脳は無意識に「他人のしぐさ」をまねします。
あなたのまわりに、すぐ作業に取りかからず先延ばしした挙句、ギリギリになって周りの人の手を煩わせる人はいないでしょうか?
もしもあなたがその人のしぐさや作業の取り組み方を目にしているとしたら、あなたの脳は、それをひそかにまねしようとしています。
どんなに「この人のやり方はひどい」と思っていても、脳は勝手にその人の動作を学び、自分もそうしようとしてしまうのです。
脳は「他人のまねをする」ようにできている
脳には他人の行動を見ただけで、自分がその行動をしているときと同じような状態になる性質があります。
実際に行動するときと同じ部位の活動が多くなるのです。
たとえばテレビでマラソンを見ているだけで、脳はあたかも自分が走っているかのように反応します。
これらの働きを担う神経群は、「ミラーニューロン」と呼ばれています。
たとえば、「ものを握る」というヒトの動作を観察すると、その人の脳内の、握る分野の筋肉が動くというするという結果が得られています。
これらの筋肉はものを握ったときの感覚やどのくらいの力で握るかと言う手の動きをつかさどっている場所です。
自分はものを握っていないのに、脳内では握ったときと同じ状態になるのです。
このように、脳は気づかないうちに周囲の人としぐさや話し方、口グセが似てきます。
ですから、周りに「すぐやらない人」がいれば、それもまた周囲に感染していき、チームや職場全体に「何となく先延ばしする雰囲気」がつくられていくのです。
もちろん、「すぐやる人」がいればそれも感染していくのですが、残念ながら「すぐやらない人」の方が感染力は強いようです。
それは、「すぐやる人」はさっさとその作業を済ませてしまうから。
「すぐやらない人」の方がそれにかかる時間が長くなるため、いやでも「すぐやらない人」が視界に入ってしまう。
それでミラーニューロンが大きく反応してしまうのです。
脳の性質を逆手に取る方法
ミラーニューロンの働きは、一時的なものにとどまりません。
繰り返しますが、脳は「見る」「聞く」「触る」という3つの入り口から情報を得て、体の動きとそれを表現しています。
たとえば脳に損傷を追ってコップがうまくつかめない患者さんがいたとします。
その人に、「コップに手を伸ばして握ってください」と声をかけて「聞く入り口」を刺激しても、手にコップを触らせて「触る入口」を刺激しても、脳が損傷しているために、うまくつかめませんでした。
そこで著者は、横並びになり、実際にコップを握る動作をして、それを見てまねてもらうと、その人はコップを握ることができました。
これを繰り返すうちに、「コップを握って」と声をかけたり、あるいはコップを触らせるだけで、この人は正しく握ることができるようになったのです。
あなたの脳の働きを「優秀な人」に近づける方法
仕事の効率が悪い上司のことが気になってしまうと、その人のやりかたについ目がいってしまいます。
そうしているうちに、私たちの脳は、その仕事の効率の悪い上司のやりかたをまねてしまうのです。
そこでまず1つ目にやってみたいことが、その効率の悪い人が見えないようにすること。
視界を書類で遮ってみたり。
または、その人のデスクのそばで作業する時間をほんの少しでも、減らしてみる。
それだけでも、ミラーニューロンの自動的で無意識的な働きを阻むことができます。
ふたつ目に、あなたが「真似したい」と思っている相手と同じ方向を向き、横並びの状態になること。
さきほどの著者の患者さんが「コップを握る」の作業が自然とできたのは、著者が横並びになってやって見せたことでできました。
「すぐやる人」のしぐさを効果的にまねをするなら、対面でいるよりも横並びです。
人と話をするときに、対面で座るよりも、車に同乗しているときの方が会話が弾みやすか?
対面していると、脳の中で知覚されたことを反転させる必要があり、それが脳に負荷をかけるからです。
3つ目の方法として有効なのが、「共同作業」です。
ミラーニューロンは、他人の行動と連動すると考えられています。
たとえば、相手が名刺を片手で差し出してくると、あなたは自然と片手で受け取るでしょう。
「空気を読む」といった動きですが、これが神経レベルでなされているのです。
そこで、「すぐやる人」が展示物を作っていたり、資料の用意をしていたら、さりげなくその作業を手伝ってみましょう。
「何かお手伝いしましょうか?」など改まって手伝うよりも、その人がしている作業の流れに自然に応じるような動きをするときに、あなたの脳でミラーニューロンが働きます。
ここ2か月、「すぐやらない人」になっている自分がいて(もっとも、新しい部署でわからないということもあるんですけど)、非常に自分が気に入らなかったので、ここで一発逆転させたいと思います。
明日は、「すぐやる人になるための、3つのポイント」について。
今日もお疲れさまでした。
ゆっくり休んでくださいね。
では、また。