全米最強のスポーツ医局である、スタンフォードスポーツ医局が実践している「最新のリカバリー法」。
そこではこの2つの軸で組み立てられています。
①疲労予防
②疲労回復
これらのメソッドを初めてまとめられたのが、本書です。
年齢を重ねようと、忙しかろうと、ずっと風邪もひかずコロナにもかからず、元気で現役な先輩方が、ワタシの職場にはいっぱいいます。
自分より10年も年上の人が自分よりスタミナがあり、新しいことへのバイタリティーがあるのです。
負けられません。
本当に負けたくないのです。
そこで、本書を読んで実践することにしました。
あなたにとっても、ひとつでもよいものがあったらうれしいです。
全人類に通じるリカバリーアプローチ
どんなアスリートでも「疲労」と無縁に過ごせる人はいません。
特に誰もが忙しく過ごす現代社会においては、みんな疲れています。
しかし、正しいステップを踏めば、疲労は防ぐことができ、疲労回復の効率を上げることはできます。
しかし、何も手を打たなければ確かに疲労はたまっていく一方です。
そして、たまった疲労は、ケガや病気の誘引にもなりかねません。
スタンフォードはスポーツでも名門
「賢い」イメージのスタンフォードですが、「文武両道」というイメージの方がアメリカ人には強い学校です。
2012年のロンドンオリンピックではスタンフォードから40人の学生が出場し、12の金メダルを獲得。
2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、27個のメダルがスタンフォードの学生の胸に輝きました。
アメリカが獲得したメダルの合計は121個という年でした。
全米ナンバーワンチームの「総合的回復力」
そのスタンフォード大学で、著者はスポーツ医局に所属し、医局の方向性とビジョンを決め、23人のスタッフを統括するアスレチックトレーナー、そして東京オリンピックでは水泳チームを専属で担当しています。
アスレチックトレーナーは、大学院を卒業した専門知識を持ち、国家資格として試験にパスして就く重要なポジションです。
アスレチックトレーナーの一番大事な仕事は一言でいうと「予防」。
長いシーズン、選手がケガをしたり、メンタル面での問題を抱えないよう、常にコンディションを整えて万全の状態で試合に送り出すのが役割です。
もちろん、選手のけがの手当て、競技復帰を目指すリハビリ、疲労がたまった選手の体のケアといった「体のメンテナンス」も欠かせません。
超人たちが実践する「再現可能な回復プロセス」
「ケガをしない体を作るには?」
「ケガをしてもすぐ回復するを体を作るには?」
という問いと選手のメンテナンスは、不即不離。
そこでの著者が重視していることは「疲れ」です。
疲れていると、試合に勝てず、実力が発揮できず、ケガや事故につながるからです。
そこで大切なのが「疲れの予防」。
そして、「疲れを早期に解消すること」です。
マインドセット、ハードワーク、リカバリー
そこで大切なトレーニングについての考え方が次の3つです。
①目標を設定して、エビデンスのある知識を収集し、「どうすればそこにたどり着けるのか」知恵を絞る(マインドセット)
②一所懸命に練習や試合をやる(ハードワーク)
③終わったらしっかり回復する(リカバリー)
これがトレーニングの基本であり、本書の基本ともなります。
著者が現場で実感しているのは、「疲れは神経と体の連携が崩れて起きる現象」であること。
疲労は、関節と筋肉の問題だけではありません。
神経にとって大切な酸素吸引、「呼吸」も必要です。
食事を中心とした「栄養学」の知識も欠かせません。
それらをスタンフォードの最新知見として組み立てたのが「回復プログラム」です。
いきなりアスリートレベルを目指す必要はありませんが、あなたの本来持っているパフォーマンスを最大限引き出すことができます。
30歳なら30歳のあなたのベストな体に。
50歳なら50歳のあなたのベストな体に。
睡眠
疲れの原因として明らかなのは、「睡眠不足」。
睡眠不足は脳のパフォーマンスを明らかに落とすこともわかっています。
それは、ほかの書籍でも山のように扱っていることなので、当然のことですね。
とにかく、睡眠を必死になって取りましょう。
「疲れた体」判定が下す4条件チェック
疲労の条件にあてはまっているか、次の4つの項目でチェックしてみましょう。
①「脈」がいつもと違う
一般の人の脈波、1分間に70~80回。
アスリートは正常時に50~60回です。
安静時の自分の脈拍数を知っておくのは有効です。
いつもと脈拍数がちがう、という客観的な数値を持っていることで、休む基準になると思います。
②「いろいろな時間」に寝ている
平日・休日を問わず、寝る時間が不規則だったり起きる時間がまちまちだったりしたら、副交感神経の働きも悪くなります。
オリンピックで活躍するレベルの選手に共通するのは、「休日も、練習日と同じ時間に寝て、同じ時間に起きるよう努める」習慣です。
同時に、「睡眠の乱れは、どんなすぐれたメソッドも台無しにしてしまう恐ろしいものだ」ということを証明しています。
できるだけ、同じサイクルで寝起きしましょう。
③「腰」が痛い
アメリカも日本も「ストレスフル社会」。
反り腰の人は、筋肉がぎゅっと収縮します。
お腹が出ているから腰がそる人もいますが、方が前に出て背中は猫背になります。
腰は「体の要」と書くように、方だけでなく、あらゆる部位のカバーをしています。
腰の痛みは体の複数の部位にダメージが溜まっているケースが多いのです。
④「呼吸する場所」を間違えている
胸だけで浅い呼吸をしていると、2つの点から疲れやすくなります。
第一に、酸素不足による疲れ。
第二に「姿勢のゆがみ」による疲れ。
正しい姿勢を作るには、体の中心(体幹と脊柱)を安定させなければなりません。
体の中心を安定させていないと、手も足も腰も首も、いくら鍛えても疲れます。
AIP呼吸法
そこで推奨しているのが、AIP呼吸法です。
耳と肩のラインをまっすぐにして座り、お腹と太ももを90度に。
両手を行くし介イブにスライドさせて差し込みます。
5秒かけて鼻から目いっぱい息を吸い、差し込んだ指を押し返すように腹圧を赤めます。
5秒かけて吸った空気を5~7秒かけてゆっくりと吐きます。
合計5回繰り返します。
これを練る前に2分間行うことを習慣にすることを著者はすすめています。
寝る前に行うと、横隔膜が動きます。
自律神経が横隔膜に集中しているので、副交感神経が優位になります。
副交感神経が優位になると、「おやすみモード」にしっかり入れるので、朝起きた時に肩こりが軽減されている、という報告もあります。
寝だめをしても疲れはとれない
あらゆる研究で、「疲れた週」の週末に寝だめをすると、余計に疲れることがわかっています。
もともと人類は長生きすると無理が出てくるように体のつくりができている
人間は左右対称に体ができているように見えて、実際はそうではないですね。
横隔膜ひとつ見ても、右側のほうが厚く大きなドーム型をしています。
理由は右側に肝臓が付着しているからです。
肝臓は臓器としてはとても大きいので、横隔膜は右だけ分厚くなります。
左側の横隔膜の下には脾臓がついていて、こぶし1つより小さな大きさです。
左右非対称な臓器をしているので、人類は、そのまま長年放っておけばボディバランスが崩れ、ベストポジションではなくなるのが当然なのです。
だから、手を打たないと誰でも「疲れた体」に近づくのは、当然なのです。
疲労をリセットする「動的リカバリー」メソッド
あなたが仕事で「働きすぎて疲れた日」というのは、よく分析して考えると「あまり体を使っていない日」であることも、往々にしてあると思います。
伸びをしてみて、一瞬楽になっても、疲れそのものを減らすことは難しいと思います。
それは、疲れが「体の変な癖」によるものだからです。
「動かない1日」が疲れを助長する
これは、あなたも体験的にわかるかもしれません。
疲れをとろうと、土曜も日曜も横になってじっと過ごしたにもかかわらず、月曜日にあんまりリカバーされていない。
かえって、外で軽い活動や楽しみをした日の方が、月曜日に元気になっている。
世界的研究者も「動的コンディショニング」を推奨している
ノーベル生理学・医学賞の選考委員である研究者として活躍したアンダース・ハンセン氏によれば、脳(中枢神経)は、そもそも「体を移動させる」ためにできていて、原始時代からその構造はあまり変わっていないそうです。
ヒトの体は動き続けるようにできている。
だから、休日も「ゆっくり走る」「泳ぐ」などのごく軽めの運動を20~30分すると、血行が良くなります。
すると、自律神経やホルモンのバランスも徐々に整い始めます。
「疲れているのに眠れない」のは、ストレスによって覚醒モードの交感神経が優位になっていることも一因です。
そんなときは、ずっと優位になっている交感神経を、軽く汗をかく程度の運動でさらに活発にする。
すると、そのあと、逆にがくっと下がってリラックスモードの副交感神経が優位になります。
すると、自律神経は落ち着きを取り戻し、体も脳も休息モードにスムーズに入ることができるのです。
IAP呼吸法を前後に入れて リセットをさらにかける
疲労に効くとされる「軽い有酸素運動」の前と後に体の「リセット」をかけると、さらい疲労回復を促すことができます。
先ほど紹介したIAP呼吸法を「軽い有酸素運動」の前と後に用いることでそれができます。
「体のずれ」に神経レベルで働きかけ、体の癖をフラットに近づけて行うことができます。
それにより体からの脳に正しい体の位置や動かし方をフィードバックしやすくなりランニングや泳ぐ運動も無理なくできます。
ボディポジションが整う「ビフォーリセット」
ごくかんたんにできるビフォーリセットとして、次の3つが紹介されています。
①前スキップ+その場ジャンプ
スキップしながら前進する「前スキップ」10回。
上に行くイメージで前進しないでその場で行う「その場スキップ」10回。
②重心ジャンピング
床に10mくらいのラインをイメージし、両足をそろえ、そのラインを左右交互にジャンプ。10回程度。
③ヒールアップ・ランニング
ゆっくりと、左右のかかとが10回ずつ交互にお知りにつくように走る
中枢神経と、特に疲労で縮みがちなハムストリングを刺激する。
食事
朝食は「抜かずに食べる」ことが肝心。
しかし、ダッシュで早食いの朝食は血糖値スパイクの原因なので、時間をとること。
朝から疲れないためにも、「朝食の定時」を決めるとよいのです。
発酵食品は優秀な食材。
味噌汁、納豆、ぬか漬けという日本特有のすぐれたメニューはぜひ定番に。
「1日3食」だから疲れているかもしれない
また、必ず「腹八分目」がスタンフォードの鉄則です。
朝食であっても満腹では動きが鈍るのです。
朝だからといって、がっつり食べ過ぎては疲れの元です。
消化に時間がかかり、食後の倦怠感を呼びます。
ただし、”空腹”はさけて
アスリートは「腹八分目」をキープするかわり、とにかく回数を多く食べています。
栄養士厳選のナッツ、穀類、ドライフルーツを固めたシリアルバー。
また、フルーツはうってつけの間食です。
再起動のための「食材」「栄養」「量」
スタンフォードの選手たちのランチは、「タンパク質」と「サラダ」が基本です。
ローストビーフ、チーズ、レタス、トマトを挟んだサンドイッチのような簡単なものをよく食べています。
パンはあまり食べないように言ってあるそうで、出してもらう際はなるべく「ライムギパン」など高繊維質で栄養価が高く、できれば糖質が少ない”茶色いもの”。
疲れない体をつくるための1日の食事は、「タンパク質と炭水化物の割合は、3:1」。
まさに上の牛丼をめざしています。
少なくとも、タンパク質を炭水化物の倍以上の量を食べることを指針としています。
手をかけるほど栄養素が抜ける
アメリカのサラダバーで日本人が驚くことがあります。
あまりにも、野菜が本当に「生のまま」。
日本では当然ゆでるブロッコリーやカリフラワー、マッシュルームも生で出てくるそうです。
実は生の方が、疲労回復のためのビタミンCが豊富です。
ほうれん草も生で食べるそうですが、寝に近い部分は栄養価も高い。
セロリの葉には疲労回復に役立つビタミンB群が豊富。
疲れないアスリートが絶対口にしない「禁断食」
「よくない食べ物を口にすると、疲労感がたまる」これは、著者が肝に銘じていることです。
「疲労回復によい」食事の効果は、あまりすぐには現れません。
しかし、「疲労回復に悪い」食事はすく効果が現れます。
清涼炭酸飲料
スタンフォードのアスリートは、清涼飲料水をまず口にしません。
ペットボトル1本で摂ってよい1日の糖分量を超えてしまうからです。
糖分をとることで、体内のビタミンも失われます。
ビタミンが不足すれば、疲れやすくなります。
ちなみに、レモネードを出す場所でアスリートたちに食事を提供させる場合、2杯目のおかわりはさせないよう、事前に指示するそうです。
エナジードリンク
エナジードリンク1本のカフェイン含有量は100~150mg。
多量に飲んでしまうと、死の危険さえあります。
欧州食品安全機関によると、望ましい1日のカフェイン摂取量hあ「1日400mgまで」。
また、「1回の摂取で200mgを超えない」という基準もあります。
コーヒーだと4,5杯分。
飲みすぎには気を付けた方がよさそうです。
今週もお疲れさまでした。
すてきな週末を。
では、また。