本書は繊細な人が、繊細な感性で毎日の「いいこと」をキャッチし、めいっぱい幸せを味わうために著者が書いています。
「鈍感だったらもっとラクに生きられたのに」と感じることのあるあなたは、繊細さんのひとりかもしれません。
繊細さんとは
「人と長時間一緒にいると、疲れてしまう」
「まわりに機嫌が悪い人がいると緊張する」
「細かいところまで気づいてしまい、仕事に時間がかかる」
「疲れやすくて、ストレスが体調に出やすい」
などの特性や、周りの人が気づかない小さなことにもよく気づく、などの性質をもっています。
長らく「気にしすぎ」「まじめすぎる」と個人の性格のせいだと誤解されてきました。
しかしアメリカの心理学者エレイン・アーロン博士の調査で発見。
「生まれつき繊細な人」が5人に1人の割合で存在することがわかってきました。
HSP診断テスト
では、どんな人が「繊細さん」なのでしょうか。
以下はアーロン博士によるHSP診断テストです。
次の質問に、感じたままに応えてください。
少しでも当てはまるものなら「はい」と答えてください。
・自分を取り巻く環境の微妙な変化によく気づく方だ
・他人の気分に左右される
・痛みにとても敏感である
・忙しい日々が続くと、ベッドや暗い部屋などプライバシーが得られ、刺激から逃げられる場所に引きこもりたくなる
・カフェインに敏感である
・明るい光や強いにおい、ざらざらした布地、サイレンなどの音に圧倒されやすい
・豊かな想像力を持ち、空想に耽りやすい
・騒音に悩まされやすい
・美術や音楽に深く心動かされる
・とても良心的である
・びっくりする(仰天する)
・短期間にたくさんのことをしなければならないとき、混乱してしまう
・人が何かで不快な思いをしているとき、どうすれば快適な状態になるかすぐに気づく
(たとえば伝統の明るさを調節したり、席を変えるなど)
・一度にたくさんのことを頼まれるのがイヤだ
・ミスをしたりモノを忘れたりしないよういつも気を付ける
・暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている
・あまりにもあたくさんのことが自分のまわりで起こっていると、不快になり神経が昂る
・空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる
・生活に変化があると混乱する
・デリケートな香りや味、音、音楽などを好む
・動揺するようあ状況を避けることを、普段の生活の中でも最優先している
・仕事をするとき、競争させられたり、観察されていると、緊張し、いつもの実力を発揮できなくなる
・子どものころ、親や教師は自分のことを「敏感だ」「内気だ」と思っていた。
以上の質問のうち12個以上に「はい」と答えたあなたはおそらくHSPであるとなります。
繊細さんの4つの性質
アーロン博士によると、この気質の根底には次の4つの面(DOES)が必ず存在するそうです。
ひとつでも当てはまらなければ、おそらく「繊細さん」ではありません。
D:深く処理する「深く考える」Depth
様々なことを瞬時に感じ、他の人が通常考えないような深さまで考える。
表面より本質的なことを考える傾向にある。
O:過剰に刺激を受けやすい Overatimulation
人より気づきやすいため、人より早く疲労を感じやすい。
大きな音、熱さや寒さ、痛みなどに敏感だったり、楽しいイベントでも刺激を受けすぎると疲れたり、興奮して目が冴えて眠れなかったりする。
感じすぎた刺激を流すために、ひとりの時間や静かな時間が必要。
E:感情反応が強く、共感力が高いEmotional&Emparty
共感力が強く、他者の意思や気持ちを察しやすい。
HSPは非HSPよりもミラーニューロン(共感を生むと言われる神経細胞)の活動が活発と言われています。
事故や事件のニュース、暴力的な映画が苦痛な傾向にあります。
S:ささいな刺激を察知する Subelety
小さな音、かすかな匂、相手の声のトーンや視線、自分を笑ったこと、ちょっとした励ましなど、細かなことに気づく。
気づく対象は個人差がある。
繊細さんが持つ6つの幸せ
ここからは、著者がカウンセリングをしてきて知った繊細さんのすてきなところについて。
感じやすさを人一倍持つことで、ストレスを感じやすいなど大変なところもある一方で、繊細さは幸せの素でもあります。
非繊細さんにくらべて、これらの幸福を味わう傾向にあります。
成果主義から一歩外に出ると満たされる幸せが花開く
繊細さんは、「成果主義から一歩外に出る」のが、幸せを増やすポイントです。
夕焼けがきれいだなぁと思う時、
丁寧にとった出汁がおいしくと、「もう一口!」と追いかけるとき。
カフェの店員さんのちょっとした笑顔が嬉しい時。
「もっと効率を上げよう」「どこかを目指そう」といった思考ではなく、ただ「きれいだなぁ」「おいしい!」「嬉しいな」というあたたかい気持ちが、パッと胸にともるのではないでしょうか。
幸せは。主観の世界にあるものです。
私たちの社会では、成果主義が幅を利かせていますが、成果主義は客観の世界にあるもの。
他と比べて価値があるとか、以前と比較して効率がいいとか・・
そうした「他者視点」が中心です。
私たちは、朝起きて、外が快晴な時により心地良さを味わうことができます。
おいしいご飯の味がより分かるようになります。
簡単に結論を出さず、納得いくまで本質的に深く考えるのが得意です。
こういったじんわり満たされることは、自分が感じることであり、世間や他者から見た成果ではありません。
成果にとらわれすぎると、せっかくの満たされている幸せが「ムダなもの」「生産性が無い」「役に立たない」として追いやられ、見えなくなってしまうのです。
元気になった相談者さんから著者が
「カウンセリングの帰り道、電車の広告の色が美しく、鮮やかにみえた」
「鳥の声がよく聞こえるようになった」
という声をよく聞くそうです。
「私は私でいいんだ。私の幸せを大切にしていいんだ」と安心したとき、変化が起こります。
まるで幸せを感じる力が開花したかのように、世界の美しさや優しさ、嬉しいことをめいっぱい感じられるようになるのです。
繊細さは、まずは自分のために活かそう
幸せを増やすもうひとつのポイントは、「繊細さはまずは自分の幸せのために活かそう」ということです。
人のためにとても役立つ感性を持っている繊細さん。
相手のニーズや世間の声をキャッチしやすい性質です。
つい「人のため」に動いてしまい、自分を後回しにしてはいませんか?
そんな場面が多くなりがちですが、まずは自分の幸せのために、繊細さを活かしていくことは、とても大事です。
自分がます幸せになること。
そうすることで、周りの人にも自然と優しくできます。
さらに、見返りを求めずに助けることができるようになります。
感じる幸せ
繊細さんは、周りの人が気づかない小さなことも感じ取ります。
肌触りや色や声のトーンの違いを見分けて、細やかに感じることができます。
この力が強いからこそ、自分に合った環境に身を置くことが大切です。
環境によって繊細さがプラスに働くからです。
感じる力がもたらす幸せを、ほんの一部紹介するとこんな感じです。
・手触りの良さを感じる(桃の産毛が気持ちいい)
・いいにおいを感じる(金木犀の香り)
・みずみずしくて元気な野菜を見つけてワクワクする
・周りの人のちょっとした笑顔が嬉しい(店員さん、同僚など)
・和気あいあいとした場に行くと嬉しくなる(文化祭など)
・お天気で幸せ(晴れの日に外に出たくなる)
・子どもの発言にジーンとする
・ステキな空間に癒される
・小さな仕掛けやこだわりに気づいて楽しめる(レジ横のハロウィンの飾り)
・体の状態を感じ取る(ヨガのポーズで身体の隅々まで感じる)
・自分の心の状態を感じる(楽しみ!ワクワク!)
・相手のよいところを見つける
・相手の動作を見て、いつのまにか自分もできるようになる
感じる幸せを伸ばす方法(1)自分のために、感じる時間をとる
「生産性が無いもの」「ムダなもの」は、ついつい端に追いやってしまうもの。
たとえば、
・ふかふかのお布団で昼寝するのが好き。でも「時間を無駄にしてしまった」という罪悪感がある
・いつも忙しくて、ゆっくりしたいと思う。でも、いざゆっくりすると、「生産性があることをしなくちゃ、とザワザワしてしまう
こんなときは
「これまで、どんな時に幸せを感じたかな」
「心を満たされるときって、どんなとき?」
と自分に問いかけましょう。
感じる幸せを伸ばす方法(2)心と体をケアする
感じる幸せを伸ばすもうひとつのポイントは、「いい感じ」と同じくらい「嫌な感じ」も大切にすることです。
周りに役立つセンサーを持っているあなたは、「疲れたな」「今日は気持ちがついていかないな」という自分からのサインを、周りのために無視しているのではないでしょうか?
これを続けていると、感じる力そのものにブレーキがかかってしまいます。
「自分が感じたことは、自分にとっての本当のことである」という感覚への信頼は、いわゆる自己肯定感の一部。
何だか眠い、疲れている、と感じたら、その感覚を受け止めて少しだけでも休むなど、ケアしてあげましょう。
いいものは、静かでささやか
ぽかぽかと晴れた日のあたたかさ。
そっと窓にあたる静かな雨。
大切な人の優しさを感じる、たわいもない会話。
心をじんわりとあたたかくするものは、静かでささやかです。
効能も効用も書かれていません。
市販の洗剤のパッケージのように「ぼくらこんなにすごいんだよ!」と主張しない。
でも、私たちのまわりに、そっとなかみだけで存在しています。
私たちは「やらなきゃいけないもの」に振り回されて、静かなものが見えなくなっています。
美しいもの、人の優しさが感じられない時は、
「いいんだよ、大丈夫だよ」
「ぼちぼちやっていこうよ」
と自分に声をかけてみましょう。
緊張がゆるみ、頭も鎮まります。
美しいものは、毎日の中にある
ある日著者が家の近くの路地を歩いていて、1台のスクーターが横を通りました。
緩やかなが吹き、道の両側の銀杏の胃から、陽に照らされた葉っぱが煌めきながら降っていました。
ゆっくり遠ざかるスクーターと、まるでそれを見送るかのように降り注ぐ金色の葉っぱたち。
毎日通る道なのに、まるで映画のワンシーンのようでした。
映画に出てくるような美しいシーンは、特別なものではないのです。
美しい風景も人の優しさも、いつもの日々にあり、美しいシーンとは、毎日の風景を文字と通り「切り取った」もの。
忙しい毎日の中、私たちが世界の美しさを忘れても、世界の方が待っていてくれます。
帰り道、夕焼けが綺麗だなと思ったら、心行くまで眺めてみる。
花を1輪買って、蕾が日に日に開いていく様子を味わう。
紅葉の季節、地面に積もった葉っぱを1枚広い、黄色から赤への美しいグラデーションを楽しむ。
毎日のほんの少しの時間でいいのです。
美しいものに気づいたら、立ち止まる。
それだけで繊細さんは、くつろげる時間を取り戻すことができます。
感じすぎたら、アウトプットで刺激を流そう
繊細さんは感じる力が強く、刺激で頭や心が忙しくなりがち。
自分がどうしたらいいかわからなくなるときや、気分がどんより重い時は、刺激でいっぱいなのかも。
一杯になるのは、ストレスなどの「悪い刺激」だけでなく「いい刺激」でもそうです。
楽しいイベントやわくわくすることでも、いつもと違うことの連続で、「毎日が文化祭」のように刺激過多になり、容量オーバーになることもあります。
繊細さんは、インプットが多い分、こまめなアウトプットをすることで心が調います。
アウトプットといっても、簡単なものでOKです。
・自分の気持ちを文字に書く(日記、ブログ、Twitterなど)
・絵を描く(ノートの端の落書きでOK)
・歌う
・電話で友達と話す
ちょっとしたことで構いません。
頭が疲れていて、気持ちを言葉にするのが億劫な時は、手持ちのペンで「こんな気持ち~」とぐるぐる丸を書くだけでも構いません。
心身に溜まった刺激や感情が、少しでも外に出れば、それでOKです。
繊細さん汚エネルギーチャージ。心満たされる空間をみつけよう
「元気が出ない。眠いわけじゃないけど、何となく気分が落ち込んでいる」
「やりたいことがあるけれど、やる気が出ない」
など、休むほどじゃないけど動くには元気が足りない時がありますよね。
そんなときは、「休む」と「動く」のあいだの「整える」が効果的。
特にお勧めなのは、空間を使ったエネルギーチャージです。
1 好きな空間へ行く
2なにもせずに10分くらいじっとすわっておく
パソコンもスマホも見ずに、ただ座り、その場の空気感に身を浸すと、刺激が流れて心身が整い、エネルギーが湧いてきます。
ただ休んでいるように見えますが、繊細さんにとって「素敵な空間でじっと座っている」のは、心を満たすエネルギーチャージになります。
心地よい音、風景、香り、空気管・・・、自分に合う空間に身を置くと、その空間の「感じ」が五感すべてから入ってきて、心身にたまったノイズを流す役割をします。
エネルギーチャージできる場所は、人それぞれ。
「間接照明だけがともっている静かな喫茶店」
「図書館。本に囲まれると守られている気がする」
「カフェのテラス席や庭園のあるお茶所。緑の見えるところがいい」
「家の近くにある河原。桜並木があって寝転べる」
など。
自分に合う空間をいくつかみつけておいて、気分によって使い分けてもいいですね。
本書には、このほかにも
「自分がいいと思ったものを家に置く」
「ときめくものを持つ」
「直感を信じて検証する」
など、繊細さんがより豊かに生きるスキルがたくさん紹介されています。
今週もお疲れさまでした。
ゆっくり休んでくださいね。
では、また。