本書では、さまざまな知見を網羅させながら、実践的な「メンタルにいいこと」が紹介されています。
今回は、基本的なストレスへの考え方と対処方法を読んでいきます。

コロナでの日常生活におけるメンタルヘルスの崩れが指摘されていますが、それは大きく3つ挙げられます。
1つ目は感染リスクおよび感染そのものが起こす心理的反応。感染への自責の念や恐怖感ですね。
2つ目は環境の変化が起こす問題。隔離や行動制限。多いですね~。経済的打撃からくるうつなど。
3つ目が情報が引き起こす問題。専門家がテレビで話す情報は、恐怖をあおったり、逆に楽観的であったりして、聞き手の私たちの混乱を招きます。
新型コロナウィルスの感染拡大は、私たちの生活を変化させましたが、
「会議の時間効率をはかることができた」
「テレワークなどの多様な働き方を実践できた」
「家族との時間が増えた」
など、実は”いい変化”も身近にあなたも感じているはず。
ライフスタイルが大きく様変わりする中で、ストレスとの付き合い方は変わってくるでしょう。
だから、本著ではストレスの正体、自律神経の整え方、人間関係の対処法、ストレスとうまくつきあう方法、心身のメンテナンスの仕方をレクチャーしています。
2種類のストレス。その対処方法
ストレスと「どう立ち向かうか」を考えると、ストレスは「がんばる系ストレス」と「我慢する系ストレス」があります。
あなたの感じているストレスを分析して分類することで、対処方法を変えていきましょう。
「がんばる系」は、営業ノルマや夏休みの宿題など。
「我慢する系」は、お局様のイジメや隣家の騒音など。
どちらのストレスもストレス反応は起きます。
まず、がんばる系ストレスの場合。
積極的に対処した場合、副交感神経が賦活されて血圧が上がるなどの心臓血管系身体的ストレス反応が強くなります。心理的ストレスはあまり出ません。
ストレスを味方につけ、その焦る気持ちを使って努力しちゃえばいいのです。
イチロー選手も言っているように、こうしたプレッシャーともいえるストレスは、人生を成功させる大事な燃料ですからね。
一方我慢する系のストレスは、不安や落ち込みなど心理的ストレス反応が強くなります。
ここで大切なのは、1つ目に「責任転嫁」も大事だということ。
ワタシもお局のひとりなのでわかるのですが、「お局のイジメ」に正しい理由がないことが多いです。
自分が年を取っていくことが嫌で若い子にひがんでしまったり。
PCに追いつけなくて、若い子の足を引っ張ってしまったり。
そうすると、少しの若者のミスをこれ見よがしにあげつらったりしていることも、給湯室で見かける景色です。
かといって、ベテランたちは「あのお局の言い分はどう考えても『それらしく見えるようにしてあるけれど』違うよね」とわかっています。
でも、それを若い子に「あのおばさんの言葉は、聞き流していいよ」と言う場所がない。
だって、オフィスでは聞き耳を立ててますからね。
飲みに行って別の場所で、「飲んだうえでの会話だから」という言い訳と逃げ道を作ったうえで、こっそり教えてあげたい!!と常々思っています。
しかし、コロナで飲みになど行けない。ランチタイムもしゃべれない。
どれだけ若者にストレスがかかるか、と思うとベテランは胸が痛いです。
よく周りを見渡してみるのがお勧めです。
若い人たちはみんなして、青い顔してがんばっていると思います。
自分が天井付近にもう一人いて、上からあなたを見ていると思って、俯瞰してみてみましょう。
若いあなたに、そんな鬼のような勢いで初めて触る仕事にクオリティーを求めるベテラン。
あの人は、若いころそんなに有能だったのかは知りませんが、その言い方はおかしい、と気づくはずです。
正しい責任転嫁が必要です。
「あの指導の仕方がおかしい」のは、あなたの「努力が足りない」からではなく、あの人が「公私の区別なく感情をあらわにしているから」。
「自分がもっと有能ならばそうはならなかったはず」と思ってはいけません。
あなたは、あなたでいいのです。
ゆっくり育てばいい。今は、慣れるのに必要な時期なんだから。
環境変化のストレスは膨大。その人は慣れ親しんだ職場だから、それに気づきません。
あなたは、どんなことに悩んでいますか?
ちょこっとでもそのストレスに対処する力になれたら、とても嬉しいです。
ストレスは、悪者?
困難な状態を乗り越えたり、仲間との結束を強めたり
ストレスを受けた時、心や体が元に戻ろうとして起きる反応が「ストレス反応」。
生理学者のキャノンは1915年に「闘争・逃走反応」を報告してます。
動物が身の危険を感じると、体内でアドレナリンが分泌され、心拍数が上がり、筋肉が緊張し、素早く行動がとれるようになります。
一方で、消化機能などそのとき必要ない昨日は低下もしくは停止します。
しかし実は、人間の体は、長い時間をかけてストレスへの反応の仕方を進化させています。
それによって、心理的・社会的に動物とは異なる反応が出るのです。
闘争・逃走の他に、「チャレンジ反応」が起きます。
進んで人のために尽くし関係強化をはかる「思いやり・絆反応」が起きます。
震災のあとの復興の際に助け合いの気持ちが、私たちの間でふつふつと湧いてきたのも、人類が獲得した自然な反応だったんですね。
ストレスでも危険でない場合にこの「チャレンジ反応」という状態になります。
アドレナリンは急増し、集中力と自信がつきます。
一方で恐怖は感じなくなります。
自分のしていることに完全に没頭する「フロー状態」の人が、まさにこれにあてはまるのです。
複数のストレスが重なると細胞レベルで体が病む
一方で、「キラーストレス」と呼ばれる死を招くようなストレスも確かに現代の人間社会には存在しています。
ストレスの1つひとつがそれほど重くなくても、複数集まると危険です。
自律神経の働きで血圧が上昇し、血液も固まりやすくなります。
ストレスをかんじたときに、副腎皮質で分泌されるコルチゾール。
普段は脳で吸収されるのですが、一定量を超えると脳の買い場を破壊し始めるのです。
ワタシも経験しているのですが、ストレスが日々貯まってきたころ、妙に記憶力や判断力が著しく低下したり、情緒不安定になったりしました。
実はコルチゾールが多すぎると、海馬を構成する神経細胞の突起が減少することが、研究から分かっています。海馬が破壊されているのです。
海馬は記憶と感情にかかわる場所であり、うつ病にかかると海馬が縮小することがよく知られています。
あなたも、「最近妙にすぐ忘れてしまう」「何だか感情のアップダウンが激しいんだが?」と思うならば、気を付けた方がいいです。
ここで無理すると、薬を使って長期間治療が必要な世界に突入です。
仕事での過剰なノルマ、顧客からの理不尽なクレーム、満員電車で疲れる、家族に愚痴を言われる、そんな毎日ではコルチゾールが出っぱなし。
ここに肉親の死や不当な左遷が加わったりすれば、誰でも突然死に至ることさえ可能性があるのです。
そこから逃げれば幸せ?
「仕事さえ辞めれば」「離婚さえできれば」と思うところも多いですが、ご存知の通りノルアドレナリンもドーパミンも、適度ならいい刺激です。
やるべきことへの効率を上げる働きがあるものです。
メリットを知って、上手に付き合うことが大事なのです。
「ストレスは役に立つ」と思い込む
ここで大事なのは、物事の考え方を切り替えること。
『スタンフォードの自分を変える教室』『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』でもあった通りです。
簡単なのは、「マインドセット(その人の現実を形作る考え方)」を変えること。
現実は同じでも、それをあなたがどう捉えるか?というマインドセットを変えるのです。
マインドセットを変えることについては、有名な実験があります。
クラムの実験です。
ホテルの客室係で体重が重く血圧も高い人たちがいました。
彼女たちを2つのグループに分けました。
1つのグループには、「あなたのしている仕事はいい運動になっている」ということを消費カロリーを貼りだして周知しました。
2つ目のグループには一切それをしませんでした。
すると、「いい運動になっている」と周知したグループだけが体重を落とすことができたのです。
同じストレスでも、「体にいいことをしている」「これで仕事スキルが上がる」「あの人のおかげで人間観察になっている」という「思い込み」を自分にかけることで、あなたの成長は促されます。
ストレスを「害」と考えないマインドセットを持つことは、あなたを強くします。
経験したストレスの強さとストレス観は関係ありません。
元メジャーリーガーのイチロー選手のように、「ストレスがあったほうがパフォーマンスが上がる」と思っていると、強いストレスがあってもそれを力に変換できます。
「ストレスは役立つ面もある」と思っている人の場合、強いストレスがあると次のような行動をとるそうです。
・事実を受け止め、現実として認識する。
・ストレスの下人に対処する方法を考え、克服するか取り除く対策を講じる。
・情報、サポート、アドバイスを求める。
・成長の機会ととらえる
ストレスを受ける状況から逃げずに正面から向き合う。
このことで、対処する能力や自信がつきます。
仲間もできるのです。
そして、うつになりにくく、人生への満足度も上がるというわけです。
胃が痛くなったり、心臓がドキドキするのは、体を回復させているサイン
大きな交通事故などの非常に強いストレスを受ける出来事に遭遇すると、私たちの体内ではコルチゾールとアドレナリンが分泌されます。
これがストレス反応と呼ばれます。
どうしても私たちはその反応を「取り除かなくては」と思います。
しかし、実際はこの反応はあなた自身の体の見方になっています。
実際に現在もっともPTSDの予防・治療につながると期待しされている治療はストレスホルモンの投与です。
テロ攻撃に遭遇後、PTSDを発症した50歳男性の場合、1日10mgのコルチゾールを3か月間投与したところ、恐怖や苦痛を感じにくくなったという結果が出ています。
心理療法でも、カウンセリング前にストレスホルモンを投与することで治療効果が高まるということです。
強いストレス反応は、私たちの回復の立役者です。
むやみに恐れず、うまく利用することであなたの心の回復力は高められるのです。
逆境が少ない人は、幸福度が低く不健康。試練だけが人を強くする
適度な数の逆境は、あなたの幸福感や健康度合いをあげることが分かっています。
ニューヨーク州立大学バッファロー校の心理学者、マーク・D・シーリーは、2000名のアメリカ人を4年間にわたって研究しました。
そこで、過去につらい経験を持つ人の方が、うつ病や不眠症に対する耐性が強くなることを発表し、多くに人を驚かせました。
これまでは、トラウマ体験はこうした病気のリスクを高めるというのが定説だったからです。
辛い経験には、病気やケガ、愛する人の死、離婚などが挙げられます。
調査の結果、もっともうつ病などの健康上のリスクが低かったのは、経験した逆境が中程度の人でした。
逆にリスクが高かったのは、逆境の数が最も高かった人たちと、最も低かった人たちでした。
そして、前者の中程度の人たちは人生に関する満足度が高く、後者の2種類の人たちは低くとどまったのです。
過去のつらい経験ですらも、あなたを助けてくれるのです。

明日からの土日。
がんばったあなたは、とても偉かった!
あなた自身にご褒美をあげてくださいね。
ではまた。
