誰でもまちがいを犯したり、失敗したりします。
でも、そのあとどう対処するかのほうが、まちがえたり失敗したりすることよりもはるかに重要です。
そこで、失敗しても自分にもっと思いやりをもって接することができるよう、心理学者が用いるエクササイズが紹介されています。
意志力の実験:失敗した自分を許す
研究結果が示している通り、自分に対して思いやりを持つことで罪悪感が和らぎ、自分自身に対する責任感が増します。
これは、意志力のチャレンジで失敗しても、気を取り直してがんばるには、望ましいことです。
では、あなたが負けた、あるいはやるべきことを先延ばしにした時のことを具体的に1つ思い出し、そのときの失敗について以下の3つの方法で考えてみてください。
失敗したときには、次のような方法を思い出すことで、罪悪感や恥の意識にさいなまされた挙句失敗を繰り返すという負のスパイラルに陥らないようにしましょう。
①どんな気持ちがしますか?
その失敗を思い出しながら、どんな気持ちがするか言葉にしてみましょう。
胸の中にどんな思いがありますか?
体はどのように反応していますか?
その失敗の直後、どのように感じたかを思い出せますか?
どんな感じがしたでしょう?
自己批判の気持ちはありますか?
もしあるとしたら、どんな言葉で自分を批判しているでしょうか?
このように落ち着いて考えていけば、逃げたりせずに自分の心の中を見つめられるようになります。
②人間だもの
意志力のチャレンジでは、誰でももがき苦しんだり、理性を失ってしまったりすることがあります。
でも、それだって人間ならば当たり前のことで、とくに自分自身に問題があるせいではありません。
よく考えれば、その通りだと思いませんか?
あなたが尊敬する人や好きな人で、同じように苦しんだり失敗した経験のある人はいないでしょうか?
そんな風に考えれば、自分を批判して自信を無くすようなことが減るかもしれません。
③友達には、どんな言葉をかけますか?
親しい友達が同じような失敗をしたら、どんな言葉をかけてあげたいか考えてみましょう。
どんなことを言って元気づけたいと思いますか?
友達が失敗にめげずに目標に向かって進んでいけるように、あなたならどうやって励ましますか?
このように考えれば、気を取り直して、また頑張ることができるでしょう。
「変わろうと思う」だけで満足してしまう
これまで、落ち込んでいるときは誘惑に負けやすい例をいろいろ見てきました。
ストレスによって欲求が生じると、私たちの脳はいつにも増して誘惑にかられやすくなります。
いつか自分は死ぬということを考えた時には、気休めに何かを食べたり、買い物したり、タバコを吸いたくなったりします。
罪悪感を抱いたり自己批判をしたりすれば、たちまち「もういいや、もっと楽しんじゃえ」と心がつぶやきます。
ところが、同じように落ち込んだ時でも、私たちはまったくちがう態度に出ることああります。
たちどころに晴れやかな気分になれる手段は、「自分は変わるんだ」と決心することです。
希望に満たされ、目標が大きいほど、期待も大きくなります。
そのため、変わろうと決心するとき、やたらと大きな目標を掲げたくなります。
壮大な目標を掲げると気分はさらに良くなるからです。
しかし、残念ながら、そのような期待をしても、報酬への期待や息抜き作戦と同じで、思ったような成果は得られません。
変わろうとする決心は、目先の欲求を満足させるには効果的ですが、それで挫折しそうになると、変わろうとしたときの興奮はすっかり消え失せ、失望と不満でいっぱいになります。
この時点で多くの人は、努力をやめてしまうのです。
けれどふたたび途方に暮れ、わらにもすがりたい気持ちになると、また誓おうとする・・・同じことの繰り返しです。
「いつわりの希望シンドローム」が引き起こす快楽
こうした気分を変えるための目標をを、ポリヴィとハーマンは「偽りの希望シンドローム」と名付けました。
これは「自分を変える戦略」としてはうまくいきません。
これは「気晴らしのための戦略」であり、このふたつは同じものではないのです。
決心する瞬間は、期待感を味わうことができて、一番楽しい時です。
でも、そのあとは、自制心を発揮し、ときに我慢し、やりたくないことをやらなければならないのです。
そうなると、期待感だけ存分に味わい、そのあとの大変なことから逃げてしまうと、ずっと楽しくて楽です。
だから人は、「かんたんに目標をあきらめては、また決心する」ということを繰り返してしまいます。
自分を変えるために必要なモチベーションは、かえって目標を妨げるような非現実的な楽観主義とは異なるものです。
マイクロスコープ:「決心するだけ」を楽しんでいないか、チェックする
自分を変えることに対する、あなたのモチベーションや機体について考えてみましょう。
変わりたいと思うのは、気分が落ち込んでいる時だけでしょうか?
自分の行動を変えるための具体的な努力をするよりも、みごとに変わった自分の姿を想像して終わっていないか、チェックしましょう。
意志力の実験:決意を持続させるためのシュミレーション
楽観的になるとやる気が出ますが、ほんの少し悲観的になれば成功に役立ちます。
あなたの意志力のチャレンジについて考えてみてください。
もっとも誘惑に負けやすいのはどんな時でしょうか?
目標のことを忘れそうになってしまうのはどんな時でしょうか?
やるべきことを先延ばしにするとき、自分に向かってどんな言い訳をしているでしょうか?
答えが頭に浮かんで来たら、こんどは実際に自分がそんな状況に陥ったところを想像してみましょう。
何を感じ、どんなことを思うでしょうか?
失敗するまでの様子をまざまざと思い描きます。
そうしたら、こんどはその想像上の失敗を成功に変えましょう。
自分の決意を守るためにはどんな行動をとればよいか、具体的に考えます。
モチベーションを思い出すのもよいでしょう。
友達に手を貸してもらったり、これまでに学んだ方法を試してみたりするのもよいかもしれません。
もし試してみたい方法があるのなら、実際にやったところを想像してみましょう。
どんな感じがするか、頭の中ではっきり思い描きます。
うまくいった様子を想像しましょう。
成功した姿を思い描くことによって、目標を達成するために必要なことを着実にやっていく自信が生まれます。
このように、失敗に備えるのは自信がないからではなく、ある意味では自分に対する思いやりです。
たとえ意志力の問題で失敗が起きたとしても、準備していたことを実行に移せばよいのですから。
つい失敗すると、「反省が足りない!!」とばかりに自分を責めてしまいがち。
でも、まず失敗した自分を許していくことで、かえってエネルギーがわいてきて、失敗と正面で向き合うことができるようです。
それから、決意を持続させるには、ほんのちょっとの悲観的思考を使ってシュミレーションをすること。
明日は、チンパンジーと優秀な学生が我慢比べをして、チンパンジーが勝った実験と、そこから分かったことを学びます。
今日もお疲れさまでした。
素敵な夢を。
では、また。