先週もご紹介した本書ですが、さらにご紹介したい内容がまだあったので、さらに続きを。
4月という年度初めには、何かと人に説明をする機会があるもの。
自分の企画に多くの賛同が欲しいのですが、この時期はたくさんの話に埋もれがちです。
そこで、「人に共感してもらう話し方」のポイントを抑えて、短い時間であなたの企画しているものの魅力を強くアピールできたら、4月からのスタートにさらにスピード感が出ますね。
相手の心をがっちり掴む手段としては、最近は「教官」型ではなく「共感」型であることが大切だといわれています。
かのトランプ大統領も「WE(私たち)」という言葉を織り交ぜながら、良くも悪くも支持者をがっちり鷲掴みにしていますよね。
「共感力」をもった話し方
どうすれば、自分も人のために尽くすことができるか。
これこそ、人生において何よりも大切で、最も大きな問いだ。
~アップルのティム・クックCEO MITの卒業式でのメッセージ
リーダーシップ人材に求められているのは、今は「共感力」です。
このスタンスで相手が話をしてきたら、私たちは真剣になって話を聞きたくなるのではないでしょうか?
「ストーリー」マジックで、相手の心をくぎ付けにする
海外のエリートたちは、みな一流の「ストーリーテラー」だそうです。
中でも著者が最もインパクトを感じたのは、なんといっても日本電産の永森重信会長。
いまでも著者が覚えているのは、彼の幼少期の話。
貧乏で、食べるものにも不自由する生活だった。
ある日、同級生の家に行ったら、見たこともない食べ物を出された。
それがステーキとチーズケーキというもんだった。
衝撃的においしすぎて、「こんなうまいもんが世の中にあるのか」と驚いた。
そこの親はどんな職業なのかと聞いたら「社長だ」と言われた。
だから、社長をめざした。
会長とそのあと、著者は何回か仕事で会いましたが、周りの空気を換えてしまう気迫とエネルギーに圧倒される人だそうです。
孫正義さんも、幼少期や起業時の話をするそうです。
彼をバカにする社員はひとりもいない、と称される共感系リーダーとしても知られています。
10歳まで電話もありませんでしたし、大学院に入るまで、コンピューターにアクセスすることもままなりませんでした。
父は、私のスタンフォード大学院への渡航費に、年収分のお金をはたきました。
そのとき、私は初めて飛行機に乗ったのです。
アメリカでの生活は苦労の連続。バックパックの値段は父の月収と同じでした。
人の集中力は金魚より短い?
私たちは難しい話を聞き続けるのは苦痛ですが、面白い映画やドラマなら、飽きることなく見続けることができるもの。
こうしたヒューマンストーリーは、人間の脳を刺激し、脳内ホルモンを分泌させます。
興奮やドキドキをもたらすアドレナリンや、ほっとさせるオキシトシンなどといったホルモンが活発になります。
感情が刺激されるので、人はその話にくぎ付けになるのです。
ハラハラ・ドキドキを共有すると、距離が縮まるという「吊り橋効果」も生まれます。
人の集中力は、金魚より短い、という説があります。
数秒間話を聞いて、つまらなければ、それ以上聞こうとしないのです。
ストーリーには、利き手の脳をハッキングする効果があるのです。
「丸めない数字」でインパクトを出す
中国の大金持ち、アリババの創業者ジャック・マーさんは、こんな話をしました。
卒業後、30社の就職試験を受けましたが、すべて落ちました。
ケンタッキー・フライドチキンが中国に出店したとき、24人中23人が合格し、私ひとりだけが落ちました。
警察官の募集でも、5人応募して4人が合格、私だけが落とされたのです。
ハーバード大学にも10回挑戦しましたが、結局ダメでした。
「たくさんの」「何回も」とせず、あえて細かい数字を入れることで、粘り強く挑戦し続けてきたことが、より鮮明にイメージできます。
おおまかな数字ではなく、「四捨五入しない正確な数字」を入れることで、話に躍動感が生まれ、説得力が増していきます。
「100万人より1人の顔」の法則
時間や場所、人、モノを絞り込んで伝えることで、あなたの伝えたいことの映像が浮かびやすくなります。
アメリカを大きく巻き込んだ黒人差別問題は、たった一人の男性、ジョージ・フロイドさんの死により、大きなムーブメントとなりました。
シリア難民の問題は深刻ですが、世論はなかなか動きません。
しかし、海岸に打ち上げられた3歳の男の子の溺死体の写真に、世界は震撼しました。
何百万人の人の苦難よりも、たったひとりの悲劇のほうが、人々の心を動かすのです。
「アフリカのマラウイで食糧不足に苦しむ300万人の子どもたちのために」
よりも、
「マリの7歳の少女ロキアのために」
というメッセージのほうが、募金を多く集めたそうです。
顔が見えるか見えないかで、人の想像力や共感力が及ぶかどうかに大きな差が出るということです。
ジャンルを越境し、「免疫のない言葉」でたとえる
ギリシャの哲学者アリストテレスは、「何よりも偉大なのは、メタファー(たとえ)の達人だ」という言葉を残しています。
たったひとつの「たとえ」が、人の考えを大きく左右することが分かっています。
スタンフォード大学の研究では、犯罪を何に例えるかで、人はどんな解決策を重視するかを調べました。
「ウイルス」に例えた場合、更生を重視する解決策を、「獣」にたとえた場合は懲罰的な解決策をとるべきだと考えた人が多かったそうです。
「あふれんばかりのぜい肉をつけた巨大な肥満都市」
「社長だと思ったら中間管理職」
ビジュアルなたとえが上手です。
「これは聞かなきゃ」と思わせる「魔法の言葉」
最も簡単、便利なテクニックです。
話の中で「ここはワタシの言いたいポイントです。絶対聞いてくださいね」と目立つように旗を掲げること。
次の2つで、聞き手はどう違うと思いますか?
A:プレゼンで重要なのは「熱量」です。
B:これだけは絶対に、覚えて帰っていただきたいプレゼンのポイントがあります。
・・・それは「熱量」です。
「間」による「じらし」を活用しましょう。
ほかにも、こんな言葉が「旗」となります。
・たった
・わずか
・いますぐ
・だけ
・に限り
・限定
通販では、これらの言葉が山ほど出てきますよね。
ひとつの言葉、ひとつの数字に計り知れないパワーがあり、これをうまく使うことで、誰でも「説得王」になれるのです。
このポイントを使って、4月はがんばります。
あなたも、良い春を迎えてください。
では、また。