遅れる保護者の数が増えました。
保護者は時間に遅れる権利をお金で買ったつもりになり、遅れても悪いと感じなくなったのでした。
だいたい、少しくらい余計にお金を払っても楽をしたいと思うのが人情ですから、こういう方法では誰かにツケが回ってしまうでしょう。
ところが、人々が環境に悪いものをやめて環境に良いものを手に入れるためにお金を支払うとき、例えば自然エネルギーを使用するために電気代を10%多く払うなど、というとき、私たちはライセンシング効果はまったく見られません。
そういったエコ活動は、環境に対する消費者の意識をさらに高めるため、環境に悪いことをすることに対して鈍感になったりはしないわけです。
私たちは、正しいことをしたいと自ら望む人間だと感じる必要があります。
モラル・ラインセンシングがもたらすのは、つまるところアイデンティティの機器です。
本当の自分は悪いことをしたい人間だと考えていると、よいことをした自分い対して「ごほうび」をあげたくなります。
そういう考え方では、自制心を発揮することは「罰則」のようになり、自分を甘やかすことが「ごほうび」になってしまうのです。
でも、それではあまりにも情けなさすぎます。
モラル・ライセンシングのワナにはまらないようにするには、「ありのままの自分が最高の自分になることを望んでいる」のだと、そして「自分自身の価値観に従って生きていきたい」のだと、しっかり自覚する必要があります。
そのように思えば、衝動的で怠け者で誘惑に負けやすい自分を”ほんとうの”自分だなどと思わなくなります。
ごほうびにつられ、騙されるようにして無理やり目標を追いかけ、なんの努力もしていないのに「ごほうび」をもらって喜ぶようなまねはしなくなります。
4章の最後に
自己コントロールを求めるあまり、意志力の問題をなんでも善悪で考えるのはまちがいです。
私たちは良いことをしたり考えたりしただけで、すぐに自分をよい人間だと思ってしまい、挫折しても正当化するのがうますぎるからです。
自分が本当に望んでいることを忘れ、物事をただ善し悪しで判断していると、抑えるべき欲求が強くなって、自滅的な行動をしてしまいます。
軸がぶれないようにするには、目標に自分を重ね合わせ、よいことをしてもハロー効果で目がくらまないようにすることが重要です。
自分の言い訳に気づくこと。
「あとで取り返せる」と言い訳したら、それに気づくこと。
あなたを誘惑するキーワードを発見することが大切です。
そして、良いことをしたら自分を甘やかしても構わないと思う瞬間を見つけられたら、「ちょっとおちついて、ご褒美に値するかではなく、自分は「なぜ」よいことをしたのか、考えてみること。
意志力のチャレンジにおいて、日によって目標をかなえるための行動にばらつきが出てしまうなら、「明日も同じ行動をする」と決めてみるのも、実に効果的です。
朝の体重測定で前日よりも減っていたりすると、ワタシは高い確率でにオヤツに手が伸びます(恥)。
今日はその瞬間に「なぜ」身体を絞りたいのか、ちょっと考えてみました。
仕事するにも、気持ちよく働きたい。
毎日の洋服選びを、もっと楽しくしたい。
自分の人生を、自分でデザインできるという自信を持ちたい。
そんなことを思い出したら、いつも始まる「オヤツとの闘い」が消え去りました。
結構有効な手段のようです。
自分自身を「怠け者の、快楽主義者」と捉えていることにも問題があることを知ることができました。
「ありのままの自分が最高の自分になることを望んでいる」のだと、しっかり自覚すると、確かに「ごほうび!ごほうび!」とねだる自分がとても小さくなる感覚があります。
今日もお疲れさまでした。
すてきな夢が見られますように。
では、また。