先日は「自分の脳を他人(自分の子ども)のように扱う」とうことで、ひとつのことしか集中できない脳に、余計なものを一切見せないことで、「すぐやる」を実現させる方法を読みました。
脳は体に指令を出しています。
しかし、実は脳は視覚、聴覚、触覚などの感覚を通じて体からも指令を受けています。
「脳」と「体」のうまい関係
たとえば、会議が終わってデスクに戻ったとき、その資料をデスクの左側に置いたとします。
これは、脳から体に指令が出されてなされた行動です。
このとき体は、書類が置かれたときの景色や音、書類の重みや体の動きを伝えます。
これがフィードバックです。
フィードバックの目的は、過去の自分の動きと、今自分が動いた結果との”ずれ”の修正をすることです。
私たちの脳は常に繰り返し動作を行うことで、より正確に動けるように調節され、「慣れてきた」「わかってきた」と感じるのが、フィードバックの役割です。
しかしこのままではフィードバックのしくみでは、あなたの脳は「書類をデスクに置くことを一生懸命やるだけ」。
机に未処理の書類の山ができてしまいます。
「できる人」だけが知っている「脳の賢い使い方」
「すぐやる」ためには、受け身ではなく、能動的なシステムを活用しなければなりません。
そのために有効なのが、「フィードフォワード」。
目的を達成するためにどうあるべきかを予測して行動を決めるシステムです。
たとえば、「領収書を保管するために紙に貼る」という作業をしているとしましょう。
すばやく済ませたいと思っている人は、多少列がゆがんでいたり順番が間違っていても、かまわず作業を進めます。
一方で、整然と張りたいと思っている人は、時間がかかっても順番をそろえ、列をそろえて貼ります。
「どうしたいか」によって、作業の様子が変わります。
それは、脳が目的に合わせて結果を予測して行動しているからです。
自分はそもそも何のために行動しているのが、どこへ向かおうとしているのか。
それを定めて、そのためには体にどんな指令をすればよいかを決める。
この仕組みを「フィードフォワード」。
フィードバックが過去に基づくならば、フィードフォワードは未来に働きかけます。
決められた状況を打開しよう、自分らしい仕事をしよう、と思ったとき、とくに役に立つのがフィードフォワード型の脳の働きなのです。
「フィードフォワード型の脳」のつくり方
脳が自動的に、無意識的に「フィードフォワード」のシステムを起動しやすい状況をつくりましょう。
会議の資料が机に積みあがっているときに、ただ「デスクをきれいにしよう」と思ってもフィードフォワードはまったく機能しません。
デスクのきれいいさが会議の資料と関連づいていないからです。
そこですべきなのは、脳が「次の行動」を予測できるところまでは「前の行動」を途切れさせずに連続させることです。
会議を終えたら、その書類をデスクに置かずに、とりあえずファイルにはさんでみましょう。
議事録をつけるときも、会議直後に最初の部分だけつくってみましょう。
すべての書類をきちんとファイルに閉じたり、すぐに議事録を完成できなくても大丈夫。
ここでの目的は、脳に「新しい作業の区切り」を見せたこと。
会議の終わりが作業の終わりなのではなく、資料をファイルにとじる、議事録をつける、などの次の作業がはじまったところを作業の区切りとして脳に植え付けます。
次の作業にちょっとだけ手を付け、その法則を脳につかませるのです。
脳は、いつでもあなたの行動を観察し、分析して「あなたの行動の法則」を更新しています。
この作業の区切りの変更も、何回か意識的に行っているうちに、「脳の予測」の対象となり、やりやすくなっていくでしょう。
「あなたは次の作業に手を付けてからやめる傾向にある」と、脳に分析させてやるのです。
この方法は、先行きが不確定な状況であればあるほど有効です。
なぜなら、脳が予測を立てるには、現状と将来像との関係を知らなければいけないからです。
次の作業にちょっとだけ手を付ければ、今の自分が置かれた状況と目指すものとの関係が、より前より明らかになります。
現状と将来像とのおおまかなつながり(=法則)を見出すことが、脳がフィードフォワードを働かせるための材料になるのです。
資格試験にチャレンジしようとか、新事業プロジェクトが始まるなど、いつものルーチン作業にプラスアルファのやるべきことがあるときや、「いつもと違う」状況にあるときこそ、「ちょっとだけ手を付けてから行動を区切ること」を意識してみませんか。
最初の1回は、「次の作業に手を付けよう」と強く意識することになりますが、次からは最初より自然に次の作業に手が付けられるはずです。
「次の作業にちょっとだけ手を付ける」ことを脳に経験させるのです。
脳のフィードフォワードの働きを「よしよし」と見守りながら、あなたがリードしてあげてください。
今週もお疲れさまでした。
ゆっくり休んでくださいね。
では、また。